42 ネメシスと神、統治者としての絶対的無力

 過去は常に善悪の全てを持って、我々に必ず復讐を遂行する。因果は巡り、過去と未来の合わせ鏡の間、今という永遠の狭間の内に、光線は屈折する。二つの鏡には異なる鏡像が、同様の要素を元に写し出されている。…

 理不尽や不条理は全て己が範疇の出来事である。しかし、それに抗う術はない。世界に神があらずんば、世界の神は己自身である。されど、その神はただ無力である。

 自らの外に絶対の信仰を持たぬ限り、我々は我々の世界を個別に生きているに過ぎない。世界は一つなどではない。一人が死んだとき、世界は一つ死ぬ。ただそれだけである。

 世界を自意識に内包せよ。さすれば智慧と理性によって、我々は世界すら統治できよう。そこに偶然はなく、全ては必然であり、即ち過去という復讐の神の見えざる手によって永遠の侵略を受け続ける寂寞とした世界である。そこで我々は統治者でありながら、絶対的に無力である。我が世界は見えざる手によって犯され、それを防ぐ術もなく、統治者の目を隠す眼帯はない。…

 

 ならば、受け入れようではないか。


 さあ、存分に復讐を味わえ。

 智慧と理性の純銀に輝くカトラリーを両手に。

 あらゆる艱難辛苦その全てを味わい尽くせ。

 さすれば全て、美食たらん。

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