第46話ーーおっさん夢を見る

 昨日投稿忘れてたみたい。゚( ゚`ω´ )゚。


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 おっさんたち地球世界管理神一行の職場は、とてもホワイトである――現時点においてはであるが。

 2日地上のダンジョンに潜り、1日休むを繰り返す。時折地上ではなく、部屋付きの時があるくらいで、基本的にはそのルーティーンだ。

 朝は9時頃に起き出し、その後ゆっくりと食事。その際に本日の予定地域を話し合い、だいたい12時頃に地上へと向かう。1日あたり4〜5箇所の各1時間の計4〜5時間かけて踏破し、天空へと戻る。

 その後おっさんはルルアーシュと共に地球世界の管理を行い、その他のアル・ローガス・ウルフは新木の元へと向かい、新生物のデッサンやモデリングを手伝う。その時間は約2時間程。

 これが日々の業務で、休日や仕事後は完全自由時間である。ルールといえば、毎日全員で一緒に朝食を必ずとることくらいだろうか、(仕事のある日は夕食も一緒にとる)


 さて、その自由時間に各々何をしているかというと。

 以前は何だかんだ全員で1日一緒に過ごす事が多かった、天空の島の探検をしたり、屋敷内でのんびりしたりと。

 だが先日、6人揃って国立競技場でカメラの前で挨拶をしてからというもの、一変した。


 それはローガスにファンクラブやファンサイトが作られた事が大きく関係する。日々機嫌が良くなっていくローガス。それを忸怩たる思いで見つめる他の者たち……

 そしてそれぞれが自らのファンを獲得しようと動き出したのだ――ルルアーシュだけは、その心が理解出来ないといった体ではあったが。

 いや、そもそも神とその眷属であるからにして、ファンではなく信徒だと思うのだが……まぁ特に教義がある訳でもないのでいいのかもしれないが。


 まずアルが簡易投稿文サイトにアカウントを開設した。載せている内容は時々天空の島の光景を映したりはするが、基本的に猫動画ばかりの、完全に猫好きのみをターゲットにしたものである。

 そして時折おっさんにせがんで、神の啓示を利用して「動物を大事にするにゃっ」と発信する。

 元々ケット・シーという種族の人気、その上呟きでは普通の言葉なのに、話すと「にゃ」がどうしても入ってしまうギャップや可愛さから、狙い通り猫好きと女性人気を得ており、ファンクラブやサイトも出来ていた。


 ローガスは数あるファンサイトを細かくチェックしていた。ブログは作らないが、新たな執事服を山ほど作製していた。素人目には全て同じに見えるが、どうやら色々違うらしい……こだわりがあるらしい。


 ウルフは数々の武器防具を磨くのに余念がない。より派手でゴツゴツしたものが好みらしい……漫画やアニメを参考にし、時折鏡の前でポーズの練習をしていたりもする。

 地上ダンジョンへと赴いた際には、突入前に誰よりも低くドラゴンを飛行させ、その上でポーズを決めたりしてアピールを欠かさない。

 アルと同じくケット・シーの可愛さと、それと反するカッコ良さ?……カッコ良さが、一生懸命背伸びする男の子的に捉えられ、これまたファンクラブやサイトが出来ている――同士のファンも多く獲得していた……厨二的な。


 ルルアーシュはそれらの行動を呆れた表情で見ているも、文句をつける気はないようで、何やら道具を作ったりしていた。

 だがそんなルルアーシュにも、ビジュアルからかファンクラブやサイトが出来ている。


 新木にもファンクラブやサイトが出来ていた……努力の甲斐あってか、宝塚ファン的なお姉様扱いのものや、ビジュアルから男性ファンを獲得していた。

 語り合ったり新型機のヒントを得たいとの思いから、ブログを開設して機動戦士について熱く語ったところ、同好の士が多くファンクラブに加入しているようである。


 そしておっさんは……予想通り、ファンクラブやサイトなどはなかった。

 ――いや、厳密にいうとはあった。おっさんの名を題した、全体的に暗めの色を使っており、中を見るにはパスワードを要するサイトだ。おっさんはログイン出来なかったが、ルルアーシュが突破し見てみたところ、『邪神大磯保を崇める』といったものだった……


 当然おっさんは悔しがった、血の涙を流す勢いで悔しがった。

 そこでおっさんも簡易投稿文サイトのアカウントを作成して、怒涛の勢いで呟き続けた。

 だが開設当初は、数いるBOTやニセモノの1つと扱われ、いつまで経っても一向にフォロワーが増えない……

 本物だと証明する術を考えた後、アルたち眷属を隠し撮りして掲載すると、一気にフォロワーが増えた。

 おっさん、自分の考えがあっていた事が証明されたと大満足である。更にはその数はどんどんとうなぎ登りで、瞬く間に数億となった事でご満悦だった。


 そしてそれに比例して、どんどんと眷属たちのファンクラブは拡大していく……だが肝心のおっさんの望むモノが現れる気配すらなかった。

 DMやリプライは、眷属たちの日常写真を望むものばかり……


 おっさんの小さな器はもうボロボロである。


 だが、ここで挫けるわけにはいけない。

 原因を深く考える。

 思い当たるとしたら、主神という事で畏れおおいと思っているのではないか?という事だった。

 そこで、『主神だけど、フレンドリーで怖くないんだよ作戦』を決行する事にした。

 目を血眼にして、自分のファンクラブなどを探していた際に見つけた、神様専門カメラマンという怪しげな日本人へと連絡し、世界初となる単独インタビューを許したのである。


 3時間に渡るインタビュー中は、極めてにこやかに笑みを絶やさず、ダンジョン付与から今までの話を丁寧に話した。優しげに、フレンドリーさを忘れずに……

 ――おっさん必死すぎである。必死すぎなのと、元来知らない相手に対して自然ににこやかに笑える人間でも無いために、その笑顔はとてもぎこちなく、怪しいものだった事を本人は気付く事はなかった。


 そして待望の放映後……

 増えた、怪しげなサイトが……

 増えた、DMやリプライが……

「許してください」「天罰は許してください」「死にたくない」と懇願するような言葉ばかりが。


 おっさん、涙目である。


 だがおっさんは諦めない、キャーキャー言われたいのである。


 いつか黄色い声援に溢れる世界と夢を見て、今日も何かを呟き続ける……




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