第9話 お嬢様の家庭教師? 後編
「そう、ならどのようなスキルが見られるようになったのかしら?」
「今まであなたに教わってきた火属性魔法についてのスキルと格闘補助、それと貴族のプライドがスキル化していたわ。」
「ふんふん。確かに予想通りのようね。けれど、大体同じということは、何か予想外なことが合ったのかしら?」とサーシャは少しニヤッとしながら聞く。
「ええ、ギフト【火精霊の寵愛】を授かったのよ。それと同時に天啓も頂いたわ。天啓の内容については、口止めされているから私の口からは絶対に言ってはいけないことになっているけれど。」と沈痛な面持ちで答える。
「あら、それはまた強力なものを与えられたようね。それにしても、天啓の内容を口止めされるなんて聞いたことがないわね。気になるけれど、とりあえず、天啓自体の存在を隠すほうがいいと思うわ。」と真剣な表情に戻しサーシャが首をかしげながら意見する。
「もちろん。両親とあなたにしか言ってないわ。」
「そう、ならいいいわ。そういえばアル君には教えるのかしら?」ふと思い出したような感じで言ってくる。「いいえ。アルには、言わない予定よ。」と血の気の失せた顔で言う。
それを見たサーシャは口から発しかけた軽い言葉を飲み込み「無茶はしちゃだめよ。」と言う。その言葉を最後に部屋が重い静寂に包まれる。その空気をかき消すように、アルの声とノックが響く。
あれから私は、厨房にて紅茶と蜂蜜を軽く練り込ませたクッキーを準備し、お嬢様の部屋に戻る。
コンコン「お嬢様、アルです。入ってもよろしいでしょうか?」とノックしながら問いかける。すると、部屋の中から「ええ、さっさと入りなさい。」というお嬢様のお声を確認し扉を開き入室する。
うん?若干部屋の空気がどんよりしていますね。ここは、私が明るくする努力をせねばと思い「紅茶とこの前お嬢様が褒めてくださったクッキーをご用意いたしました!」と笑顔で言ってみる。
それを無視し、サーシャがクッキーをつまみ食いする。「いい感じに蜂蜜が存在感を主張しているわね。これ後で持って帰りたいわ。」とマイペースに言ってくる。それに対して発言しようとすると「まあこの話は終わりにして、授業を始めましょうか」とサーシャさんがすっぱりと切り出す。「そうねそうしてちょうだい。」というお嬢様の言葉を聞き、急いで紅茶とクッキーをテーブルに並べる。そして、立ち位置をお二人の間から、お嬢様の斜め後ろに変えて話を聞くことにした。
「とりあえず、スキルについて復習していこうかしらね。まずは、スキルがどのようなものかというところからにするわ。じゃあ、アル君スキルとはどのようなものか言えるかしら?」
思い出すようなしぐさをしながら「スキルとは、その人が生きてきた中で積み重ねられた経験や技術などの具現化されたようなもの、ですかね。」と軽く聞き返す。「うんうん、大体合っているわ。けれど、その人の血統や生まれた場所など本人にはどうしようもない部分もスキル化しやすいということが抜けているわよ。」
「あっそうでしたね。お嬢様の貴族のプライドや、平民の底力、その他にも職業に就いたら関連するものが付くということでしたね。」とサーシャさんに言いつつ、「お嬢様、実際に貴族のプライドが付いてから何か変わったことはありませんか?」と少し心配げに問いかける。
「そうね、今までとあまり変わらないと思うわ。アルから見てどう思うかしら?」と少し考えるようなしぐさをしてから聞き返してくる。
「いつもより凛々しくなったと思います。」とそのままの意見を述べてみる。
すると、「フーン、そうまあいいわ」とこちらを向いていたお顔を隠すようにサーシャさんの方に戻されるお嬢様。少しニヤッとしたサーシャさんが「成人の儀では、スキルが見えるようになるだけでほとんど変わらないはずよ。だって、それまでの積み重ねをスキルとして見やすくしてくれるようなものであって、ほとんどの場合変化はないもの一部の例外を除いてね。」と言いながら最後のところで含みを持たせる。
例外とはなんだろうかと思っているとお嬢様が「それは、私が貰ったギフトのことかしら?」と聞いていた。
「ええ、そうねそれもある意味では、スキルの一種だから合っているわよ。けれど、私が言いたいのは、違うことなの。」
もしかして、「サーシャさんのような人々のことですか?」
嬉しそうな表情で「当たりよ。そう、私たちエルフやその他の種族は、スキルが与える影響がかなりあるのよ。私だったら、成人の儀以降、老いる速度が遅くなり、寿命が延びる、魔法に関するスキルなど種族特性が強くなったわ。」とサーシャさんが言い、視線をこちらにチラッと向けてきたかなと思った瞬間すぐに元の姿勢に戻っていた。
あれは、気のせいだったのだろうか…
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