4 サドンデス・バトルは突然に!猛攻!デス・バイキング!(後編)

「ゴショウです! オタスケを! オタスケを!」

「ヒャッハー! 俺たちパイレーツ海賊団に慈悲はない!

 大人しくそいつを寄越せ!!」

「アレーッ!」


 泣いて許しを請う中年女性から海賊が奪ったものは、宇都宮名物ギョウザ弁当!

 冷めてもおいしいギョウザが詰められた人気商品だ!


「そのお弁当は車中の楽しみなんです! それがないとお腹が!」

「ヤカマシーッ! 餓死でもしてろい!!」

「オオー! オオオ~!」


 おお、なんたる悪逆非道!

 人のものを平気で奪う……まるで海賊のような奴らである!

 だがしかし!


「待て待て待てええええええい!!」


 その悪行を許さぬ男が――


「そのお弁当をご婦人に返すだべええええ!!」


 正義の心を持つ男が――

 ――ここに二人いた!!


「ああ~~ん? なんだおめえ……ギャー!!!」


 神風かみかぜトオルとギョウザおとこのダブルパンチが海賊の顔面を砕く!


 チュドーン!!!


 そして爆発! 黒焦げの焼き芋と化す!


「「テメー! ヨクモー!!」」


 斧や青龍刀で武装した海賊たちが二人に迫る!


「よくもはこちらのセリフだああああああああ!!!」

「だべえええええええええ!!!」


 狭い列車内!

 大幅に動きが制限される条件下であるが……それを感じさせぬトオルとギョウザ男!

 海賊の振り下ろす斧や青龍刀を巧みにかわし、拳を叩き込んでいく!

 爆発し沈黙した海賊を窓から投げ捨てながら――前へ前へと車両を渡る!

 そして――二人はデス・バイキングと対峙する!


「ガハハハハ! ずいぶん威勢がいいな栃木県民!」

「貴様……鉄道列車に攻撃を仕掛けるとは!

 公共の場という概念のない野蛮人め! 許さん!」

「ガハハ! 許しを請うのはお前じゃ!

 ワシはこれまで……

 お前らのような貧相な体など赤子も同然!

 ちょちょいのちょいの助じゃわい!!

 決勝へのライバルを減らし、貴様らの首にかかる賞金もいただいてやるわ!!」

「ならば試して見よ! ギョウザ男!

 ここは俺に任せて……乗客の避難を頼む!」


 神風トオルが拳を繰り出す!

 それを同じく拳で受け止めるデス・バイキング!

 両者の拳から火花が散る!


「よし! わかっただべ!」


 その隙を突いてギョウザ男が駆け出す!

 乗客シートの間を器用に跳びはね、デス・バイキングをやり過ごす!

 地球ファイター同士の戦いに一般庶民が巻き込まれれば、その命は数分と持たない!

 神風トオルの栃木県民的慈悲心である!


「フン! 他人の心配よりも……自分の心配をするんだな!」


 シャキン!


 デス・バイキングがフトコロから大型の斧を取り出す!

 その禍々しい殺人武器はインド象ですら容易に両断する凶器中の凶器である!


「俺様の斧で! 貴様をグチョグチョのシモツカレにしてくれるわあああ!」


 デス・バイキングが斧を振りかぶり、トオルに襲い掛かるバイオレンス!


(奴が持つ斧! 常人であれば即死級の真っ二つ待ったなし!)


 しかし!

 神風トオルは地球ファイター!

 そして!

 地球真拳継承者である!


「はあああああああああ!」


 振り下ろされる斧を神風トオルは――なんと!


 バチン!!!


 

 これぞ……地球真拳の護身術の一つ!


「地球真拳・地球白刃取り!」

「なにいいいいいいい!?」


 地球白刃取りは――ただ刃を受け止めるだけではない!

 手の平と斧の接触部から火花が散り!


 バリイイイイインンンッ!!!


 デス・バイキングの斧がお煎餅のごとく砕け散る!


「バカな!?」


 受け止めた刃を超人的プレス力で粉砕!

