トレジャーハント Ⅻ
そして、理由がなんであれ、一度は別れた二人が、再び接触した。その結果、今の私は拘束されている。
状況が読めなかった。横領事件も、金一封のことも、
「――さて」
私は人のいないオフィスまで台車で運ばれてきた。拘束を解いてもらえそうな気配はない。
状況はわからないが、とりあえず整理する。宮藤さんと加賀見がグルだったとして……否、おそらくグルはほぼ確定。わからないのは何故そうしたかであって……二人して横領していたのなら、わざわざ私を巻き込む理由もわからない。第三者を介入させて自分たちに有利な証言でもしてもらおうというのか? それならそれで、こんな手段に出る必要はない。ほとぼりが冷めるまでこうしていろということか? あるいは……知りすぎたということで、消される? いろいろな思考が脳内を巡る。そしてそのどれもが、根本的な決め手に欠けるような気がして。
「……癪だけど、あいつを呼び出すしかないか」
加賀見は携帯電話を取り出すと、おそらくは宮藤さんに電話をかけ始めた。そうだ、彼女は加賀見と共謀して私を拘束した筈だ。なのに、何故かこの場から逃げ出している。
何回か呼び出し音が鳴った後、電話は繋がったらしい。
「……もしもし? 宮藤? ああ……私。あんた今どこにいんの」
加賀見は苛立ちを隠そうともせず、語気を強めて言った。
「あんたが言い始めたことでしょうが。ケツは自分で……はぁ?」
私を騙すための演技…というセンも考えたが、話している加賀見の様子からしてそれはなさそうだ。
「何それ。いや……違うでしょ!? 話が違う。ええ……だからそれは!」
加賀見は頭を掻きむしった。歯を剥いて、罵倒の言葉を迸らせる。
「お前っ……だからって今更逃げていいわけがあるか! くそっ!!」
加賀見はゴミ箱を蹴った。中身が散乱し、舞い上がる。
「じゃあ私の一連のあれはどうなるんだよ!? このお荷物も……お前がなんとかしろよ、お前の部下だろ!?」
怒鳴り散らす加賀見を尻目に、私は宮藤さんがこれ以上、加賀見を怒らせないことを祈った。本当に人でも殺しかねない勢いだったからだ。
「……何分でこっち着くんだ? 30分!? 人でも来たらどうする!?」
宮藤さんを呼び戻そうとしているらしいが、うまくいってない様子だ。私がここから抜け出せる算段はないに等しい……しかし加賀見の監視さえ離れれば、少しくらいは勝算があるかもしれない。
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