スーベニア
「
それが名前? わたしは訊き返す。ジュリアはこくんと頷いた。
「ハロルドさんがそう呼んでた。見た目は背の高い金髪の女の人だったよ。先にお店を出たみたい」
そう言ってジュリアは、わたしが買ったシェイクを啜った。
「スーベニア、か……」
ともかく、万が一にも犯人と遭遇したときに警戒されないよう、ジュリアを入店させた。ジュリアの顔はハロルドも知っているからだ。
「……スーベニア」
口の中で繰り返す。
「もし名前通りなら――」
通りの向こう、ハロルドの雑貨屋を見やる。変わったところはない。わたしの横でジュリアはシェイクを飲み干す。
「爆弾。それか地雷」
そして、私の後を引き継いだ。その言葉に、ゴクリと生唾を飲み込む。
「……だよね、やっぱり……」
「行くよジュリア。うまくいったらあとでアイス買ったげる」
「やったっ」
相棒は小さなガッツポーズを作った。
「……私一人ではどうすることもできなかった。本当に助かった」
「いいから! あの女は他に何を話してた⁉」
ハロルドを押し込んだレンタカーをかっ飛ばしながら、声を張り上げて質問する。後方から「スーベニア」が追ってくる。ジュリアが100連マガジンのマシンガンで応戦しているが、その追跡はなお執拗だ。ハロルドの店の2階はあの後すぐに爆発した。
「身を隠せる場所と――」
「伏せて!」
ジュリアが叫ぶ。グレネードがボディの横を掠った。前方に停まっていたトラックに着弾。すんでのところで路地に飛び込む。
「キャシー、『武器屋』まで飛ばして!」
「言われなくても!」
「『武器屋』⁉ 戦争でもするつもりか⁉」
「そんなの、とっくに始まってるのよ!」
わたしはクラクションをかき鳴らしながら、車列の隙間に突っ込んでいった。
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