2018年5月/16冊 読者が読みたいモノを書くか作者が書きたいモノを書くか、それが問題

  ※ 本編は【小説家になろう】掲載時(2018年6月)の内容のまま

    手を加えておりません。あしからず。 

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 先日、新聞を読んでいたおり瞠目の記事を発見した。山尾悠子女史が8年ぶりに連作長編『飛ぶ孔雀』を刊行したそうな。うかつにも、まったく知らなんだ。


『積ん読始末記』にも度々ご登場いただいている山尾女史。その新作とあらば、さぁみなさん、共に至福のひと時を過ごしましょう、と推奨したいところなのだが、女史いわく「読んで楽しい、感激する小説ではないので、手を出しにくい

雰囲気の漂う装丁を頼んだ」とのこと。

 うむむ……さすがは稀代の幻想文学作家。万人受けは狙わず、あくまでターゲットはコアなマニア層という売り方に個性と矜持が光っている。

 そして私はこの女史のスタンスに、アマチュアの分際でおこがましいとは承知のうえで、共感しまくりなんである。というのも、自分の書く作品が見事なまでに自己完結型、自己満趣味小説に傾倒しているからだ。


 【小説家になろう】という人気サイトへ載せる以上、読者を念頭においた、

読者が読みたいと思う、読者が喜ぶような小説を書くべきだという趣旨はよく

わかる。ならば自分も異世界ファンタジー系の小説にいざ挑戦――するかというと、そんな気はまるで起こらない。理由は至極単純で、趣味領域にないからだ。


 元来が天邪鬼体質ゆえ、読むにしてもベストセラー作品は「あ、自分、結構なんで」と慇懃無礼に避けてきたし、書くに至っては趣味領域から数ミリとて出たためしがない。

 投稿サイトというアマチュアにはありがたい疑似出版市場を間借りしておきながら、広大なフィールドの果ての果てみたいな場所で、チャレンジ精神ゼロの脳ミソが紡ぎだす作品は自己満小説――って社会不適合者の独白みたいなんだけど(好きな話書いてるだけなのに)。


 あまつさえ、ホームページやブログ、ツイッターなどのSNSもやってないため

「どうか読んでくださいませ~」といった宣伝媒体もゼロときてる。

 もとより携帯電話なる文明の利器を、今日まで所持したことがないのだから、

ガラケー、スマホ、タブレットといった存在そのものが、私にとってはファンタジーである。


 閑話休題。

 山尾女史の書籍はどれも作者こだわりの装丁ゆえ、消費者のお財布に優しい品とは決して言えない。この点で書き手の願望が優先しており、読み手は二の次となっている。

 しかし、そのためにファンが離れていくかというとむしろその逆で、滴が何年もかけて石を穿つように、ひっそりとした噂が噂を呼んで、マイノリティながらも超根強いファン層ができあがったのだと思う。「廉価だからうなら文庫派」と言い切る私をして単行本(それも中古でなく)を購わしめるのだから、女史の書籍にはベストセラーをしのぐ魅力がつまっている。

 まぁ、根がセコイ私ですから、購う前に(購ったあとでも)

「なにこれ、高っ!」と、口にはしますけども。


 さて。

『積ん読始末記』に関して言うと、活動報告をしない気まま連載にもかかわらず更新日に必ず読んでくださる方が10名ほどいるようだ。飽かずに9話まで読んでくださるとは、趣味領域の重なる部分があるのかなと思う。こんな自己満エッセイを、ありがたいことである。

 アルファベット文字に余裕でおさまる人数のため、仮にその方々を、AさんBさんCさんDさんEさんFさんGさんHさんIさんJさんと呼ばせていただく。


 私にとっての一番の目標は読者数を増やすことではなく、AさんBさんCさんDさんEさんFさんGさんHさんIさんJさん、これら総勢10名の方々に「この先も読みたい!」と思ってもらえる『積ん読始末記』を提供し続けることだ。