 地球パワーを纏った人体は工業用プレス機級のパワーを発揮するのだ!


「おのれい!」


 砕けた斧を投げ捨てるデス・バイキング!


「やるではないか地球代表! だが!」


 デス・バイキングが両手をフトコロに突っ込む!


「これならどうだあああ!!!」


 シャキン! シャキン!


「!? それは……まさか!!」

「そう! そのまさかよ!!」


 デス・バイキングが取り出したのは伝説の武器! 金の斧、銀の斧!


 ――一般庶民諸君もご存知であろう!

 西洋に伝わる金の斧伝説!

 ある日! 森の中!

 貧しい木こりが! 誤ってボロボロの斧を泉に落としたところ!

 泉の中から!

 デカパイの女神が金の斧と銀の斧を持って現れ!

 泉を下賤なる斧で汚した報復に!

 その木こりを惨殺!

 人肉ナメロウに処した!


 以来! 泉に近づく者はその両斧で死体へと変えられていったが!

 その後!

 泉の女神は異世界から現れた勇者によって討ち取られ!

 金の斧と銀の斧はどこかに持ち去られたと伝えられている!


「まさか……! 実在したとは!」

「ガハハ! 俺様は歴史と伝統のバイキング!

 今まで奪い取ったお宝は数知れず!

 伝説級の武器も我が船内にゴロゴロしておるわ!」


 伝説の武器、しかも二刀流!

 デス・バイキングが同時に斧を振り下ろす!


「受け止めてみろおおおおッ!!」

「ちいいいいいいいいいッ!!」


 トオルが後方に跳び、いったん距離を取る!


「ガハハハハ! 一度に二つの斧は防げぬか!

 地球白刃取り、敗れたりいいいい!!」

「くっ……! だが所詮は斧!

 間合いを十分にとれば恐るるに足らん!」

「馬鹿め! 距離を取ったのは悪手よおおおお!!」


 デス・バイキングは両腕を振りかぶり!

 デビル的腕力で振り下ろす!

 その殺人的速度で振り下ろされた金銀の斧は手元を離れ――

 超高速回転をしながら物理的にトオルへと向かう!

 これがデス・バイキングの奥の手!


「死ねい! ツイン・斧ブーメラン!」

「!?」


 トオルは瞬時に理解!

 金と銀! 回転しながら迫る二つの斧!

 計算された二重螺旋軌道は回避不能!

 車内シートを盾にするか!?

 ――否、シートごと容易に両断されるだろう!

 地球白刃取りも――同時に二つは対応不可能!

 全力で防御しても致命傷は確実!


「ガハハ! 防御! 回避! どちらでも選ぶがいい!

 結果は同じ! 地獄行きよおおお!」


 なす術なし!

 これは死亡確定か!

 ――否!

 神風トオルは二つの斧を凝視!

 そして!


 パシッ! パシッ!


 


「な、なにいい!?」


 防ぐこともよけることもできなければ――奪い取る!


「地球真拳に……投擲武器は通用せん!」


 地球真拳の使い手は人知を超越した動体視力を持つのである!

 高速回転する斧を無傷で掴むことなど造作もないのだ!


「ば、化け物か!」


 奥の手が通じなかったどころか――逆に武器をプレゼント!

 神風トオルが金の斧をデス・バイキングにつきつける!


「貴様が投げたのは! この金の斧か!」


 ブンブン!


 首を振るデス・バイキング!

 今度は銀の斧を突き付け!


「ならば! この銀の斧か!」


 ブンブン!


 首を振るデス・バイキング!


「貴様あああ!!! この大嘘付きがあああああああ!!!」


 神風トオルが激昂! 地球真拳の前で嘘は禁物である!


「嘘つき外道にはあああああ!!

 両方の斧をくれてやるうううううううう!!!」


 トオルが地球パワーを金銀の斧にまとわせ、投擲!

 デス・バイキングの両肩にそれぞれ斧が突き刺さる!


「オーノーッッッ!!!」


 噴水のごとく噴き上がるバイキング血液!


「な、なんのおおおおおおおお!!!

