恥辱の幕

「……」

「……」

「……感想は」

「……怒らない?」

「場合によっては怒るかも」

「……『怒らないから言ってみ?』ってやつよりマシか……」

 こちらからお願いしたこととはいえ、いざ恋人にたくし上げをさせてみると、なんというか……思った以上に思うところがある。良い意味で、だが。

 普段から長めのスカートを好んで穿く女性ひとだとは思っていた。あまり肌を露出したくないのかな? とは思っていたし、実際そうだった。

 なればこそ、に興味が湧くのは人として自然な流れだと思うのだが。自分の好きな人であればなおさらのこと。



「……スカートをたくし上げて中を見せてほしい?」

 そう言ったら引かれた。汚物を見るような目で見下ろされた。

「いや信じられない。変態? 違うな、異常者か。漫画の読み過ぎで頭おかしくなった?」

 世が世なら訴えても勝てるくらいの手ひどい暴言がひっきりなしに飛んでくる。ただ、先に仕掛けたのは私なので弁解の余地はないだろう。

「……だって」

 いや、本当のことを言うと、私も何故、そんなことを口走ったのかわからない。隠されたものを見たいという人間の心理だろうか。それを許し付きで見たい、という欲求の発露。

菜未なみ、脚細くてキレーだもん。あんま見せてくんないけど」

 ぼそりと漏らす。怒られるかと思ったが、返ってきたのは沈黙だった。

 おそるおそる顔を上げると、耳まで朱に染めた菜未が顔を背けていた。

「……どうせ散々見まくるくせに」

「なッ」

 事実は事実なのだが、そうあけすけに指摘されるとこっちまで赤面してしまう。

 ややぎこちない空気になったのち、菜未は消え入るような声でいいよ、と言った。言ってくれた。



 そして冒頭に至る。

「感想は、と訊いている」

 吹っ切れたのか、菜未は随分と高圧的な態度である。悪くはない。

「……その、えっちぃ……です、はぼっ!?」

 そう宣言した瞬間、無防備な顔面に膝蹴りを入れられた。

「……なんで!?」

「直球過ぎるでしょうが! もうちょっとオブラートに包もうよ!」

「そんな……じゃあ官能小説みたいな語彙力で表現しろっての!?」

「それはそれで恥ずかしいからヤだ」

「勝手な……」

 顔面の痛みに耐えながら、改めて菜未のタイツ越しの脚を凝視する。デニールが厚い分、下着のラインはうっすらとしか出ていないが、それがまた良かった。有り体に言うと、そそる。

「はい、終わり」

「ああん」

 緞帳が下ろされる。

「ねぇねぇ、もっかいくらいさ」

「駄目なモンは駄目よ」

「けち!」



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