2019年3月/12冊 絵画があしらわれた素敵本
表紙や挿絵に、イラストではなく絵画が使われている素敵本を、ごくまれに
見かける。我が家には3冊ある(3冊しかない)。
最初の出会いは2005年、恩田陸女史の『ライオン・ハート』だった。
「らいおんハート……SMAPの曲のパクリですか」と思われた方のために添えると、恩田さんはケイト・ブッシュの2ndアルバムからこのタイトルを拝借したそうな。
当時の私は重度のSFバカだったので、作家先行ではなくジャンル先行で本書を手に取った。タイムスリップにロマンスをからめた連作集だった。
が、私の心を奪ったのは話の内容ではなく、章の扉ごとに掲載された西洋画(しかも、カラー)だったのだ。「ちょっ、なにこの素敵本!」と感動して以来、恩田さんは一目置く作家になった(偉そう)。
3番目の出会いは2014年、長野まゆみ女史の『夜間飛行』だった。
すでに文庫版を持っていたが、古書店で目に止まった単行本をふと手に取り、頁を繰るなり「誰やねん、これ売りに出したやつ!」と息巻いた。まぁ、おかげで、これほどの素敵本を、108円で
長野女史は美大出身ということもあり(また、極度の凝り性ということもあり)デビュー当時から一貫して装丁へのこだわりがうかがえる。
『ライオン・ハート』と違い、こちらは文庫版も単行本とおなじくカラー掲載、というわけにはいかなかったようだが。
2番目の出会いは2011年、山尾悠子女史の『ラピスラズリ』だった。
もとより豪華な函入り、麗しの装丁(表紙の色と手触りが、たまらん……)
というのに、そこへ極上の絵画を載せるときたもんだ。失心させる気か。
函から出した瞬間、我が目を疑った。いったん視線をはずした。
「落ち着け、自分」と戒めて、再度直視した。そして、うなだれた。
女史、これは使ったらアカンやつですよ。
画家の名はジョージ・フレデリック・ワッツ。
私のプロフィール欄でも紹介している、お気に入り画家のひとりである。
そして、選ばれし絵画というのが――。
『希望』
この画像を、デスクトップの背景に設定していた時期がある。パソコンを立ち上げるたび痛くて切ない気持ちに駆られるので、耐えられなくなって、やめた。
ちなみに、ワッツの絵画で一番好きなのは『選択』だ。
季節ごとに部屋の絵画を入れ替える。6枚の西洋画が、味気ない壁を華やかに飾ってくれる。むろん本物ではない。複製でもない。ネットで探した画像をA4版でカラープリントしただけのものだ。
でも、きちっとした額におさめれば、モノホンの絵画に見える。100円ショップのプラスチック製であっても、きちっとした額に見えるものを択べば、問題なくモノホンに見える。
冬になると必ず択ぶ1枚がある。イワン・クラムスコイの『忘れえぬ女』。
これを額におさめると「ああ、今年も終わりか……」と思う。
船に乗れ! 1~3/藤谷治 2017年2月
青月記/榊原姿保美 2013年4月
胡蝶の夢/榊原姿保美 2014年3月
魚たちの離宮/長野まゆみ
夏至南風/長野まゆみ
銀木犀/長野まゆみ
遊覧旅行/長野まゆみ
綺羅星波止場/長野まゆみ
木曜日の子供/テリー・ホワイト 2017年12月
二重人格探偵エリザ 嗤う双面神/ヴィオラ・カー 2017年12月
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3月の「ちょっと一言云わせて本」
『木曜日の子供』
読み進めるのがしんどかった。結末が予見できてしまったがために、なおさら
つのる切なさ。できれば避けて通りたいと願いながら、それでも読み終えなければならない苦しさ。プチ・トラウマ気味である。
主人公ふたりがオジサマ同士、または青年同士、あるいは少年同士だったら、読後感は違ったものになったんだろう。歳の差が生む切なさって、あるよね。
『二重人格探偵エリザ』
イギリス史ではヴィクトリア朝時代が大好物な私。文化、階級制度、小道具、
衣装、インテリア、生活様式etc……どれをとっても、テンションがあがる。
そんな時代設定に《異端者》というゴシック要素が加わったことで、ひと味もふた味も違うロマンス小説の完成だ。
読みはじめの期待値と高揚感を維持したままで、ラストにも怒涛の展開が待っていた。素晴らしい読後感を得られらた一方「え、ここで終わり? 殺生な!」というおあずけ感も喰らったけれど。
ゲイル・ギャリガーの『アレクシア女史シリーズ』に次ぐ、マイ・フェイバリット・ヴィクトリアン・シリーズ誕生――そう小躍りしたものの、2冊目以降の
邦訳が、まったく出ない。原書で
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