第21話ーーおっさん魔王になる

 予約投稿忘れてましたヾ(・ω・`;)ノ

 時間ズレてしまってすみません<m(__)m>

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 1000年……それは人間にとっては、遠すぎる未来。

 1000年……それは人間にとっては、可能性を夢見てしまう時間。


 

 ダンジョンのモンスターから排出される、所謂ドロップ品にあらゆる可能性や商機を見出した国や企業、それに伴い一般人も追随する。


 <神の試練>はいつしか<神からの贈り物>と捉え始めていた。

 まるでSF作家や漫画家が考える素晴らし想像が、いつか現実になるものと夢見て滅亡という言葉から目を逸らすには十分だった。


 その<神の贈り物>を1人で踏破してしまうおっさんは悪であるとの論調が、ダンジョンを管理する余裕のある先進国を始めとした各国や、巨大な力を持ち更なるものを求める企業からの忖度を受けたメディアから行われる。

 そして<神の贈り物>といった考え方を、さも当然のように<神の意思>と曲解し始めた。

 即ち、<神の意思>に反逆するおっさんはであると叩くメディアが多数あった。それは傲慢ともいえる考えだが、そのお零れに授かろうとする者や、力を羨む者たちが声を同調する。

 当然それに反発する者はいるが、世界中の大きな流れに逆らえる事もなく、声は掻き消される。

 どこかの後進国のダンジョンからモンスターが溢れかえって、その地域に住む人々が何百人何千人と命を落としたといった話もちらほらではしたが、誰も目を向ける事さえしなかった。


 世界は最悪の方向へと加速していた。



 一方、おっさんたちが部屋付きダンジョンにひきこもり始めて1ヶ月が経った。


 日本の自宅に比べたら、もちろんかなりの不便はあるのだが、それはそれなりに楽しんで暮らしていた。古い時代の田舎暮らしといった感じだろうか……水汲みをしたり、薪割りをしたりと。

 最低限の狩りを行うくらいで、喧騒から離れてゆったりと暮らしていた。


 時折食材買い出しに行くローガスが、毎回帰って来る度に険しい表情になっている事には皆が気付いてはいたが、そこに触れる事はなかった。


 この1ヶ月で、おっさんから「地上に戻ろう」という言葉が発せられる事はない。

 北海道の出来事に合わせて、妹からの難癖ともいえる電話がトドメをさしていた。表面上はにこやかに楽しそうに暮らしていたが、心に負った傷はかなり大きかったようである。



 そして更に1ヶ月経つ頃、唐突にその緩やかな暮らしは終わりを迎える事となった。

 一行が暮らす21階層ダンジョン街の天井から、いつか見た光のモヤが降りてきたのだ。


「やぁやぁ久しぶり?こちらの世界だと久しぶりであってるよね」


 アルの実家、元料理屋の前に降り立ったモヤ。

 それを見た一行の反応は様々だ。


 跪き両手を組み合わせ頭を下げる夫妻。跪くのみのローガス、嬉しそうに見つめるアルと新木。なぜかキョロキョロとおっさんとモヤを見るウルフだ。


「うんうん、そこの異界を渡った2人の反応は却って新鮮でいいね……あとの者は、うん、まぁいいや。で、そこのケット・シーの子はこないだは寝ていた子だと思うんだけど、なんでキョロキョロしてるの?」

「保さんが二人いるにゃ……」


 ウルフにはモヤはおっさんに見えるようである。救ってくれたアルではなくおっさんに見えるのは、力を正しく理解しているせいか、それとも……最近おっさんの狩ってくるドラゴンの肉がお気に入りだからという可能性があるようなないような。


「まぁ大磯くんも半神とはいえ神だから……間違ってはいないけど、いないけど何だかなぁ」


 ちゃんとした神なのにおっさんと同一視され、何やら微妙な気持ちになるのは無理もないだろう。


「大磯くんはやっぱりモヤに見える?」

「そうですね、ただ人型のモヤにはなりましたが」

「おおっ!変わってるっ!なんで?」

「さぁ?」


 きっと中間管理職だとか、神々の人間くさい話を散々聞かされたせいだろう。

 黒い人型のモヤ……どこかの死神探偵小学生の犯人のようにおっさんには見えていた。


「まぁそんな事はいいや、その様子だと地球世界がどうなっているか知らないようだね」

「何か……滅亡でもしたのでしょうか?」

「いや、まだ滅亡はしていないよ。可能性は高まったけどね」

「それはどういう事でしょうか?」


 ローガスはどことなく嬉しそうな表情を浮かべと口にし、神へ質問を繰り返す。


「その前に……確認だけど大磯くんはルルアーシュに許可を出したとか願いを言ったとかはないよね?」

「許可?確認?なんのことでしょうか?それとこの2ヶ月ルルアーシュを見かけないのですが」


 あの日突如姿を消してから、1度もおっさんたち一行の前にその姿を見せることはなかったのだ。ローガスがリビングテーブルに残した書置きはいつの間にか消えていたが……


「だよね……うん、まぁ簡単に言うとさ〜ルルアーシュがこの世界に激怒してね、試練内容を変更しようとしているんだよね」

?」

「うん……あっ、いや……弟の気持ちがわかると言ってね」

「弟?お兄さんが前担当者だとは伺いましたが」

「あっ、そうそうお兄さんお兄さん」

「はぁ……」


 おっさんは気付いてはいないが、出来る元執事にはバレバレであった。ルルアーシュが呟き残した言葉と合わせてみればわかること……つまりルルアーシュこそが前担当者の神だったという事に。

 ――おっさんはこの中で唯一前担当者と会っている、そしてその時の認識が男性の声だった事で、現在の女性姿とリンクしないのが大きな原因である。


「でだ、ルルアーシュは君の名前で上申書を作成提出してね〜それが地球世界の試練内容の変更だったんだ。で、ちょっと……ちょっとだけ僕が席を外しているうちに、承認印を勝手に押した挙句に地球世界用デバイスを持って放送室へとこもっちゃったんだよね」

「放送室?」

「あれ?放送室ってわからない?アナウンスルームと言えばわかるかな?」


 おっさんは放送室の意味が分からなかったのでない。まるで昭和の不良が好きなレコードを持って放送室を占拠し流すようなノリについていけなかっただけである。

 それにしても、デバイスで管理される世界……やはりどこかゲームの運営っぽさを感じさせるのは気のせいだろうか。


「それでね、なんでそうするのかを探ってたら、まぁ理解出来なくもないというか……で一応地球地上世界を君に任せたわけだから、説明しにきたってわけだよ」

「はぁ……それで滅亡するのですか?」

「いや、消し去る事はデバイスからでは無理だからね、試練内容変更しか……おっ、マイクを握ったらしいから、そろそろ始まるよ、世界アナウンスが」


 神がそう促すと、突然頭の中に声が響き始めた。



 <地球世界に住む人々よ、試練を与えよう>






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