第26話ーーおっさん深く考える①
あまりにも新木が可哀想で、酷いとのコメントを頂きましたので、話を消させて頂いて修正致しますm(*_ _)m
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「そっか、ちょうど良かった。ちょっとこれからの事で相談と、ローガスとルルアーシュには幾つかの質問があるんだけどいいかな?」
血の繋がった家族との別れを話したおっさん。その後、これからの目標として、眷属3人が既に予想していた地球上のダンジョンを踏破する事を告げた。
「つい先程まで保様がそのようにされるだろうと話しておりました」
「で、ダンジョン位置の把握のための機能が、保のペットの龍神に搭載されたらしいにゃ」
「おおっ!みんなさすがだねっ!大福にそんなの付いたのか」
「大福ってにゃんにゃ?」
「んっ?龍神の名前だけど」
「だいたい予想はつくけど……にゃんで大福にゃ?」
「なんかまるまるとしてるし、可愛いかなって。大福大好きだしね」
小さくなったとはいえ、龍神というドラゴンを統べる神に付ける名前ではない……だいたい自分が散々甘いものから何から大量に食べさせていたせいで、まん丸にしたくせに酷い言い草である。
「あと、ペットじゃないからね?あえて言うならばアイドル枠かな」
「にゃっ!?アイドル枠はアルじゃにゃいのかにゃ!?」
「「「えっ!?」」」
「にゃんでそこで驚くにゃ!?」
どうやらアルはアイドルのつもりだったようだ……ショタコンのBL好きの太っちょ猫のアイドルなんて願い下げである――そう、アルは龍神の大福やおっさんを笑えないほどに、現在急速にまん丸になりつつある。ここ最近ずっとほとんど狩りという運動をする事なく、以前と同じように大量に食事をしているのであるから、当たり前でもあるのだが本人は全く気付いていないようである……自分の体重の激増に気付かない点も、なんだかんだおっさんとそっくりなアルだった。
おっさんとアルに比べて、ローガスは全く出会った時と変わらないのにはわけがある。なぜなら2人を戒めとし、ダンジョンに潜らずとも必死に見えないところで筋トレなど運動しているのだ。努力家ヴァンパイアローガスである、メイドカフェにうつつを抜かしているばかりでは無い。
「ま、まぁアルがアイドルかどうかは置いておいて……」
「置いとくんじゃにゃいにゃ!アイドルにゃっ!界隈では絶大にゃ人気を誇るにゃ」
どんな界隈なのだろうか。聞きたいような、聞きたくないような……
「だいたい保も初めて会った時にゃんて、ひと目見たなりに、可愛いと抱きたいを連呼してたにゃっ、膝をついて散々にじり寄って来たくせに」
「「うわっ」」
言葉だけを聞いたら明らかに変態……いや、ナンパ野郎のクズである。崇拝気味のルルアーシュまで小さく悲鳴なようなものをあげるのも無理はない。真実は喋る猫に興奮しただけなのだが……
「大磯様、これからは私がその身の全てを癒して差し上げますので、いつでも夜伽をお申し付け下さいませ」
異種族に発情する可哀想な中年男と認識したルルアーシュ、何かを悟った表情で恭しく頭を下げている。
「いや、ちょっとその目止めて……後さ色々最近ずっと考えててさ、神様の話とかルルアーシュの言葉とかね。それで思ったんだけど、ルルアーシュだよね?最初俺にダンジョン取り付けた神様って」
「っ!!いつからお気付きに?」
「いや、ここ最近だけど。やっぱりそうなんだね?」
「申し訳ございません……」
「なんで俺だったの?」
「ランダム抽選でございます」
「本当に?」
「はい、それは誓って真実でございます」
「そっか……」
これまで宝くじに当たった事さえなかったおっさんが、まさかの大当たりだった。
「この身は全て大磯様のお好きなようにお使い下さいませ」
「いや……ルルアーシュとかあの神様もそうだけどさ、男とか女とかないよね?見た者の崇拝する者に見えるって事はさ」
「神とは、現在の肉体から進化し、高次元体……造られし者では目視不可能な存在と変わる事でございます。その為降臨する場合は、見えるようにヴェールを纏っているのです」
「えっと……俺たちが認識しているような、男とか女では無いって事?」
「はい、神と言われている存在になりますれば、その身体に男女の違いはありません」
「って事は、ルルアーシュも女性に似せた身体を見せているって事だよね?」
「いえ……わかりやすく言えば、人間種の女性に似せた人形に魂が宿っている状態ですので、夜伽も可能となっております」
当初は美しい外見の女性であるルルアーシュが、身も心も差し出すと言われて舞い上がっていたおっさんだったが……最近の色々な悲しい出来事で、おっさんは深く考えるようになっていた。
その結果、男も女もない存在が人形に入っていると聞かされ……男なら誰でも喜ぶような魅力的な誘い文句に、急速に興味を失ったおっさんである。
そもそも……おっさんはヘタレなので据え膳だろうがなんだろうが、いざその場になってみると逃げがちなのだ。ひとつ屋根の下に暮らす新木とも、未だ軽いハグ以上から進んでもいない。しかもそれは苦し紛れにした1回のみ。色々成長したおっさんではあるが、時折妄想爆発させて突っ走るくせに、やはりとんでもないチキンヘタレである。
「保様、お話というのは人類を救うという事だけでしょうか?」
「あっ、いや他にもある」
空気を読んだローガスによる軌道修正に、おっさんは思い出したように首を横に振った。
「新木さんの事なんだけどね……」
「殺されますか?」
「どこに捨てましょう」
「にゃからそれはダメにゃ」
「ちょっ、なんで殺すのさ」
「違うのですか?では何でしょうか……」
「なんでそれを正解と思ったのか……そしてなぜそんなに不満そうなのか……いや、実はね」
物騒な発言のローガスとルルアーシュに少々引き気味になりながら、首を横に大きく振って語りだした。
それはここ最近の新木の様子を見ていて思った事や、神様の発言内容を考えた事だった。
レベル上げに必死になっている彼女だが、まるで他の事柄から逃げているように見える事。考えてみれば、これまで新木自身は人間の悪意にそこまで晒されていなかった。基本的に悪意という悪意が集中していたのはおっさんにであって、新木は力や金の力で騙されている被害者といった見方が蔓延していたのもある。一般ダンジョンの初踏破の際の探索者協会の対応と、部屋前を散々に汚されていた事くらいしかないのだ。
神様の発言の中で、新木を他の人間と同じように捉えられていた事から、進化させる気はないのではないかという事。
その事を踏まえると、これからもっと人類からの激しい悪意や憎悪が向けられる可能性が高く耐えられないのではないかと思われる事、その中で自分だけ老化し死にゆくという可能性を話した。
全てを聞いたルルアーシュはすぐさま神様に連絡をとったところ、「たった1人で、しかもたった1000日での100階層のダンジョン踏破という偉業を成し遂げたおっさんならともかく、現時点では他の人間種は天使にでさえ進化する予定はない」というおっさんの推察通りの答えが返ってくる事となった。
推察はしていたが、違って欲しいとどこかで願うおっさんの想いは、真実として訪れる事となった。だが、現時点という言葉があったのも真実である。そこに微かな光明が見えたのは幸いだろう……全ては新木次第ではあるが。
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