ある朝
朝起きたら、裸でモーテルのベッドに寝ていた。
いや、裸というには語弊があるか。パンツは履いてるから全裸ではない。ただし、このまま外に出れば間違いなくお縄だ。
昨夜は呑みすぎて記憶がない。私としたことが。高校の同級生だけで女子会をした。各々が別々の道を歩み始めてはや数年。お酒をひとたび入れると会話は弾んで止まらなかった。
「えー……ってか、頭
ズキズキと痛む頭を文字通り抱えながら、ふと隣に誰かが寝ていることに気づく。
(あっ――これはあかんやつでは)
生来、裸で寝るような性格はしていないことは自分で知っているし、できれば目を背けたい事実なのだが……まずいものはまずい。
「うぅん……」
隣の人物が呻く。くぐもってはいるが女の声だった。ロボットのようにぎこちない動きで、首をそちらに向ける。
彼女もまた、裸だった。いや、下半身は何か履いているかもしれないが、少なくとも上には何も着けていない。白い肩が見えた。
髪は黒でショートでくせ毛……必死に記憶の糸を手繰り寄せる。同級生とは久々に会った。髪色や髪型が大きく変わっていたが、会って話せばあの頃の記憶は蘇った。彼女の名は、すぐに出てきた。
「あのー…………」
どきどきしながら、彼女の名前を呼んでみる。
「んぅ……」
まだ寝惚けている彼女の頭がこちらを向いた。薄く開いた目と視線が合う。たちまち、その瞼がぱっちりと見開かれた。
「………な」
「お…おはようございまーす……」
「なんで⁉」
「ビビるわ……さすがに」
並んで洗面所で歯を磨く。彼女はぼさぼさの頭を掻きながらぼやいた。
「ははは……お互いにね。起きたらいきなりパンイチだもん」
「まだいいでしょ、こちとら全裸だったっつーの。ったく……」
彼女は歯を磨く手を一旦止めて、ごく小さな声でどうしてこうなったんだか、と言った。
その言葉に、耳がかっと熱を持つのを感じる。
「どうしてったって……そりゃあ……」
返答に逡巡している間に、彼女はさっさと口を
「……どこまでしたんだと思う」
「キスくらいは……したんじゃないかな。だって……嫌じゃ、ないから」
「あのねぇ……」
お互いの羞恥を増大させてどうするのか。これでは外にも出られやしない。
「……もっかい、しとく? キスだけ」
「……なんでよぉ」
否定したのは言葉でだけだった。
少し背の高い彼女の唇は、とてもやわらかく吸い付いてきた。
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