 しかし今回10話を読んだ結果、AさんBさんCさんDさんEさんFさんGさんHさんIさんJさんのうち、BさんEさんIさんが「けっ! こんな面白くねぇモン、もう読まねーよ」と離れてしまうかもしれない。それは『積ん読』の魅力不足、作者の力不足だから仕方ない。後ろ髪を引かれることなく「これまで読んでくださってありがとう」と送り出したい(あっさり)。


 でも11話を更新した日に、KさんLさんMさんが新たな読者となってくださった場合、総勢10名は変わらずのため私はAさんBさんCさんDさんEさんFさんGさんHさんIさんJさんが読んでくださってるとばかり思ってるわけで、

これはKさんLさんMさんに対し、非常に失礼のような気がする。でも、どうすればいいのかわからない。


 また、一度は離れたBさんが「寄りを戻そう」的なカムバック読者として

ふたたび加わってくださった場合、Bさんのままでいいのか、ニューBさんになるのか、はたまたNさんとしてして新規登録した方がいいのか、山尾女史の話はどこへいったのか、趣味領域の話は終わりなのか、本でもない創作の話でもない

いったいなんのエッセイを読まされているのか、ここへきて「ちくしょうダマしやがって、こんな支離滅裂エッセイ、もう読まねーよ、あばよ!!」となって

AさんBさんCさんDさんEさんFさんGさんHさんIさんJさん全員根こそぎ離れてしまって、そして誰もいなくなった……。

 

 よし、次回の話題はA・クリスティにしよう――おあとがよろしいようで。


  天球儀文庫/長野まゆみ

  さくらさくら/榊原姿保美 2017年11月

  フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ 下/ELジェイムズ 2015年9月

  Fifty Shades og Grey/E.L.James 2015年9月

  フェア・ゲーム/ジョシュ・ラニヨン 2016年10月

  本が多すぎる/酒井順子 2018年3月

  デカルコマニア/長野まゆみ 2016年5月

  老いと収納/群ようこ 2017年3月

  月の振り子/榊原姿保美 2013年6月

  ボクの彼氏はどこにいる?/石川大我

  背景ビジュアル資料4 学校・学院・学園/かさこ

  和の背景カタログ 和室・日本家屋/マール社編集部

  21世紀萌え映画読本/大木えりか 2015年5月

  兄と弟、あるいは書物と燃える石/長野まゆみ 2016年8月

  少年アリス/長野まゆみ/2014年6月

  哲学男子/ポストメディア編集部 2017年10月


 文字のほとんど入っていない写真集もどきが2冊ほど紛れ込んでいるが、

知らぬふり。


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5月の「ちょっと一言云わせて本」

『21世紀萌え映画読本』


 久しぶりに一気読みさせられた。萌えの力ってすごい!のひと言だ。

 趣味領域に次々とクリーンヒットが飛んできて全部受け止めたがために、

いささか脳がしびれ気味。


 学生時代に比べるとまったく観なくなった映画だが、本と違い《ビジュアル&声》という武器をひっさげた登場人物たちは、うまくハマれば無敵、失敗すれば総スカンで、その後の役者生命にもかかわってくるから、お気の毒(他人事)。


 挙げられているのはアメリカ・イギリス作品がほとんどで、監督や俳優にも

非常にかたよりがみられるが、それは《萌え》がテーマゆえ。裏を返せば、

《萌え》をあつかえる監督と俳優は非常に限られてるということだ。


 chap5の《探偵と相棒の関係性》にはずいぶんと笑わせてもらったし、chap6の《セクシュアル・マイノリティであることの困難》には深く考えさせられた。chap7の《一筋縄でいかない力関係の妙》では、あらためて気づかされたツボがあった。


 しかしなんといっても目玉は、chap2の《男性たちの連帯の起源》に尽きる。

『2018年3月』に続いて、またもや登場、合田刑事! いったいどんだけ人気なんだ、合田刑事! 遭遇率がハンパないぜ、合田刑事! 

 要は類友ってことですな、著者サマと私が(笑)。

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