13 地獄の歩き方
とある人が、私の文体はカミュに似ていると言った。私はカミュを読んだことがなかった。近所の本屋で、私は『シーシュポスの神話』を手に取った。
なるほど、確かにどこか私のそれとカミュのそれは似た芳香を放っていた。
しかし、私はカミュほど鋭利な智慧も、徹頭徹尾ある種の冷徹なまでの視線も持ち合わせていなかった。だが、カミュは私に、そのあまりにも怜悧で鋭敏で読む者に畏敬すら抱かせるほどの強固な頭脳で、地獄を地獄のまま歩く術を厳格に示してくれた。
すなわち、この世の不条理の絶望の先にある、希望でもないただ徹底的な智慧を武器とした反抗による生存を。
私はこうして芥川やキルケゴールの絶望の行先に、カミュを見出しつつある。
ペンを頼りない杖として、やがて机に崩れ落ちた芥川を思えば、それは幸運に他ならないと言えるだろう。
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