名前:傷だらけの二人

生没年:2019/04/01~2020/01/01



小説の成長記録:

純愛と傷恋の子供として生まれた。極端に思い詰めるタイプの1000文字の子供であった。生まれたときから両親の純愛と傷恋の諍いが耐えなかったが、その中でも子供は毎週1000文字の成長を続けていた。しかしとうとう純愛との生活に耐えられなくなった傷恋が子供の親権を訴えて離婚訴訟を起こす。訴えられた純愛はどうにか傷恋と寄りを戻そうとするが、努力の甲斐もむなしく離婚が成立し子供の親権は傷恋の手に移ることになった。子供は傷恋の手でスパルタ教育を受け毎週2000文字もの成長を続けるが、もともと思い詰めるタイプだった子供は感情の制御ができず殺人未遂をして警察に逮捕されてしまい勾留中に急死した。全文字数:99999字



小説の性格:

美咲と浩二はともに22才だった。彼らは東京の片隅で仲睦まじく同棲していた。彼らは同郷で高校で知り合い恋に落ちたが、互いの両親に交際を反対され、そんな田舎から逃げ出して東京に来たのであった。いざ東京に来てみたものの学歴もない彼らはろくな仕事にありつけず、結局ふたりとも夜の世界に行き着いた。夜の仕事に初めて働く時二人は熱く抱き合いながら固く約束したものだった。『何があろうと絶対に浮気はしない!』と。


一躍人気ホステスになった美咲には金持ちの客の男たちが我先にとすり寄ってきたが、彼女はその誘いをことごとくはねつけた。これも浩二とのあの夜の誓いを守るためだった。彼女は願っていた。いずれ夜の世界からおさらばし、平凡だけど皆に祝福された明るい生活を二人が死ぬまで肩を寄せ合い送れることを。


しかしそんな彼女のささやかな願いは浩二によって裏切られた。ホストになっていた浩二だったが、ホストとして彼は一向に人気が出ず、給料も雀の涙ほどであった。生活費はほとんど美咲が出しており、浩二はその状況に男としてのプライドを傷つけられていた。そんな時たまたまついた客の風俗嬢とと浮気をしたのである。その事実を知った美咲は浩二がアパートに帰ってくるなり彼を問い詰めたのであった。許しがたい裏切りであった。あれほど浮気はしないと誓ったのに。二人で東京に出ようと決めたときに何があろうと二人は一緒だと誓った二人だったのに!美咲の問いに浩二はこう答えたのであった。「俺は美咲と違ってスターじゃねえから何もしねえと客なんかつかねえんだよ!スターのお前みてえに黙ってても金持ちの客がよって来るようなやつとは違うんだよ!別に別れたっていいんだぜ!お前はスターだから俺なんか捨ててスターらしく金持ちの客と一緒になれよ!俺は一人さびしく死んでいくからさ!」頭にきた美咲は思いっきり浩二をひっぱたいたのだった。そして浩二を思いっきり抱きしめた。「バカ!私はスターになりたくてホステスなんかやってないわよ!私がホステスをやるのは浩二との将来のためよ!浩二にはそれがわかんないの?」浩二は「ごめんよ!ごめんよ!」と謝り、二人は泣きながら抱き合ったのであった。


その後浩二はホストを辞め、美咲が一人で生活費を稼ぐことになったが、その分美咲はより働かざるをえなくなり、帰り時間もまちまちとなった。浩二は一人部屋で美咲の帰りを待っていたが、やがて美咲に疑いを抱くようになった。そしてとうとう帰ってきた美咲に問い詰めたのである。「お前なんで最近帰りが遅いんだ!誰かと浮気でもしてんのか?はん!お前スター様だからな!スターの地位を守るために体だって売るよな!もしかして俺をホストからやめさせたのは自分の浮気がばれないようにするためだったんだな!とんでもねえ野郎だ!」美咲は浩二の思わぬ言葉に涙が出てきたのであった。「人がアンタののためにこんなに働いているのにその言いぐさは何なのよ!私がアンタの言う通り浮気すればよかったの?その浮気した男とここに住むからってアンタをこっから叩き出せばよかったの?」美咲がそう叫ぶと浩二は途端に泣き始め「ごめんよ!俺、自分が情けないよ!お前の気持ちなんかちっともわからないで!」と謝り、再び二人は泣きながら抱き合ったのであった。