 これしきいいいいいいいいい!!!」


 デス・バイキングが決死の体当たり攻撃!

 暴走トラック20台分の悪魔的破壊力だ!

 危ない! 一般庶民であればひき肉ミンチ確定!

 しかし! トオルは走り高跳びのごとく華麗に背面ジャンプ!

 デス・バイキングと天井のわずかな空間を利用し回避!

 その背後を取る!


「ぬうう!?」


 後ろを取られ即座に振り返るデス・バイキング!

 だがすでに! 神風トオルは腰を沈め必殺の構え!


「とどめだ!」


 トオルの拳に地球パワーが込められる!

 地球パワーの集束により拳が発光!

 その輝きは! 地球の色、青色だ!

 青く発光する拳で力いっぱい殴りかかる!

 これが! 地球真拳の必殺技!


「地球パンチ!!!」


 グシャリ!!!


「ウガアああああああああ――!!」


 吹っ飛ぶデス・バイキング!

 車両の壁に叩きつけられバウンド!

 床を転がり元の位置にうずくまる!

 立ち上がろうとするも受けたダメージにより身体がうまく動かない!

 地球真拳とは地球のパワーを自在に操る拳術!

 地球パワーが込められた拳はそれ自体地球と化す!

 その衝撃は! パンチの速度で地球が衝突したに等しいのだ!


 地球質量! 約6×10の21乗トン!

 つまり! 60がいトン×パンチ速度の威力!!!

 まさに必殺の一撃である!


 さらに!

 今度はトオルの脚部に地球パワーが込められる!!

 右脚が青く輝く!

 そしてデス・バイキング目がけて跳躍!

 地球パワーが込められた右脚を突き出す!

 超必殺の飛び蹴りである!


「地球キック!!!」


 グシャアアアアアアアア!!!


「ウガアあああああああああ――!!」


 ミゾオチに地球キックが決まり、さらに吹き飛ばされるデス・バイキング!

 再び車両の壁に叩きつけられバウンド!

 床を転がり元の位置にうずくまる!


「お、おそるべし地球真拳……!」


 地球真拳の必殺技により!

 物理的に受けた衝撃と共に!

 流し込まれた地球パワーがその肉体を内部から破壊していく!

 デス・バイキングから火花が散り始める!


「こ、これが地球真拳……! 侮っておったわ……!

 だが! よおおおおおおお!!!」


 デス・バイキングが発光!

 己に残されたバイキング・パワーを暴走させ、大爆発を起こすつもりだ!

 巻き込まれれば神風トオルも列車も無事では済まない!


「そうはさせるかああああああ!!!」


 瞬時の判断!

 自爆せんとするデス・バイキングに神風トオルが掴みかかる!

 その巨体を持ち上げ、己を軸に回転!


 ギュン! ギュン! ギュン! ギュン!


「な、なにをする!?」

「貴様の思い通りにはさせんんんんんん!!」


 ギュオオオオオオオオオオオオオ――――ッ!!!


 悪魔的な高速回転! 竜巻のごとし!

 否、もはや竜巻そのもの!


「地球真拳! 地球うううううううトルネエエエエエエエード!!!」


 ――地球真拳・地球トルネード!

 掴んだ相手を超高速で悪魔的に振り回し、発生させた竜巻と共に投げ飛ばす――

 地球真拳の上級投げ技である!


「うがああああああああああああ!?」


 車両の天井を突き破り、竜巻と共にデス・バイキングが上空高く放り出される!


「パイレーツ海賊団にいいいいい栄光あれええええええええ!!!」


 チュドオオオオオオオンンンンン!!!


 爆発! 木っ端みじんとなった!

 ノルウェー代表地球ファイターデス・バイキング! 栃木に散る!


「手ごわい相手だった……!」


 一瞬の判断ミスも許されない――ギリギリの戦いであった!

 しかし! 安堵するのはまだ早い!

 船長の死を前に――黙っているパイレーツ海賊団ではない!

 海賊船にはデス・バイキングの右腕、副船長デス・ビュッフェが残されているのだ!

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