唯一神、その功罪
「それは
あれは人間以外を永続的に人間にする事を赦さないし、人間が永続的に人間以外になる事を赦さないもの。だから、あれの根付いた土地では悲劇になるに決まっているわ。
私と貴方の関係のように、世界の違う者の婚姻は、どちらかがどちらかの世界の楔になって、どちらかの者として固定するしかないのだもの。こうして一時的に戻れたって、もう本性は違うわ。
『
その様を見ていた彼はくくっと笑う。
「何がおかしいのよ」
「お前もだいぶ私に染まったなと思ってな」
「……そうね。そうだわ。そうでしょう。
貴方の話を聞くのが好きなのだから、その分私だって勉強してよ」
唇を尖らせ、拗ねたように彼女は言う。
先程は遊女も斯くやという表情であったにも拘らず、その様はどちらかと言えば童の様だった。
「まあ、お前の言う通りだろうな。グリム童話に於いては人と婚姻を果たす動物は、最初から呪いで変えられた人間――それも得てして貴種と呼べるような王族などだ。動物の人間化を許しもせず、転生も許さないのであれば、何らかの悪意で――つまりは、本人はその気もなく、善良であるとした上で――変えられた人間にするしかないさ。そして、この類の話はそう言った人間の側から見れば、高貴かつ高潔なる人間が地に落ち、その善良や才を以て苦労を乗り越え、元の――或いはそれ以上の地位や富を手に入れる、貴種流離譚として見る事ができる故に、腑に落ちる」
「仏教の方が、その辺りはまだ寛容と言うか、一度隆盛した後に大元が落ち着いてしまったから隙があったと言うか。何にせよ、否定されないだけ、居心地が良いわ」
ころころと表情を変えた彼女は、ほうと呆れたように一つ溜息をついて落ち着く。
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