稔《みのり》と死

「それで? 貴方、続きがあるんでしょう?」

「まあ、此処からは私見だがね……ルサールカは穀物霊であり、同時に残置された死者ザロジュヌィエ・ポコイニキである。また、露西亜ロシアでは古くから、セミーク以外にも追善供養を行う土曜日――両親の為の土曜日ロジーチェリスカヤ・スボータが存在する。此処で言う両親ロジーチェリは実際の両親に限らず、死者を指す語だ。

 ここから、おそらく古代の露西亜ロシアに於いて、祖霊というものに重きを置いた信仰があったのではないかと推測できる。それも、祖霊であり、穀物霊である事を考えると、日本で存在していたと考えられている祖霊信仰に近いものと思われる。」

「日本では、ソレはヤマからやって来る、稔神としがみだわ」

露西亜ロシアではソレが森から、しかもその大元としては水中からやってくると考えられた。実のところ、このセミークにおいてルサールカに対して行われる儀式というのは、ルサールカだけでなく、水中に住むという魔、シュリクンに対して行われる場合がある。

 つまり、このシュリクンというのもまた祖霊の表象の一つと取るべきだ。では、何故ルサールカが葬られるのか。その理由の半分は、おそらくハイヌウェレ型神話のようなものが根底にある、と考えてもいいだろう。

 大地母神を殺し、そこから実りが再生する。或いはこれは神という容器に詰められた霊力を、器を壊す事で別の形への再生を促す、とも言えるのかもしらん」

保食神うけもち月読命つくよみ大気都比売神おほげつひめ須佐之男すさのをと同じ根っこと言うのね」

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