第3話 隠れチート その一

入学して二週間がたった。

そんな中、行われようとしているのは小テストである。

教科は英語、つまりは単語テストと言うわけだ。

正直英語は苦手である。

何故日本人であるこのオレがわざわざ英語を習う必要があるのだろうか。

普通に日本語でやろうと思えばやれるだろ。

外国人なんて「アーハン?」か「ウーフン?」とか言っときゃなんとかなる。

実際それで通用したこともある。

道を聞かれてもこの受け答えの上、その上で最低限の知識で通った。

このように実例があるからこそこのような結論が出せた。


「おはよー!天谷君!」


やってきたのは言わずもがな姫川だ。

相変わらず挨拶をしてくる。

この人、凄いよな。ぼっちでもこんなに気軽に声かけるのね。最強なんじゃないの?


「おはようさん」

「今日1限目の英語からテストだねー。やっぱりいやだよねー」

「な、面倒臭い。でも、お前みたいな奴は普通に満点取れるんじゃないのか?」

「違う違う。そんなに頭良くないもん、私」

「嘘つけ」

「嘘じゃないですー」

「じゃあ、後で答案見せろよ」

「えっ!いや、でも、ねー…」

「拒否権ないからな。オレも見せてやっから」

「……分かったよ、もう」


頬を膨らませてそのまま帰って行った。

というかオレ、何故無意識にそんな約束をしてしまった。テストの答案見せるとかだるいことこの上ないのだが。

やはりまだ、ぼっちでなかった頃の自分をしてることが出来ていないのかもしれない。

まあ、別にこの位は別に気にする必要もねえのか。

あまり考えないことにした。



     ☆     ☆     ☆



さて、1限目の単語テストが終わった。

いやー、とても難しかったですね。

だって何問解いたと思います?200問だぜ?正直キャパシティがオーバーするわ。

一問一問の単語が長えんだよ。

後で英語の後藤先生に色々言ってやる。


………と、まあ、そんなことは建前でして。

実際そこまで難しいわけでもなかった。

200問とはいえ覚えれば簡単にかける。

ただし書きすぎてもダメで、ゲシュタルト崩壊が起こり、記憶が一気に抜ける。

だから、最低限の練習で何とかなるのだ。


そして、テストが返されたのは帰りの頃だった。

ホームルームの時、担任の先生が渡してきた。

となると、こちらには刺客が来るわけで。


「天谷君!どうだった?」


勿論それは姫川だ。

あー、男子からの視線が痛いですね。

いたいいたい。


「私はこんな感じだよ!」


元気よく見せてきた答案には92点と書かれてある。ほら、みろ。やっぱり点取れてんじゃん。


「天谷君は?」

「………いやだ」

「言い出しっぺで言わないのは駄目だよ?」


そんな可愛い顔で言われましても。


「いやなものはいやだ」

「だだをこねてもいけません。見せて下さい」

「……………………はぁ。いいよ、どうせ落胆するから」


そういってオレは姫川にテストの答案を渡した。

一体どれだけ悪いんだろう…と、逆に慎重な趣でみている。

まあ、落胆するだろう。


「ひゃ、100点………?」


違う意味でな。

まあ、最低限の知識でマジで通るんですよ。この英語ってのは。


「…………なんで今まではそんな悲しそうな顔してたのかな?」

「いや、英語習う意味ねえなあって」

「それであんな哀愁に満ちてたの!?」


もしかして溢れてました?

ごめんねー。


「後、テストを教えるのめんどかった」

「だから言い出しっぺだよね!?」

「まあ、ともかくこれでいいだろ」

「うん、いいけどさ。……まさか頭良かったなんて」

「ま、勉強すりゃこんくらいとれるさ」


つっても勉強したのは昨日の午後9:00から11:00の二時間……でも、林檎と蜜柑に邪魔されながらだから正確には1時間か。

オレは昔からこういう事を覚えるのは早かったからなー。

ま、ずっとこの点数が続くわけもないだろうけど。

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