第8話 ゾンビ魔女を目指して

「うわーすごーい!」

「しっかり掴まっててね!」


 2人を乗せたホウキは、空中に浮かぶ魔法陣の中に飛び込みます。どうやら魔法の国に行くためには、その魔法陣を通らなければいけないみたい。

 そうして、亜空間のような不思議な空間を通り抜けた先に、レイラの故郷、魔女の国がありました。初めて見るその不思議な国の景色に、サラの目が輝きます。


「うわあ、空に島が沢山浮いてる! ねぇ、あの建物は何? あ、すっごい大きい樹! あれも教えて! それと……」

「分かった分かった、順番にね」


 魔女の国の不思議な光景は、サラの好奇心を刺激するばかりでした。レイラもひとつひとつの質問に丁寧に答えます。

 やがて、ホウキはたくさんある浮島のひとつに降り立ちました。こじんまりしているものの、とても雰囲気が良く、豊かで鮮やかな草木、不思議な鳥や生き物、それに可愛らしい妖精達が仲良く暮らしています。 


「ここは?」

「私の地元。ここならサラも安心して暮らせると思って」

「レイラはここで大きくなったんだ……」


 ホウキから降りた2人。レイラは早速自分の故郷の案内を始めます。子供の頃に遊んだ森、魔法を学んだ学校、楽しい思い出の残る商店街、大冒険をした遺跡――レイラの語るその話を、サラは目を輝かせて何度もうなずきながら真剣に聞くのでした。


「これで島の説明は終わるけど、大丈夫? やってけそう?」

「うん、私、この島の他の魔女のみんなとも仲良くなりたい」


 もうすっかりこの島で暮らす気になっていたサラは、レイラに向かって満足そうに満面の笑みを浮かべます。その気持ちをしっかり受け取ったレイラは、サラの無邪気な顔をしっかり見つめました。


「ふふ、そうね。じゃあ、私の親友から紹介してあげる……」


 こうして、ゾンビのサラはこの島の他の魔女見習い達と供に、一人前の魔女になるための修行を始めます。人間だった時にある程度の基礎が出来ていたサラは、生粋の魔女の子供達ともひけを取らない才能を発揮させました。

 そのおかげですぐに同年代の女の子達と仲良くなり、楽しい日々を送り始めます。


 サラが心配で仕方がなかったレイラは、学校側に頼み込んで魔女学校の教師に就職。レイラは懸命に修行に励むサラを甘やかしながら、可愛い生徒達を前にしっかり魔法を教え込むのでした。


 サラはゾンビとして復活したのもあって、たまにすごく友達をかじりたい衝動に襲われてしまいます。そうなった時は自分で自分の腕を噛んだりして、その欲望の暴走を何とか食い止めていました。

 レイラの話によると、魔女として成長すれば自分の感情もちゃんとコントロール出来るようにもなるとの事。いつかそうなれる日を夢見て、サラの日々の修業の日々は続きます。


 サラの魔女修行はまだ始まったばかりで、いつちゃんとした魔女になれるかは分かりません。

 ですが、いつか――そんなに遠くない未来のハロウィンで、可愛いゾンビ魔女の姿を見られる日がくるのかも知れませんね。

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