2019年5月後半/8冊 20年目に突入した『書籍記録ノート』

 『書籍記録ノート』なるものを1999年からつけている。今年で、20年目に突入した(パチパチパチ)。

 『読書感想ノート』ではない。『書籍記録ノート』である。購入履歴の頁には【タイトル・価格・購入年月日】を記入。単行本や文庫のみならず漫画、写真集、雑誌に至るまで、新刊・古書を問わず、すべてを記している。

 1999年は新刊漫画が390円という時代だ。2014年3月まで105円だった古書が、翌4月から108円に変わっていた。時代の流れを感じる。


 読書履歴の頁というのもあって、ここには【読了年月日・タイトル】を記入。海外小説の頁には【タイトル・作家名・訳者名】を、お気に入り作家の頁には【読了タイトル・読了年月日】(これで未読の作品がわかる)、さらに異なる訳者で刊行されている海外小説の頁には【タイトル・訳者名・出版社】を記す。


 このノートを見れば「●年◆月は漫画ばっかり購ってるな」「■年は年間読書量が少ないな」などが、一目でわかる。

 とりわけ興味深いのは購入履歴の頁である。ずらりと並ぶ20年分のタイトル群は、便覧並みの迫力がある。一方で、ずらりと並ぶ20年分の金額をすべて足していったら、どれだけの額になるのやら……想像するだに怖気がする。

 手放した本も多数ある。うへぇ、こんなんってたんか……黒歴史まで拝める。


 つけ始めたきっかけは、まるで思い出せない。

 が、20年前の自分に「よくやった」と云ってやりたい。このノートがなければ『積ん読始末記』は生まれなかった。


  時の旅人/長野まゆみ

  天然理科少年/長野まゆみ

  ささみみささめ/長野まゆみ

  若葉のころ/長野まゆみ 2009年3月

  きみの背中で僕は溺れる/沢木まひろ

  ご冗談でしょう、ファインマンさん 上

                /リチャードP.ファインマン 2009年2月

  友情論/アベル・ボナール 2012年11月

  友情の文学誌/高橋英夫 2019年5月


 2009年代【ツン地層】から2冊を消化。10年前の記憶なぞ、もうなにも掘り起こせないが、ノートのおかげで記録は残る。


*************************************************************************


5月後半の「ちょっと一言云わせて本」

『友情論』


 私の心をかき乱す罪なお方――その名は【友情】。

 アベル・ボナールの『友情論』を読んだ。悶死した。本書を読んでつくづく思ったのは【熱い友情=男性の特権】ということだ。同性間の友情を語っていながら、一行として女性同士のそれには読めなかった。なぜ?


 【ボーイズラブ】に次ぐ新興勢力【ブロマンス】の熱烈な支持層は、もっぱら女性である。【ブロマンス】小説を書くのも、ほぼ女性。

 プロ作家でもざっと思いつくかぎり、柴田よしき、髙村薫、五條瑛、日明恩、福田和代、三木笙子……と女性が多い。そして、おそらく彼女たちは【ブロマンス】を読みながら(あるいは書きながら)「いいなぁ、私も女同士でこんな友情を経験したい!」とは。男同士であることに意味があるのだから。


 女性のあいだにも友情は存在する。でも【ブロマンス】に相当する名称が存在しない不思議。それとも私が知らないだけで、あるのだろうか。

 一方で【ガールズラブ】には、熱狂的な同性ファンがいる。熱い友情を飛び越えて、恋愛まっしぐらという不思議。

 逆に男性陣はどうなのだろう。女同士の友情物語を読んでみたいと思うのだろうか。あるいは【ブロマンス】を読んで同性として共感、心酔するのだろうか。


 明らかに恋愛要素ゼロであっても、主役が男同士というだけで、彼らの言動に「こいつらアヤシイ」レッテルを貼りつけてしまう私は、書かれている科白を、言ってもいない科白に捏造し「こいつらヤバすぎ!」と萌えている。

 物語が正統派であれば、いよいよムキになって「余の眼はごまかせんぞぉぉ」と、アラ探しならぬ萌え探しに身をやつす。「いや、そういうつもりで書いてないからね」という作者様の困惑もどこ吹く風、迷惑極まりない読者へと日々進化(退化?)している。


 いったい何をきっかけに、かような特技(珍技)が身についてしまったのか。少なくとも20年前までは、男同士の熱くて、厚くて、篤い友情物語を読んでいても、さりげない仕草を深読みしたり、なんでもない科白を殺し文句に変換することはなかったのにな。



『友情の文学誌』


 作家という職業は男性の専売特許ではないにもかかわらず、相関図の登場人物がことごとく男性。加えて「そういう目で読んでくれ」と云わんばかりの内容。

 えっ! あの文豪と、あの文豪が?!(名前は伏せさせて戴きます) そんなこと書いちゃっていいんですか? 秘密にしておかなくていいんですか??


 互いにしたためあった秘密の手紙を後生大事にとっておいた文豪たち(名前は伏せさせて戴きます)。処分しておかなかった不手際を、天国で激しく悔いているに違いない。現代だからできる暴露本、みたいな。

 思いきり萌えさせていただきました! ごちそうさまでした! みたいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る