夭折した小説たちへ 〜ゴメンねきちんと育てられなくて

名前：すべてが終わる前に

生没年：2019/06/18〜2019/07/17

小説の成長記録：

日記と純文学の子供として生まれる。5000文字のせっかちな赤ちゃんであった。生まれてからずっと何かに追われているような子供で日記と純文学がもう少し休んだらと心配しても「うるさい！」といって無視して動き回るのであった。何かに追われるように毎日500文字以上の成長を続け、ついに44444文字にまで成長するが、2019/07/17突然詐欺罪で逮捕され拘留中に死亡した。不毛なことに追われどうしの生涯であった。

小説の性格：

すべてが終わる前に自分の全てを伝えたい。主人公の『私』は自らの惨め極まりない人生を語り出す。生まれてから自分を一度も愛してくれなかった両親、学校でのいじめ、そんな環境に耐えられず故郷を飛び出し、都会に出たがそこでも馴染めず、仕方なく夜の世界で食いつないだ日々。心は汚され人間なんて信じられなくなり、今月の電気代も、ガス代も、スマホ代も払えなくなった現状まで赤裸々に語り続ける。

過去から現在まで自らの事をひとしきり語り終えた『私』は自分の名前と住所と電話番号とアドレス、そして一番よく撮れた写真を載せて叫ぶのであった。『自分は人間をもう一度信じたいんです！お願いです！こんな惨めな人間に愛をください！愛というのを教えてください！でないと自分はもうこの世界にいられない！だから誰か、自分に電話かメールであなたは一人じゃないって教えてくれ！』これが掲載されている最後の文章である。

小説の制作秘話：

もうそのまんま詐欺である。お金に困った作者は小説投稿サイトに目をつけて詐欺行為を働こうとしたのである。作者は昔の携帯小説から使えそうな部分を引っ張りだしてきて適当に貼り付けたものを小説として載せたのである。

しかし連載開始時点からその切羽詰まった調子で語られる悲惨な内容は素直な読者の同情を集めコメント欄に励ましの言葉が載り、調子に乗った作者が自分の不幸話を盛って書くようになるとコメント欄は感動の涙で覆い尽くされるようになってしまった。

これで完全にタガが外れた作者はデタラメの住所と仲間の電話番号と捨てアドレスを載せて『愛というのを教えてください！でないと自分はもうこの世界にいられない！だから誰か、自分に電話かメールであなたは一人じゃないって教えてくれ！』と、ついに振り込み詐欺丸出しの文章を載せたのだった。

一部の素直な読者はそれでも作者を救おうと電話やメールで作者と連絡を取ろうとしたが、流石に多くの読者は詐欺だと確信し、サイトや警察に通報して2019/07/17に連載は中絶した。