DAY-02-04

 未成年後見人。初めて聞いた名称だ。

「未成年後見人というのは、簡単に申しますと、実親がいなくなった場合、代わりの法定代理人として養育や財産の管理を行う制度です」

「それって、養子みたいなものですか」

「似ている部分もあり、異なる部分もあります。ざっくりと説明しますと、養子という関係であれば一つの家庭――親子関係を結ぶことになります。一方で未成年後見人制度は、未成年者に対しての『管理者』になる、というイメージを持っていただければと思います」

 細かいことは追々でと、上林は簡潔に答えた。

「何か難しくないですか?」

「そう思われるのは当然だと思います。もう少し付け加えるとするなら、財産についてです。養子関係であれば、養子となる人物――今回なら涼夏様の財産を豊本様の財産として扱うことができるようになります。大雑把に言いますと、親となった豊本様は、涼夏様の財産を自分のものにできる、ということです」

「……どこかのドラマみたいですね」

「まぁ、実際にドロドロした親子関係を描いたドラマなんかではよく出てくるでしょう」

 上林なりのジョークなのか、少しだけ吊り上った口元に連れて不敵な笑みをした。それが単なる冗談に聞こえなかったのは気の所為だろう。

「夕季様は亡くなられる前に、遺書として未成年後見人に豊本様を指定なされました。因みに自筆の遺書と共に公正証書としても作成されていますから、その点はご安心していただければと……いや、亡くなられているのに、この言葉は不適切ですね」

「すみません。ちょっと一つ、確認したいことが」

 言葉を聞いているだけだったが、どうしても確かめなくてはならない事があった。

「なんでしょう」

「話を折ってしまうのですが、その……後見人に指定されたことに関して、自分は何も知らされていないのですが」

 すると上林は予想していなかったとばかりに瞼が開いた。

「いや、本当なんです。その……彼女、夕季さんとは同級生という仲ではあったのですが、数年は連絡が途絶えていて、何をどうしているなんて全く知らなかったんです。今回の電話を貰って、一体何の話をするかも予想できませんでした」

「夕季様の遺書に親族でもない方の名前を遺していたことは疑問に思っていましたが、……私は、貴方様がこの件に関しては認知しているという体で進めようと考えていました」

 上林は一度溜息を小さく吐いて、一度、叔父の道正に視線を向けた。気付いた本人は眉を寄せて苦々しい顔になって軽く俯いた。

「平井様、……それと涼夏様。少しの間、席を外してもらってもよろしいでしょうか」

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