青春ハート
今どき反省文なんて時代遅れも甚だしいと思うが、書かないと停学、などと脅されてしまっては仕方がない。放課後の空き教室でシャーペンを弄びながら、私は二つ斜め後ろの席に話しかける。
「――……ったりぃよねー……」
「……あんたのせいだろ」
「いーや、詩歩が悪い」
「……どっちでもいーけど、やらないと帰れないんじゃないの?」
そう言いながら詩歩は、自分だけさっさとシャーペンを動かしている。
「う……まぁそうだけど」
しかし、文を書くのは私にとって四則混交の計算をすることの次に苦痛だ。たとえば10分後の私が、何かとんでもないことを閃いてこの原稿用紙の埋めてしまうとしたら? 何も今頑張る必要はないんじゃないか? そんな風に考えてしまう。
ということを詩歩に話すと、また極限まで馬鹿にされそうなのでやめにする。
そもそも反省文を書かされるほどの大喧嘩に至った原因は、詩歩が私の小テストの点数を嘲笑ってきたからだ。30点満点の18点の何が悪いというのか。まぁ、平均点が26点だったということを考えれば、悪い点数なのは一目瞭然。私の点だと、クラスでも下から数えたほうが早いだろう。問題なのは
……思い出したらちょっとムカついてきた。頬の引っ掻かれ傷も痛むし……いや、煽られてキレた私にも責任の一端はあるが、だからといって人格否定一歩手前の罵倒を浴びせかけることもないだろう。もちろん乗った私が悪いのだが……。
「……何?」
「調子がよろしいようで」
「ま、どっかの馬鹿と違って、M殻とN殻を間違えて覚えてたりはしないからね」
「……は?」
さっきの小テストのミスをまだあげつらってくる気か?
「そこ蒸し返すの? 今こうなってる原因がそれなのに?」
「いやいや。サービス問題でしょあんなの、暗記するだけなんだから」
「……っらあ!」
「……痛ァ!?」
「4点分の痛みだよ」
「てめっ……さっきと同じセリフ構えてんじゃないよこの鳥頭!」
言いながら立ち上がった詩歩もまた、ファイトスタイルに移行する。
「どーしたの、来なよ。何? ビビってる?」
「お前……」
これだけ大きな音を立てれば
私たちは「青春」を生きているのである。
「らぁーーっ!!!」
詩歩の拳が臓腑に抉りこむ。痛みに負けじと私も脚を上げた。
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