第22話――おっさん業の深さを知る

 新たな戦力としてローガスが加わった事により、3人での連携を確かめる為にも80〜83階層でトレーニングをしつつ、現在の状況を説明したり、肉を食べたり、アルのこれまでを話したり、肉を食べたりしてお互いを理解した――肉を食べてまみれていたのはもちろんアルである。


 そのローガスのステータスはというと……


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 ローガス(361)種族:ヴァンパイアバトラー

 Lv98

 体力・・・531

 筋力・・・503

 魔力・・・26530

 敏捷・・・451

 精神・・・763

 運・・・108


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 <スキル>・・・剣術(全)・短剣術(全)・闇魔法(全)・気配察知(全)・生命探知(全)・解体術(全)・罠感知(全)・罠解除(全)・召喚術・状態異常耐性(全)・縮地(全)・言語理解・看破(全)・魔力操作(全)・マナースキル・魅了・吸血・再生


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 レベルこそ低いものの、圧倒的強者だった。屋敷内で元雇い主の親子に「アル様には敵いません」とは何だったのか……どうやら彼らにうんざりしていたらしお、そしておっさんとアルの2人が最近のダンジョンに起きている異変と何らかの関わりがあると直感で感じていたので、これ幸いと乗り換える事にしたそうだ――意外と腹黒だった。


「召喚術って何が召喚出来るの?」

「基本的にはティムと変わりません、相手を屈服させた上認めさせれば契約となります。ティムと違う所と言えば、契約したモンスターは普段は別空間にいる為に毎回召喚と送還を行わなければならない事、その際対象モンスターの魔力と同魔力を必要とする事。召喚中にモンスターが魔法やスキルを使う際に使用する際の魔力は召喚者負担となる事。対象はモンスターに限られる事でしょうか」


 召喚術に強い興味と憧れを抱いたおっさんだったが、ローガスの説明に撃沈してしまった。彼のように有り余る魔力がないと無理な術であった。


「ロ、ローガスはどんなのと契約しているの?」

「炎龍・氷龍・風龍・水龍のみで御座います。ただ召喚出来るのは恥ずかしながら毎回1頭で限界でございますが……」

「そ、そうなんだ……」

「にゃ……」


 おっさんとアルは思った、「あれ?こいつだけでダンジョン制覇どころか世界征服出来るんじゃね?」と……

 ただ2人とも立場というものがある、おっさんは勇者で救世主でリーダーだし、アルはテイム仲間の先輩としての……よって2人は黙り込んだのだった。





 狭い部屋に大人2人と子供サイズのケットシー……部屋がかなり狭くなってしまった。就寝はダンジョン入口付近も利用するのでそこまで狭さは感じないのだが、食事風呂等を過ごす時には窮屈なのだ。では、どうせダンジョンはおっさんに付いてくるんだから部屋替えればいいじゃんって思うわけであるし、実際おっさんもいくつかの部屋を見には行ったのだが、本当にダンジョンは出来るのか?出来るとしたら部屋のどこに出来るのか?が不安になってしまって踏ん切りが付かないでいた。


「ご心配でしたら、2部屋同時にお借りになったらいかがでしょうか?」

「同時に2部屋?」

「ええ、保様のどういった認識でご自分の部屋となるのかわかりませんので、まずは新しい部屋で何日か生活をしてみて試したら如何でしょうか」

「お金がなぁ……」

「そうにゃ、保は貧乏人にゃから無理にゃ」

「ふむ……もし宜しければこれを足しにして頂ければ」


 ローガスが軽く頷き道具袋から取り出しのは、色とりどりの拳大の宝石だった。


「うおっ!……凄い……」

「綺麗にゃ……」

「若かりし日にダンジョンに潜った際に拾った物で御座います」

「セ……セレブもビックリ宝石……」

「どうぞご査収下さいませ」

「あ、ありがとう……」


 本当は市場に出せないような巨大宝石など貰わずとも、おっさんのアイテムボックスには多大なる金額が眠っているのだが、アルには内緒にしているために有難く頂くこととなった――それを持つ手はかなり震えている、きっと換金する事は無いだろう、渡す相手もいないだろうが……


 とはいえ、貰ってしまったので部屋を借りる事にしたおっさん。自分だけで住むわけではないので、同居人2人にも意見を聞く訳だが……アルは頑なに一人部屋がある3DK以上を望み、ローガスは2人に任せるとの事だった。3DKとなるとそれなりの家賃など色々お高いと反論したおっさんではあったが、「その宝石売れば余裕にゃ、だいたい〜」と下手に日本の金銭価値等を食費を削る為に教えこんだが為に論破されてしまった――もはや自業自得が芸となりつつあるおっさんである。


 1ヶ月後契約も無事終わりに引越しする事となった3人。荷物は全てアイテムボックスに突っ込んむだけで済む。問題は人の移動である。おっさんはもちろん大丈夫である、ローガスも頑なに脱ごうとしない執事服は兎も角としていいだろう、陽の光は苦手なくらいで死ぬ事はないらしいし……後はアルをどうするかである。外を歩いていくという本人の意見は却下し、色々話し合った結果ボストンバッグに詰め込んで……と話がまとまりそうな時だった。


「保様のアイテムボックスには私達は入れることは無理なのですか?」


 ローガスの質問におっさんは首を傾げた。確かにスキルを得た当初は考えた事もあったのだが、実験の仕様がなく、その内に忘れてしまっていたのだ。


「試しようがなくてね」

「ふむ、箱に入れたスライムで試してみたらいかがでしょうか?」

「おぉ……」


 早速進言に従って試してみたところ、生きたスライムは30分後も生きたまま出てきたのだ。その結果、ローガス自らが入って中を知りたいと言うので実験した結果、入った事を認識出来ずにいたらしい。こうして移動方法の手段は解決した――中にある食材を食われてしまうのでは?お金見つかるんじゃない?という心配もあったがそれも解消され、おっさんはほっとしていた。


 そんなこんなで新居へと移った3人。出した荷物を、ローガスが「私の仕事です」と張り切って満面の笑みを称えながらテキパキと行っている中、おっさんが「あぁー今日からここが家か〜」と呟いた瞬間だった、今開けたばかりの押し入れに黒い渦が現れたと思ったら、見慣れたダンジョンの入口へと変わっていた。

 おっさんが我が家と認識するだけでよかったらしい。


 元々大した荷物もなかったのだが、ちょっとぼーっとしている間に、荷物は綺麗に片付いていた――どこで学んだのか電化製品の設置だけではなく、LANケーブルをHUBに繋いだりの設置設定まで全て終わっていた……執事恐るべし。


 部屋が広くなると何故か空いたスペースが寂しく感じてしまうものである。そこでついつい色んなものを買っては部屋を埋めつつ、自分だけというのは罪悪感があった為に2人にも様々な物を買った、PCやタブレット等も含めて。


 そんなある日の事だった、風呂を知らせにアルの部屋へと向かった際、いつもは鍵が必ず掛かっているのだが薄らと開いている扉を開けたところヘッドホン着けて動画サイトでまたを見ている後ろ姿がそこにあった。

 声を掛けようと近寄ったおっさんだったが、何故か無言で出てきたと思ったら、そのまま頭を振りながら部屋へと戻って行った。その姿に疑問を感じたローガス、アルの部屋へと入り、彼もまたしばらくすると無言で出てきた。


「いいにゃいいにゃ……チッ!メス猫なんかいらにゃいにゃ……可愛いにゃ可愛いにゃ……お姉さんが大人にしたいにゃ……ぐふっひゅひゅひゅ……」


 アルさんショタコンだった……





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