4 サドンデス・バトルは突然に!猛攻!デス・バイキング!(前編)

 群馬県出身の賞金稼ぎ、ヤーキー・マンジューを撃破した神風かみかぜトオル。

 地球ファイト決勝大会会場、東京都シン・巣鴨を目指し、モーターバイク・テング三式で高速道路を爆走!

 ――していたのだが!


「はわわ! 兄上! 出力が下がってきました!」


 セーラーJK服をはためかせハンドルグリップを握る神風ルリ。

 五千馬力を誇るテング三式の異常に気付く。


「なにい!? 燃料メーターはどうだ!?」


 黒レザーのライダースジャケットをまとい、後部座席で妹にしがみつく神風トオル。


「そういえば! 減りが早いような……!」

「燃料系をやられたか……!!」


 そう、テング三式は先の交戦により密かに被弾していたのだ。

 このままでは燃料が底をつき……せっかくの移動手段がなくなってしまう!


(被弾箇所は燃料系に限らぬかもしれぬ!

 修理しているヒマはない……! どうする……!)


 このテング三式を乗り捨て、他の車両を見つけるか!

 それとも何か別な方法を取るか!

 神風トオルが脳みそをフル回転させ思考する中――

 その耳に聞こえてきたのは!


 プアアアアア――――――ンッ!!!


「……この音は!」


 神風トオルに電流走る! 実に10万ボルト!

 悪魔的ひらめきが脳から放出される!


「ルリ! 下だ!!」

「……ッ!? 承知いたしましたんんんん!!」


 ヴァアアアアオオオオンンンン!!!


 テング三式をウイリー走行させ――


「ごめんなさいッ!!」

「……? ギャーッ!!」


 一般庶民が運転する手ごろな自動車を踏み台にし――


 ギャオオオオオオオンンンンンッ!!!


 ジャンプ! 高架道路の遮音壁を飛び越え、地上へと落下する!

 おお、万策尽き果てての兄妹きょうだい心中行為であろうか!

 ――答えは否!

 見よ! テング三式の落下先を!


「……! 兄上! あれは!!」

「ああ……! 俺たちは運がいい!!」


 ヴァウンッ!!!


 テング三式が着地!

 超高性能サスペンションにより落下死を免れる神風兄妹!

 その着地した先は――鉄道線路!

 前を走るのは超高速鉄道列車!

 東京行きスーパーとちぎ号(TCG2系)だ!!


「あれに乗り込めばまだ希望はある!」

「しからば兄上! 接近しまするぞ!!」


 アクセル全開!

 スーパーとちぎ号との距離を縮めるテング三式!

 その距離、あと50メートル!

 ――しかし!


「はわわ! これ以上速度が上がりませぬ!」


 被弾したテング三式!

 吸排気系にも不調をきたしているのであろうか!

 エンジンの出力が下がり、徐々にスーパーとちぎ号との距離が開く!


「十分だ。ここから先は俺一人で行く!

 ルリ、お前は先生と後から来い!

 くれぐれも! 米軍やCIAとの交戦はさけるんだぞ!!」

「承知いたしました! 兄上、どうかご無事で!!」


 神風トオルがテング三式の後部座席に足をかけ――


「とおっ!!」


 スーパーとちぎ号めがけ跳躍!

 その外部装甲に取りつかんと試みる!

 ――しかし!

 時速300キロ以上で走行する高速鉄道!

 神風トオルの超人的な跳躍力でも――届かない!

 むなしく線路に着地する神風トオル!

 スーパーとちぎ号まで、あと20メートル!


「だが! この程度ならああああああああ!!!」


 神風トオルの身体を地球パワーが覆う!

 脚部に地球パワーを集中させ、脚力を強化!

 両脚が青く光り輝く!


「地球真拳! 地球ダアアアアアアッシュ!!!」


 ――地球真拳・地球ダッシュ!

 己の脚力を強化し、走力の限界を超えた超高速移動を可能にする技である!

 ――地球真拳の高等走法である!


 地球ダッシュでトオルが線路上を駆ける!

 時速300キロ以上で遠ざかるスーパーとちぎ号に――追いつく!

 外部装甲に取りつき後ろを見ると――すでにルリは遥か後方!


「待っていろルリ!

 父の手がかり……必ず掴んでみせるぞ……!」


 内部への扉を発見し、神風トオルがスーパーとちぎ号内へと侵入する。

 ――すると!


「怪しいヤツ! 何者だべ!!」


 何者かに警告される神風トオル!

