第11話 妊娠と出産

「あのさ、ちょっといいかな?」

私は首を傾げつつも頷くと、彼は続けてこう言いました。

「実はさ、前から考えていた事があるんだけど聞いてもらえるかな?」

その言葉に私が頷くと、彼は静かに語り始めました。

「そのな、朋絵としたいなってな」

「えっ、それってもしかして……」

私が驚いて聞き返しますと、彼は照れながらも頷いてくれました。

その瞬間、私の頭の中は真っ白になってしまいましたが、嬉しさのあまり泣き崩れてしまいました。

そんな私を優しく抱きしめてくれた彼は何度も謝ってくれましたけれども、私は首を横に振りながらこう言いました。

「違うの、嬉しくて泣いてしまっただけなの」

そして私達は見つめ合いました後、自然と唇を重ねていました。

最初は軽く触れる程度のキスだったのですが次第に激しくなっていき、

最後にはお互いを求め合うように舌を絡ませ合っていましたのでとても心地良く感じましたし幸せでした。

「ありがとう、朋絵」

耳元で囁かれた言葉は甘く響き渡り、私の思考を蕩けさせていきました。

(あぁ、拓哉と一緒になりたい)

心の中でそう呟くと自然と涙が溢れてきましたけれども、

それと同時に幸せを感じてしまいましたのでより一層彼を強く求めるようになりました。

その後、私達は愛を確かめ合うように何度も求め合い、最後には疲れ果てて眠ってしまったのです。

翌朝目を覚ました時はとても恥ずかしかったのですが、

それ以上に嬉しかったですし、幸せな気持ちになれましたので感謝の気持ちを込めて彼の頬に軽く口づけを致しました。

そして、今日もまた新しい一日が始まるのでした。

最近の私は毎日がとても充実していますし、

心から楽しいと思えるようになりましたから本当に嬉しいですし、満足しています。

「拓哉、大好き」

そう言って彼の胸に飛び込むと、彼は優しく受け止めてくれました。

そして私達は見つめ合いながら微笑み合った後、再び唇を重ねたのでした。

「朋絵、愛してるよ」

彼の言葉を聞いた瞬間、私は幸せを感じましたし心から満たされていくのを

感じましたので自然と涙が溢れてきましたけれど、それを拭う事なく彼を抱きしめ続けました。

(これからもずっと一緒に居ようね)

そんな思いを込めて強く抱きしめ続ける私の頭を彼が撫でてくれまして、

それがとても心地よく感じられますので思わずうっとりしてしまいますが、

いつまでもこうしていたいという気持ちもあるのですが、

そろそろ仕事に行かなければならない時間なので名残惜しいですが離れる事に致しました。

(でも……最後にもう一回だけキスして欲しいな)

そう思っていますと、彼も同じ気持ちだったらしくお互いに

抱き合いながら何度も口づけを交わし合いましたが、

それだけでは物足りなくなってしまい、結局また愛し合う事になりましたけども後悔はありませんし、

むしろ良かったと思っていますので満足しております。

(あぁ~幸せだなぁ)

「朋絵、そろそろ行こうか?」

「うん、そうだね」

そう言って私達は手を繋いで部屋を出ました。

そして玄関で靴を履いている最中、不意に彼が後ろから抱きしめてきましたので驚きましたが、

すぐに彼の方を向くと優しい笑みを浮かべていました。

そんな彼に対して私も微笑み返しますと、彼は私にキスをしてくれたのです。

その時間は私にとって至福の一時でありまして、とても幸せな気持ちになりましたが、

いつまでもこうしていたいという気持ちもありますけれども、

仕事に行かなければならない時間なので泣く泣く離れる事になりました。

「行ってきます」

「いってらっしゃい、気をつけてな」

というやり取りの後に家を出て行きますと、私は会社に向かって歩き始めました。

足取りは軽いですし、気分も晴れやかでしたので出勤するのが楽しみで仕方ありませんでした。

職場に到着してもその気持ちは全く変わることなく、寧ろ高揚感すらありました。

そんな中、同僚達が話しかけてきましたので、笑顔で対応しながら仕事をこなす日々を過ごしていたのですが、

一つだけ悩みがありました。

それは、最近体調が悪くなっているという事です。

風邪を引いているわけでもないのに身体が重くて怠く、頭痛やめまいといった症状が出ることもあり、

最初は気のせいだと思っていたのですが、

「あれ、なんかおかしいかも」

と思い始めた矢先、生理が遅れている事に気が付きました。

最初は気にしていなかったのですが、暫く経っても来ない事に不安を覚えた私は

産婦人科へ行き検査を受けた結果、妊娠している事がわかりました。

それを聞いた時は嬉しさと戸惑いが入り混じったような複雑な気持ちになりましたが、

それ以上に幸せを感じた私は涙を流してしまいました。

そして、家に帰った私は真っ先に彼に報告しました。

「赤ちゃんができたんだよ、凄く嬉しい」

と言ってお腹を撫でていますと、彼は泣きながら抱きついてきたので私も嬉しくなってしまっていました。

その後は二人で喜びを分かち合いましたが、出産に向けての準備をしなければなりませんので大変ではありますが、

私はこの子の為に頑張る決意を固めました。

そして、彼と話し合いをした結果、 産休を取る事に決めました。

その為、会社に事情を説明した結果、快く了承して頂く事が出来たので安堵すると共に、

これからは仕事に専念できなくなるかもしれないと申し訳なく思う反面、

無事に生まれてきて欲しいと思うようになったのです。

「大丈夫、絶対元気に産まれてくるからね」

私は自分のお腹をさすりながら話し掛けると返事をするかのようにポコッと動いたので驚いてしまいましたが、

何だか不思議な感覚がして幸せな気持ちになったので思わず笑みが溢れました。

それから数日後、予定日を迎えた私は入院する事になったのですが、

その間、彼は毎日お見舞いに来て下さいましたし、

私が退屈しないように本を持ってきてくれたり等色々と気を遣わせてしまいましたがとても嬉しかったですし、 心強かったです。

そしていよいよ陣痛が始まりましたが、想像していたよりも痛みが激しく辛かったのを覚えています。

けれども彼を心配させたくない一心で何とか乗り切り、無事に出産する事ができました。

元気な女の子を出産した時には涙が止まりませんでしたし、

彼も一緒になって泣いてくれたのを見て感動した事を今でも覚えております。

そして、産まれたばかりの我が子を抱くと何とも言えない愛おしさがこみ上げてきて涙が出てしまいそうでした。

その後、私は母子共に健康だという診断を受けて退院する事になりましたが、

しばらくは自宅で安静に過ごすように言われてしまいましたので暇な日々を過ごす事になってしまいましたが、

その分、彼が積極的に家事を手伝ってくれるようになってとても助かりました。

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