快眠業者 ⅩⅩⅩⅢ
「きっと?」
「……革命が起こせます。国全体が変わってしまう……GDPや、GNPや、その他ありとあらゆる事物に……不可逆の変化を、世の中にもたらすことになります」
「そう、でしょうね」
「意外と驚かれていないご様子ですね」
「まぁ、そのくらいのことは……すぐにとはいかなくても、いずれ可能になるだろうと思っていたので」
「――では改めて、私の能力の詳細についてをお話ししますね」
「基本的に、一回の……面倒なので催眠、という風に呼称しますが、厳密には異なる、という点に留意しておいてください。その一回あたりの催眠で私が操ることができるのは、基本的に一人です。様々な条件が絡みますが、場所や日時が分かっているならそしてその対象が私自身の傍にいればいるほど、その効果は強くなる。それと、同時に二人に催眠をかけるのは不可能だと考えておいてください。原理的に不可能ではない筈ですが、試してみてもできなかったので」
「あれ、でも、東京のマンションでは全員を……」
「時間差です。同時に、といっても瞬間的な話で、所要時間自体は数秒程度……その気になれば数分で数十人を眠らせることもできます。疲れるうえに集中力も保つとは思えないのでやりませんが」
「……同時に眠らせるのが無理ってだけで、1対多数も非現実的ではないってことですか」
「はい」
「じゃあ実質的に多数相手のデメリットないじゃないですか紛らわしい!」
「もうひとつ……磯村さんのときにお話ししたと思いますが、実のところ当の本人の姿形より、本人が記した文章、描いた絵、撮影した写真、ないしは映像など……つまり、当人そのものより、当人の意志が宿ったものの方が、私の力は介入しやすい、ということです」
話す間、快眠請負人は手元の紙に始終、ペンを走らせていた。達筆すぎて加奈には要領を得なかったが、図形のようなものも描き込まれていたあたりからすると、本人的には図解のつもりなのだろうか?
面白いので黙っておく。
「これには、対象となる人物の意志と意識が介在していることが重要となります。意志の強さというより、どういう行動を取ったか、脳がいかにして働いたか……無意識や、反射的な行動でもいい。兎に角、そこに私の思考を重ねていくことが重要です」
快眠請負人はそこで言葉を切った。で、目が合う。
「……聞いてました?」
「……一応」
「……」
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