 その者の姿は――白い厨房服を身にまとい、

 


「これは失礼! わけあってシン・巣鴨へ急ぐゆえ、無理やり乗車させてもらった次第!」

「シン・巣鴨……!? すると地球ファイターだべか!」

「いかにも! 地球代表地球ファイター、神風トオル! 栃木県民だ!」

「俺は宇都宮うつのみや代表地球ファイター、ギョウザおとこだべ!」

「おお、栃木県の首都、宇都宮のお方か! ならば同郷の士、よろしく頼む!」


 握手をせんと手を差し出す神風トオル。

 だが、ギョウザ男の警戒は解けない!


「キサマー! 栃木県民をかたって油断させ、俺を殺すつもりだべ!」

「いやいや、決してそんなことは!」

「ならば! 栃木県的なことを言ってみろだべ!」


 決勝会場にたどり着くまでは悪魔的サバイバル期間!

 地球ファイター同士の騙しあいは日常茶飯事!

 最大級に警戒するのは当然中の当然なのだ!


「栃木県的なこと……!」


 思考する神風トオル。

 相手はすでに悪魔的殺人オーラを放っている。

 先手を取られるのは確実だ。

 ヘタな単語を吐けば……死ぬだろう。

 にわか知識だと思われてもアウトだ。

 栃木県民であることを証明する魔法の言葉とは……!


「…………」


 目を閉じ、精神を研ぎ澄ませる神風トオル。

 他の乗客も固唾を飲んで二人を見守る。

 しばしの間。

 そして――トオルの目がカッぴらかれる!

 その口から紡ぎ出された言葉とは!


「……イチゴ……ギョウザ……カンピョウ。

 そして…………シモツカレ!!」

「おお、栃木の友よ!!」


 抱擁する神風トオルとギョウザ男。

 二人の目には涙。

 同様に涙を流しながら拍手で二人をたたえる乗客たち。

 その場にいる全員が泣いている。

 なぜ泣いているのかは――誰にもわからない。


「ギョウザ男……いい匂いがするな」

「当然だべ。俺は餃子屋さんだべ」


(例え地球ファイター同士であっても……こうして分かり合えるのだな)


 おお、見よ! 二人の間に生まれた友情を!

 もはや地獄と化した殺伐たる現世!

 何者も信じられぬ百鬼夜行、その中にあって見いだされたる一筋の光!

 昨日の敵は今日の友とはよく言うが――


 ――だがしかし、地獄の鬼はどこまでも残虐非道!

 ぬるま湯に浸かることなど許してはくれぬ!


 チュドオオオオオオオンンン!!!


「「ノワー!!??」」


 車両内を襲う震度5クラスの悪魔的衝撃!

 もつれ合い倒れこむトオルとギョウザ!


「ンマア!」


 顔を赤らめる乗客マダム!

 上がギョウザ男、下が神風トオルだ!


「ただならぬ揺れ……! ま、まさか!」

「ガハハハハ! そのまさかよ!!」


 おお、見よ! 時速300キロのスーパーとちぎ号と並走する――を!

 そして甲板で堂々と腕を組む大柄な男の姿を!

 ニョキリと二本の角が生えた黒光る鉄カブト。

 顔の半分を覆うサンタクロース的ヒゲ。

 トゲトゲのついた肩アーマー。

 ムキムキマッチョの胸毛ボディ。

 いわゆる世紀末的バイキングの恰好だ!


「俺様はノルウェー代表地球ファイター、デス・バイキング!

 栃木の田舎者ども! その命もらい受けるぞおおおお!!」


 船の横腹からニョキリと生えた大砲が火を噴き、高速鉄道を砲撃!


 ボムン! ボムン! ボムン!

 チュドーン! チュドーン! チュドーン!


 スーパーとちぎ号の外部装甲に砲弾が着弾し爆発を繰り返す!


「ば、バカな、海賊だと!? ここは栃木県! 海はないぞ!?」

「このビッグ・サーモンは水陸両用! スパイクタイヤ付きよおおおお!!」


 ギャリギャリギャリギャリ!!


 海賊船に取り付けられた巨大なタイヤが悪魔的に回転!

 進路上の建物を破壊しながら進む!

 その被害は甚大である!


「なんて船だべ! 常軌を逸しているだべ!」

「……ッ!? 奴ら、来るぞ!!」


 おお、なんたる悪魔的光景か!

 なんとデス・バイキングを始めとした海賊たちが――

 、スーパーとちぎ号へと向かってくるではないか!


 チュドーン! チュドーン! チュドーン!


 堅牢を誇るスーパーとちぎ号の特殊装甲がついに貫通!

 開けられた穴から海賊が侵入!


「ヒャッハー!」

「キャー!」「ウワー!」「オタスケー!」


 乗客の一般庶民が海賊の略奪行為にさらされる!

 車両内に悲痛なる悪魔的叫び声が響く!


「おのれええ! 罪なき一般庶民を巻き込むとは!!」

「許せないだべ!!」


 神風トオル、ギョウザ男がいるのは最後尾車両。

 海賊が侵入してきた前の車両へと急ぐ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る