2018年6月/17冊 初めて読んだクリスティ作品
ミステリの女王アガサ・クリスティの話題をこんなに早く出すつもりはなかったのだが、前回があんな終わり方になってしまったので、やむをえず。
初めて読んだのは中1ごろだったと記憶する。
『ABC殺人事件』――教室内に設けられた貸出本コーナーに、易しい訳文による、ポアロ・シリーズが並んでいた。
しかし、きっかけがまるで思い出せない。当時は、アガサ・クリスティという名すら知らなんだ。赤川次郎氏の小説を読みまくってた時期なので、その流れ(解説やあとがきによる紹介)で手に取ったのかもしれない。
いずれにせよ感想は「ふーん」程度の味も素っ気もないもので、これを機に
クリスティにハマる、といった事態にはならかった。
「クリスティといえばハヤカワ」と云われる、あの赤背表紙による文庫版初体験は『そして誰もいなくなった』である。これも中学時代だった。オールタイム・
ベストなどで必ずや選出される定番中の定番ゆえ「ミステリ初心者におすすめ、初めての1冊はこれ!」みたいなベタ感がハンパない。
にもかかわらず私は、読み終えたあとも、犯人がまったくわからなかったのである(チーン)。
そうはいっても流石はクリスティ、得体のしれぬ不気味さ(それは犯人がわからなかったからでは……と今なら思う)は、しっかり植えつけてくれたものだから、自分だけこんな気分でいるのはイヤだと、父を道連れにすることにした。
「お父さん、これ読んでみて! すっごいおもしろいから(大ウソ)」
ところが、数時間後に娘が目にしたのは、いびきをかきながら眠りこけている父のまぬけヅラ&その横に放置されていた『そして誰もいなくなった』――
娘は吠えた、心の中で。
「ミステリも読破できんこんなヤツが、一家の大黒柱かよ!」
世の父親が娘に嫌われる原因は、なにも加齢臭にかぎらないという話。
クリスティがマイブームとなったのは社会人になってからである。
父親に対する威厳を思春期まっただなかの娘から奪い去り、よくわからん恐怖に突き落としたあげく、犯人もよくわからんまま少女を大人にしてしまった罪深き『そして誰もいなくなった』の再読は、実に20年を経てのことだった。
2度目の読後は、不気味さどころか素晴らしいプロットにひたすら感動、犯人もわかってメデタシめでたし、非常にすっきりした後味を得たものだ。
翌日、ふたたび頁を繰る自分がいた。手の内を知った上で読むミステリというのは緊迫感こそないものの、伏線の回収作業が思いのほか面白かったことを覚えいてる。
意外な犯人とトリックの見事さにすぐさま再読したのは、今のところ『そして誰もいなくなった』と『ナイルに死す』だけ。クリスティは原書でも数冊読んだが、難解な英文ではないのでお勧めだ。
ユーモレスク/長野まゆみ
よろづ春夏冬中/長野まゆみ 2018年5月
チマチマ記/長野まゆみ 2017年12月
書き下ろし日本SFセレクション NOVA2/大森望責任編集 2017年8月
書き下ろし日本SFセレクション NOVA1/大森望責任編集 2017年10月
私の本棚/新潮社編 2018年6月
93番目のキミ/山田悠介 2017年11月
キリン/山田悠介 2017年11月
So This is Christmas/ジョシュ・ラニヨン 2018年3月
現代幻想小説の読み方101/國文學編集部 2012年11月
サマー・キャンプ/長野まゆみ 2018年5月
冥途あり/長野まゆみ 2018年6月
書き下ろし日本SFセレクション NOVA3/大森望責任編集 2017年8月
三日月少年漂流記/長野まゆみ 2018年5月
書き下ろし日本SFセレクション NOVA5/大森望責任編集 2017年8月
素子の読書あらかると/新井素子 2018年6月
ブラザー・サン シスター・ムーン/恩田陸 2018年6月
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6月の「ちょっと一言云わせて本」
『私の本棚』
タイトルどおり、本棚に焦点をあてた23人の著名人によるエッセイ集。本棚にこだわりを持つ身としては非常に愉しめる1冊だった。
本好きの普遍の悩みは、気づけば増殖している奴らの整理・収納であって、
これに奮闘する執筆陣23通りの苦労話は、一般市民である我が身と重ね合わせても大差ないことから、万人に共通の試練なのだとつくづく思う。
ただし、あくまで《読み物として面白い》の域にとどまるのは、真似できることがひとつもないからだ。執筆者の方々に比べると凡人極まりない私めは、経済状況、住宅環境、人脈どれをとっても遠くおよばないゆえ「知人の建築家に頼んで、部屋いっぱいの本棚造ってもらいました~」なんて無理だもの。
私の理想はズバリ、すべてのタイトルがひと目でわかる書棚だ。
奥にある本を出すために、手前の本をどかすという手間が、かからない書架。
「この本の後ろには……はて、なにがあったっけ?」
などという、よけいな思考にとらわれずにすむ書架だ。
狭い部屋でこれを実現するとなると回転式ラックが思いつくが、なんせ見た目がよろしくない。回転式ラックばかりが林立する部屋に立って、本を探すたびにグルグルやってる己の姿もよろしくない。
でも、何となく愉しそう……という気はする。
日常で嫌なことがあって病んだときなど、一人で夜中にグルグルグルグルグルやれば、スッキリして、ぐっすり眠れるかもしれない。
だが、
遊園地の回転木馬だって、たま~に乗るから優雅な気分になれるのであって、毎日回転などしたくはない。吐く。
「頼むからやめてくれ。前に居並ぶ仲間のせいで、自分の姿が隠れたってかまわない。グルグルされるよりは、ぎゅうぎゅう詰めになってる方が全然いい」
という
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