歌い踊りて

「ふうん、歌垣の様な感じなのかしら」

「近さはあるかもしれんな。露西亜ロシアにはホロヴォードと呼ばれ、時として輪舞と訳される――実際には輪舞以外の形態もとるのだが――踊りがある。

 これは基督キリスト教前から続いているものと言われ、祭りの時期、娘らや若者らは、村の通りでこのホロヴォードを行ったという。そしてこれが娘と若者の出会いの場となる。それはセミークにおいても同様の部分がある場合もあったようだ」

「動物の求愛行動って、結局変わらないのかしらね」


言いながらも、二人は歩き続ける。

やや呆れの色をまとった声を上げた彼女は、この話の終わりと同じく、彼の行先が何処に落ち着くかを知らない。


「人間も動物の一端である以上は仕方がないのではないかね。

 唯、セミークではそれだけに限らない。まず、この時期は残置された死者ザロジュヌィエ・ポコイニキ――事故や事件などで若くして、又は自殺、或いは幼くして亡くなった、うらみやうらみを抱いたと思われる死者の供養が行われる時期という。というのも、かつての露西亜ロシアでは、そういった死者は通常の埋葬ができなかった」


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