第10話  お嬢様の得た力 前編



「話を元に戻して、スキルが見えるようになるとは、今どのようなスキルが備わっているのか、そのスキルがどれくらいで具現化し、どれくらいで次の段階に至るのか、などが感覚的にわかるようになることよ。ただし、ルースのギフトなど実際に影響が大きく出るものについては、なんとなくこんなことが出来そうといった感覚になるはずだから、練習あるのみよ。」

「なら、今からこの能力を試してみましょう?もちろんあなたが相手してくださるわよねサーシャ先生?」と挑発的な言葉を投げかける。

「いいわよ、生徒の申し出を断るわけないじゃない。」と不敵な笑みを浮かべるサーシャさん。

それに対して、「えっと、私は、お飲み物やタオルの準備をしておきますね。」と嫌な予感がしたので逃げようとする。だが、満面の笑みでお嬢様が振り返り、

「アル、試合形式でするからあなたは前衛として強制参加よ。」

という命令を下されたので、燃やされる運命は変わらないようですね。

「はい、お嬢様畏まりました。お嬢様の盾を務めさせていただきます。」そのいつもの流れを聞いたサーシャさんが「なら、いつも通り二人を相手してあげるから移動しましょうか。」という言葉と共に練習が可能な場所に移動を始める。



お嬢様のお部屋を出て屋敷の裏手に整備された訓練場に向かう。その道中、無言で数歩後ろを並んで歩くお嬢様とサーシャさんが醸し出す剣呑な雰囲気を背中でひしひし感じる。今回も死なないように気を付けなければ、いやそもそもお嬢様に何かあったらその時点で、クビだろう。そう考えた瞬間、ぶるっと悪寒がしたが、とにかくこの身を挺してお守りすれば問題ない。脳内で解決したと同時に、訓練場に到着した。


この訓練場には、練習用の道具が収納されている小屋があり、まずはそこで準備をしてから始めることになる。ただし、魔法を主な戦闘手段とする者はあまり関係がない。なので、このメンバーでは、私だけですね。はい。小屋に入り、訓練に使用する盾と殺傷能力を減らすために刃を潰した片手剣を棚から選び、火系に対して軽く守護してくれる効果を持つ腕輪を装備する。ちなみにお嬢様は、普段から様々な守護が付与されたネックレスをしているので小屋には用がないのである。

さて死地に赴きますか。小屋の薄くて脆い扉だが、一時の安寧を与えてくれた扉を開けて外で待っている二人の元に戻る。

すでに二人は模擬戦をおこなうのに十分な距離を取り、私が来るのを待っていたようで、お嬢様が声を張り上げて私を呼ぶ。

「アル、早く私を守りなさい。」「はい。お嬢様!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る