新章 第1章 友人
「でさ、デートはどうだったのさ」
昼休み、日曜日デートをしたことを知っていた松野が急に坂野の席まできて問う。
今日は月曜日。進学校に通っている坂野や松野にしたら地獄の始まりである。一日7時間授業が週に5日間。土曜日も午前中だけだが授業がある。唯一日曜日が週の疲れを癒す日なのだが、坂野はその日曜日をデートに使ったため、疲れはピークにきていた。そのため朝のスクールバスでは坂野は寝てしまっていたので、松野はずっとデートについて聞きたかったが聞けずにいた。坂野は昨日のことを思い出してついついニヤけてしまう。
「んふふ( ̄▽ ̄)」
「えっ何きもっ!!!」
坂野は、失礼な。と思いながらどうしても顔はニヤけてしまう。途中で寝てしまったり、晩御飯に行けなかったりしたが、デートは結果的に大成功と言ってもいいだろう。終始笑顔で溢れていた、ような気がしていた。
「まあ成功したみたいでよかったよ……」
「むふふ( ̄▽ ̄)」
松野はドン引きしてるが、坂野は気づいていない。これはもう話しかけてもダメだと思った松野は席をそっと離れた。
その日の帰りのスクールバス。坂野も松野も週1~2回しか活動していない同好会には所属しているが、ほぼ毎日練習している部活には所属していないため、帰りは早めのバスで同じになることが多い。
「裕太は将来なにしたいの?」
「それ最近も聞かれた気がするな…まあ大学は稜斗と同じとこで、仕事は決まってないから選択肢が絞られない商学部とか経済学部にする予定」
「文学部はやめてよ」
再三言っているが、坂野の通っている高校は進学校の中高一貫校である。中学三年から高校一年に上がる際、文系理系の選択をしなければならない。理科数学が壊滅的にできない坂野も、国語が得意な松野も文系である。この学校には大学から推薦が多く来ている。東京の有名私立大学からも来ていて、坂野も松野も同じ大学の推薦を狙っているが、狙っている学部は違うので争うことはない。
「稜斗は文学部行って雑誌の編集になりたいんだっけか」
「違うよ、月刊オカルトの編集者!」
松野は根っからのオカルト好きである。現在はオカルト同好会に所属していて、未確認生物、妖怪、都市伝説、ホラーゲームの情報などにも詳しい。入学当初は坂野も松野の話を面白く聞いていたが、今となっては松野が必死に話すオカルト話の9割は聞き流している。ここで坂野は気づいた。
「お前、新しいオカルト話をしたくてこの話題振ったんじゃないだろうな…」
「えへへ…気づいた?」
坂野は後悔した。こうなると話は長い。松野は坂野に話を聞いてもらうため、あえて別の話題を振りに使ってオカルト話をするようになった。そしてその振りに気づかなかった場合は坂野は話をしっかり聞かなければならないという、2人の中で謎のルールができていた。
「わかったよ。今日は聞くよ」
「やったね!」
松野は本当に嬉しそうに話し始めた。
「裕太はさ、死人と生人って知ってる?」
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