6.白銀の騎士ハーメル
「コイツらはオレが引き受ける!サクトはその兄ちゃんを守れ!」
ダレットはそう指示を飛ばしながら、既に篭手からガトリングガンのように魔弾を放っていた。
グランドウルフに追われて逃げてきた男のすぐ背後で魔弾が炸裂。すかさずダレットは男とグランドウルフの間に割って入り盾となる。
「悪ぃ、サクト!
そっちに1匹抜ける!!
が、数が多くて助けれそうにねぇわ!!
そっちでなんとかしてくれ!」
「っ!なんとかって!無茶言うなよ!」
文句を言いながらもフランベルジェを振り抜いてグランドウルフを迎え撃つ。
速い。
ズン、と身体が軋む。
フランベルジェで受け止めたグランドウルフの爪の衝撃はオレの身体を突き抜け地面を踏み砕いた。回し蹴り。攻撃で一瞬の隙が出来たグランドウルフへアマルギアの援護が刺さる。脚にナイフを生成させての一撃を叩き込まれたグランドウルフであったが、空中で受身を取り、難なく着地する。
「僭越ながらおれも戦います!
来い!
いや、元はお前が連れてきたモンスターだろ。
可愛くもないヤロウのために身体を張る気などサラサラないからな、泣きべそ厨二ヤロウ。
オレは厨二くんが構えた武器をチラリとみる。
白銀の槍の先に斧のようなものが取り付けられたハルバード、何よりも目を引くのは巨大な旗だ。
なんだそれ、カッコイイな。
厨二くんは隣でグルりとその武器、なんとかフラグバードを振り回して円を描く。
大きく旗が追随するように舞い、空中に青い装飾が尾を引く。
いや、実際に青白い軌跡が残る。魔法陣!
「吹き荒べ!!『アイスレイン』!!」
氷の弾丸による強襲、一つ一つの威力こそないがグランドウルフの足がとまる。
「失礼します、マスター。
マスターはそのまま仕掛けて下さい。
『流体操作』。」
アマルギアはオレの手をとるとドプンとスライム形態に戻り手を覆う。
フランベルジェが、何かに手でも引かれたように、軽くなる。
その流れに身を任せる。
身体を一回転させ、そのままフランベルジェを振り抜く。
「『ストリームスラッシュ』!!」
重い手応えがズシリとくる。
「覚悟。」
フランベルジェを振り抜いたオレの手からアマルギアが離脱し、槍を発生させて空中からの追撃。
見事な連携で結構ダメージを与えたと思うのだが、1歩下がったグランドウルフは意にも介さぬようにその爪を振り下ろす。
寸でのところで躱した風の狂爪は、オレの背後の木を引き裂き、薙ぎ倒す。
その様子を横目にグランドウルフは休みなく攻撃を仕掛けてくる。
今度はターゲットをオレから厨二くんに狙い変えると、一気に間合いをつめ、再びその爪を振り下ろす。
「くっ、『カウンターフリーズ』!!」
旗に描かれた魔法陣が起動し、グランドウルフへカウンターの凍結魔法が発動する。が、そのダメージも気にせずグランドウルフはもう片方の脚を振り下ろしその一撃を叩き込む。
「ぐあっ!」
一撃でダウンをとられた厨二くんに追い打ちをかけるようにグランドウルフは疾駆する。
オレはフランベルジェを妨害するように振り抜き厨二くんを庇う。
グランドウルフの進行方向へと滑り込むと正面から睨みつけてやる。
「拙が足止めします。
マスターは水魔法での牽制をお願いします。」
まあ確かに、こちらの戦力的に真っ向からコイツと張り合えそうなのはアマルギアだけか?
でもさ、見た目だけとは言え女の子を矢面に立たせるって男としてどーなのよ?
…。
あとでアマルギアにゴリゴリマッチョの人形食わせるか。
やっぱ、嘘。
そんなアマルギア見たくない。
オレは下らない考えを振り払って右手をグランドウルフに構える。
「ウォーターボール!!」
パっと手のひらが輝きバスケットボール程の水の塊が勢いよく飛び出す。続け様に2発、3発と襲いかかる水の玉をグランドウルフは難無く後ろに飛び退って避ける。
が、いつまでも回避に徹する筈もなく反撃にでる。
というより喰らったところで殆どダメージがないことに気付いたのだろう。
一瞬のフェイント、水の弾幕に潜り込んだグランドウルフは牙を剥いて接近してくる。
「
アマルギアがスキルの発動を宣言すると、足元から唸るようにして波が馳ける。そして炸裂。グランドウルフの足元から弾けるように水が吹き出す。
が、それはグランドウルフを少し押し戻したにすぎない。
「ご容赦をマスター。
拙の力不足で致命打になるような火力は不可能でした。」
「なあ、それ、おれが君の攻撃を凍らせたらもっと強くなるか?」
「…。
氷の強度にもよりますがやってみる価値はあるかと。」
そっけなく返すアマルギアに厨二くんは頷く。
そして大きく旗を振い、水平に身体の周りをグルリと囲うように魔法陣を展開する。
「『アイシクルフィールド』!」
キン、と周囲の温度が下がる。
アマルギアが操る青白い輝きを纏った流体波はグランドウルフを捉えると氷の結晶となって噴き出す。
脇腹の辺りを貫かれるようにしてグランドウルフが大きく怯む。
しっかり効いているようだ。
追い討ちをかけるように噴き上がる氷がグランドウルフを襲いかかる。
そして氷はグランドウルフを捕らえるとそのまま氷漬けにする。
やったかっ?!(フラグ)
刹那、氷が弾け散る。そして咆哮。暴風を吹き荒らしながらグランドウルフが姿を現し、牙を向く。
即座にアマルギアが進路を阻むように氷壁を出現させるが、たったの一振りで薄氷を粉砕する。
まあ、分かってたことだし、アマルギアも分かってやったことだろうけどな。
アマルギアの今の能力じゃ、目くらまし程度の氷しか出せない。
これくらいならオレのパンチでだって叩き割れる。
そんなことを隠れ蓑に紛れて頭上をとったグランドウルフを見下ろしながら、オレは考える。
トドメ。
手に剣を握りしめたまま水魔法を込める。
「『ストリームスラッシュ』!!」
…。
フッ。
思っちゃったよね、今回は決まったって。
本日二度目のフラグ。
ヤバいヤバいヤバいヤバい…!
その圧倒的なタフネスさでオレの渾身の一撃を耐えたグランドウルフはオレに離脱する隙すら与えない。
暴風を纏った脚を振りかぶる。
ズン…!
衝撃。大気を揺るがすような一撃で吹き飛ぶ。
グランドウルフが。
「最後の最後で油断したな、サクト。」
グランドウルフを片手で殴りとばしたダレットが痛快に笑った。
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