多目的文化ホール
市の財政が尽きかけて、民間に管理を委託したという公民館、
おかげで人の目を寄せ付けることがない。これは私たちにとって都合が良いことだった。
携帯で連絡を取り、
「よ…っと」
二枚扉になった正面玄関のガラスドアから、建物内部に足を踏み入れる。片方のちょうつがいが壊れてしまっているのだ。
「大丈夫?」
「まぁ、なんとか」
中はリノリウム張りで、廊下が円形に伸びている。採光に気を遣ったのか、天井付近にはいくつもの窓が
この奥に用があるのだ。地元の悪ガキとか半グレが出入りすることもあるらしいので注意が必要だ。
「シート持ってきた?」
「うん」
電気は通っていないが、一方で不思議なことに水道は生きていた。といっても簡単な理由で、ここの水道は井戸水をポンプで汲み上げているのである。もちろんそのポンプを管理する人間が必要だが、ここを根城にする連中の誰かしらがやっているので大丈夫だ。というより、放置された年数から考えてもかなり新しい、ポンプの操作マニュアルが備え付けられている。そういうことなのだろう。法律的には危ないかもしれない。
適当に日当たりの良いところにレジャー・シートを敷いて、二人で寝転がる。持ち寄ったお菓子なんかを食べて、しばし談笑する。デートといえば聞こえは良い。結局は田舎ゆえに、エンターテインメントやアミューズに乏しいというだけだ。
そんな田舎で、やれることは高が知れている。私たちがやることは……。
沙弓が服を脱いでいくのを、少し離れた段差に座りながら眺める。もしかしたら人が来るかも。ひょっとしたら地震が起きるかも…そんな不謹慎で、結構ギリギリのスリルがたまらない。何より、沙弓の身体は筋肉質としなやかが同居していて、そそる。
「
アンダーウェアだけになった沙弓がこちらを向いて笑った。心なしか頬が赤くなっている。気温のせいでないとすれば。
私も上着を脱いだ。こんな……スポーツの延長線上みたいな睦事があっていいのかという気分になりつつ、それでも興奮が抑えきれない。
1週間ぶりで激しくなるかも、と伝えると、沙弓は私の耳たぶを甘噛みして、いいよ、と答えた。
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