つぎ
DAY-03-01
プアアアァァァァ―――……、と、染み入る音が響く。
初めて葬式に参列したのは祖父の時だった。小学校の半ばくらいで、その頃は『死んだ』というのも明確には理解しきれていなかった。大人があれこれと動いて、自分は指示されるままに座っていただけで、頭を下げたり手を合わせるくらいだった。
成人した今、この見送るという数分が、とても重く感じるようになった。
光貴は平井家に訪れた時と同じスーツを着ていた。参列者を望んでみたが、知っている人はいない。夕季の住んでいた近所の人や、親族の知り合いだろうか。同級生の一人くらいいると思っていたが、そんなことはなかった。
「豊本様」
覚えのある声に振り向くと、いつぞやの弁護士がいた。どうも、と軽く頭を下げる。
「あの後、御考えの方は……」
「それは、……悩みっぱなしです。あれから、ネットで色々と調べてみたんですけど、大まかな内容は理解したつもりでも、それを実際にってなると、不安しかないです」
「お話してから時間も経っていませんから、無理もありません」
上林と共に式場を少し離れた。雲一つない青空を見上げ、少し首元を緩める。
「上林さんは、夕季さんとどういった関係ですか?」
ふと気になっていたことを尋ねる。
「はは、気にはなりますよね。一般的に見て、弁護士ってなると警察沙汰とか相続とか、物騒なことでないと関わるものじゃありませんから」
上林も緊張していたのか、軽く腕を振って身体を解す。身形からして光貴より年下だろうか、動きが様に見えた。自分が同じ事をすれば、倦怠感しか出なさそうだ
「以前、牧野様の親族の方から別件で依頼されたことがありまして、夕季様が体調を崩された時に紹介を受けました」
「……病院にいた頃、ですか?」
隠す必要はなくなったと思ったのか、言葉がすんなりと出た。
「やはり、夕季様の容体につきましては御存知でしたか」
「最後にあった時が、彼女が入院している時でしたので」
無性に何かを飲みたくなったが、ふと遠目にある自販機に行こうという気までしなかった。
「学校を出てから連絡は取らなくなって、今とは別の仕事で一年過ぎたくらいに電話を貰ったんです。そしてら『ちょっと会いに来て』なんて言われて」
「行ってみたら病院だった、と」
「最初は病院で働いているのかと思いましたよ。何も疑わずに行ってみたらベッドに寝てたんですから。……でも」
「でも?」
「その時、その姿を見て、夕季だなぁって思ったんです。不謹慎ですけど。……可笑しいですよ。普通に歩いているよりも病室で横になっている方が様に見えるって」
「確かに。そう思ってしまうのは不思議ですね」
上林は共感してくれたのか、少しだけ笑っているような感じがした。
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