ふるうこと
彼は一つ咳払いをすると、気を取り直して口を開く。
「落ち着いたかね? 話を元に戻すぞ。ルサールカの説明をしたが、このルサールカとなり得る『溺死した若い娘』、『洗礼前の子供』とは、前置きの
実際、前置きで出したベレグィニャはこのルサールカと同一とも言われたりする。そして、その伝承に於いて最も興味深いのは、セミークの時期、ルサールカは湖や川から陸に上がり、野や森を歩き回るということだ。特に、木に登り、その枝を揺らすという」
「木に? それは宿ると言うのでなくて?」
「おそらく、実質としてそうだろう。セミークの時期にそういった野や森に行く事はルサールカと出遭ってしまうがために忌むべきとされるが、実際は娘達によって白樺の木を使った儀式や花輪作りが行われる。
白樺を編む場合、娘達は森でルサールカがより枝を揺らしやすいよう、白樺を編み、その周りで歌い踊る」
「つまり、ルサールカが枝を揺らした方がいいのね?」
「まあ、そうなるな。このルサールカには森で
「揺らすという行為についてでしょう?
揺らす事によって、震わせる事によって、霊力を
「そうだ。そして、この場合、この
実際、ルサールカには『畑を守る』や『ルサールカが踊った土地では豊作になる』など、豊穣神とまではいかないまでも、穀物霊としての性質が見える伝承が存在し、そしてそれに関連したと思われるセミーク時に行われる儀式が――地域での差異はあれど――存在する」
ぴたりと、彼は足を止めた。彼女もそれに倣い、足を止める。
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