第6章 幸せそして異変
40分程度の合唱部の発表会が終わり、会場を出てどうしようかと坂野が思っていたところ春奈からもう少しで会場から出るから外で待ってて、といった旨の連絡があった。しばらく待っていると、春奈は制服のスカートをひらひら揺らしながら坂野のもとへ走ってきた。
「どうだった?」
「よかったよ!!なんかこう……ぐわーーっと! して特に春奈のソロパートはなんか迫力がすごくて……その輝いてた…っていうか!とにかく感動した!」
坂野が興奮しながら拙い言葉で感想を伝えたところ、春奈は少し赤面したが興奮した坂野は気づかない。
合唱部は5曲歌ったが、そのうち数回春奈のソロパートがあった。他にもソロパートの担当者がいたが、そのうちの誰よりも春奈が輝いていたように坂野の目には映っていた。
これ以上褒められるのも恥ずかしいと思ったのか春奈は話をそらす。
「じ、じゃあこれからどこ行こっか?ご飯食べにいく??」
ゲームセンターへ行き、発表会もあったので、朝はやくに集まったはずだが、もうそろそろ夕飯を食べてもおかしくないくらいの時間になっていた。
「いや、今日は家でお母さんが夜ご飯作ってるからな、そろそろ帰らないと」
坂野家は母子家庭である。平日は母である坂野風子は夜遅くまで働いているので、外食かコンビニで弁当を買うことが多かったが、その代わりに仕事が休みの日曜日は母の豪華な手料理を食べることが多い。坂野にとって、母が作ってくれる料理を食べられる日曜日は楽しみでもあった。
「そ、そうだね!今日はもう帰ろっか」
2人は再び地下鉄に乗り、最寄り駅まで帰ってきた。2人の家は1駅離れているが、坂野は春奈の家の最寄り駅で降りて送っていき、今日のデートは終了した。
別れ際春奈は坂野にまるで確認するように尋ねた。
「今日楽しかったよね?」
「ん?うん楽しかったよ」
「良かった…」
まるで安心したかのような顔をしてうつむいた。
「それじゃあね」
「おう」
来週にもまた会える、そう思っていた。
しかしそうはならなかった。
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