トーストとコーヒー

記憶

私は2歳から6歳までの間、祖父母の家に預けられていた。ネグレクトされていたわけじゃない。両親の仕事が忙しいからだ。地域の親子で参加するイベントもみんなママなのにのにいつも私だけ違う。そういうことが寂しくて寂しくてたまらなかった。祖母が嫌いなわけじゃない。むしろ大好きだし感謝してるし尊敬しているけれど。でも、母に会えない寂しさを隠せるほど大人ではなくて、私は駄々をこねたり、沢山泣いたりして祖母を困らせた。子供の母という存在の大きさや、母からの愛でしか埋まることの無いどうしようも無い寂しさを分かって、受け止めてくれていたんだと今は分かる。


祖母は私の母親がわりを立派にしてくれた。幼稚園のお弁当を毎日作ってくれた。キャラクターの可愛いお弁当がいいとぐずれば、海苔でおにぎりをかぶりのように包み三角形の目が付けられた可愛さとはかけ離れたものがお弁当に入っていて、5歳の私はそれが祖母からのいっぱいの愛を感じて嬉しくて愛おしくて泣いてしまったことを今でも覚えている。


祖父母の家は田舎にあるので自然が豊かで池に大きな蓮が沢山生えている。雨が降れば祖母に蓮の葉を取ってもらいそれを傘にして遊んだ。朝起きれば美味しい朝ごはんがあって祖父は新聞を読んでいて。その風景や匂いが優しく蘇った。美しい記憶。私だけの記憶。大切な記憶。私のもとを創った記憶。忘れていたわけじゃないけどふと夢に出てくることがある。懐かしくて愛おしくて、私は泣いた。


今日もその夢を見た。私が起きても新聞を読む祖父も朝ごはんを作る祖母もいない。一人で朝ごはんを食べ化粧をして満員電車に揺られ仕事に行く。今日は仕事の帰りに花を買って、優しい思い出をくれた2人に会いに行こうと思った。



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トーストとコーヒー @Hazuki_0818

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