美咲は浩二が毎日一人きりでいるのが気の毒になり浩二にお小遣いを上げることにした。浩二はバイトやるからいらないと言ったが、私が小遣い上げるから大丈夫だからと言って無理やり渡したのである。浩二は美咲が小遣いとよこしてくれた金額にびっくりした。一万円札が10何枚もあったからである。流石に浩二はこんな金額使えんと押入れの中にしまっておいたが、やがて退屈のあまり最初は少しだけ使ったのであった。それからどんどん使うようになりあっという間に全額使ってしまった。金がなくなってしまったので美咲にねだると美咲は笑顔でまた小遣いをくれたのである。そしていつの間にか浩二は二三日毎に美咲に金をせびるようになった。いい加減にしてと美咲が怒ると浩二は「やっぱり俺を捨てるんだな!」と泣きながら喚き、美咲は「浩二を捨てたりなんたしない!」と泣きながら抱きしめたのであった。


それからますます美咲は働くようになった。いくら稼いでも浩二が使ってしまうので家計は赤字ギリギリだった。とうとう浩二にもう小遣いはやらない!と言うと浩二は逆ギレして「もう俺を捨てるんだな!やっぱりスター様だぜ!俺なんか用済みか!」と喚き、美咲はそんな浩二を「バカ!浩二を捨てるわけないじゃない!」と叱り、そしていつものように泣きながら抱きしめたのだった。


美咲はいつものように馬車馬のごとく働いてヘトへトになりながらアパートに帰ってドアの前に立った瞬間である。浩二と見知らぬ女の声が聞こえたのだった。「おい!まだ金はまだたんまりあるんだからな!もう一回やらせろよ!」「アンタ、もうやめなよ!毎日毎日こんなとこに人を呼んでさ!彼女が可愛そうだと思わないの?」「うるせえ!あんな女ただの金づるだよ!ちょっと別れるぞっておどしゃ金なんかすぐ出してくれる!だってアイツはスターなんだぜ!100万ぐらい一晩で稼いじまうよ!」「マジ最悪!もうこんなとこ二度とこないから!」そしてドアが開き女と美咲は玄関で鉢合わせになったのである。


浩二が呼んだ風俗女は美咲の顔を見るなり悲鳴をあげて逃げていった。美咲は中に部屋に入って浩二のところへ向かった。浩二もまた美咲を見るなり悲鳴をあげた。それほど美咲は凄まじい表情をしていたのである。美咲は震える浩二をしばらく眺めてから台所へ向い、包丁を二本持ち浩二のところへ戻った。そしてそのうちの一本を浩二の足元に投げてこう言った。「……もう私たち終わりにしましょ……これが永遠の別れよ……1、2の3で刺し合いましょ。私はあなたに刺されても文句は言わないわ」浩二は目を伏せて足下を見た。そこには先程美咲が投げた包丁が深く床に突き刺さっていた。



小説の成長秘話:

完成寸前でで中断された小説である。読んだ限りではもう完成しているかのように見える。しかし作者にとってはこの作品はあからさまな失敗作であった。なぜならこの小説のストーリー自体が作者の考えていたものと完全にかけ離れてしまったからだ。


作者がこの小説を書き始める前に構想していたストーリーは故郷で許されぬ二人が東京に出て様々な困難を乗り越えて愛を貫いていく話であった。その困難として浩二の浮気と堕落を書いたのだが、浩二の堕落ぶりを乗りに乗って書いてるうちにいつのまにか浩二が誰にも愛されないクズキャラになってしまったのである。おまけに浩二がクズっぷりを晒せば晒すほど小説の人気も急上昇し始め、コメント蘭には「浩二最悪!」「もとからこんな奴だったのよ!コイツは!」「もうヤるしかないね!」など浩二へのヘイト満載のコメントが載る始末であった。


作者はもとの純愛路線に引き返そうとしたがもう戻れなかった。それでもう行くとこまで行くことに決めたのである。結果浩二のクズっぷりは暴走し、美咲は最後の最後まで浩二のクズぶりに耐えに耐え、とうとう小説の一大クライマックスまで書き終えた。作者は小説を書き終えた時、書ききった充実感と、なんでこんなものを書いてしまったのかという徒労感を同時に味わっていた。






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