SCP-1286-JP『そして笑った』って、結局何なの?
☆【第4の壁】としての注意
この話をスマホで読まれている方は、演出上の問題でサイトをPC版にした方がいいかもしれません。もちろんそのまま読んでも構いませんが、文章がぐちゃぐちゃになる恐れがあります。なお、竹村研究員の記録については、ただ書き写すだけにもいかないので書き換えてあります。
それでは、どうぞ。
笑って全てを忘れよう。全てはより良い明日の為に。
【SCP-1286-JPに関しての報告書】
このSCPのオブジェクトクラスは、はかつてはEuclid。今はKeter、恐らく。
特別収容プロトコルも1回だけ更新されていて、今は旧版特別収容プロトコルとなっています。内容は、SCP-1286-JPを監視カメラ付きの標準人型オブジェクト収容室、つまり専用の部屋に収容。SCP-1286-JPと直接接触出来るのは
しかし、このプロトコルも、『竹村研究員』による当時の記憶を頼りにしたモノで、【間違っているかも知れないが、いつかの為の参考に】と書かれています。
新しいプロトコル、つまり現在運用されているモノには、SCP-1286-JPを認識出来るのは、この報告書を書けた唯一の財団職員、竹村研究員だけで、他の人はSCP-1286-JPの影響で認識出来ていません。つまり、現在SCP-1286-JPは現在収容不可能となってしまった訳です。これは個人的な意見ですが、『財団が敗北した』SCPと考えてもいいかもしれません。さらに、このSCPに対し、竹村研究員は決して笑ってはいけません。
SCP-1286-JPの説明は現在運用されているモノだけ説明しますが、SCP-1286-JPは身長およそ180cm、体重(測る機会があったら記入する)㎏の人型SCPで、食事は一切必要としないらしいです。
更に、SCP-1286-JPは誰かがSCP-1286-JPと会話をすることで発現し、SCP-1286-JPと会話をする人物は、SCP-1286-JPの放つジョーク等全てに笑ってしまいます。ただし、これは日常会話はカウントされないらしく、普通に喋る文には問題無いらしいです。
SCP-1286-JPの特性としては、『反ミーム』と呼ばれるモノです。ミーム災害についてはあなたなら知っているはずですが、要するに『それを認識しようとする際、何かがトリガーにされてそれを憶えることが出来ない』というモノです。SCP-1286-JPのトリガーは『誰かに笑われる』ことで、そうすると笑った人はSCP-1286-JPを認識出来なくなります。
つまり、SCP-1286-JPが何か悪事を働こうとした時に、SCP-1286-JPに取ってみればその人を笑わせれば自分は認識され無くなる訳です。
しかし、この反ミームに対抗出来た職員こそが『竹村研究員』です。正確にSCP-1286-JPの特異性を報告すると、不明な原理で突如行われるショー(これはSCP-1286-JPとされていますが、これを見る人の為に、ここでは分かりやすく『ショー』と書きます)で笑うことで発現します。ショーを始める際、近くにいる人(詳しい値は不明。恐らく3kmはある。判明したら記入する)㎞を強制的に巻き込み、コメディーショーを単独で行います。
この講演の際、必ず中に居る人は笑ってしまい、更には反ミームの影響で認識・記録が出来ません。そして、内容を忘れた人は記録が本当でもそれを真っ赤なウソだと考え、
SCP-1286-JPとの直接の会話は可能で、竹村研究員がそれをしています。しかし、インタビューを録音・録画することが出来ても、SCP-1286-JPの影響を受けている人物には全て正しく認識されず、竹村研究員の独り言にしか聞こえないようです。しかし、竹村研究員は今後反ミームの異常性から抜け出せた人の為に、SCP-1286-JPの許可を取って、録音を欠かさずやっています。
以下は、竹村研究員の、SCP-1286-JP発見から現在までの記録を、元の形を残しつつ分かりやすく書き直したモノです。
2004/01/17。SCP-1286-JPが収容されました。
2004/05/22。SCP-1286-JPの収容違反が初めて起こりました。SCP-1286-JPはショーを発生させ、その時点でSCP-1286-JPは大量の人を笑わせ、ほとんどがSCP-1286-JPに関する情報を失ってしまいました。この時点で残ったのは、私を含む数人だけでした。まだ数人いただけマシでした。
2004/05/23。この日、私は自分がSCP-1286-JPによって行われたショーで全く
2004/06/11。この時点でまだSCP-1286-JPを認識出来る職員が数名しか居なくなり、残ったみんなでSCP-1286-JPの収容を何とか続けていますが、いつまで保てるか分かったものではありません。SCP-1286-JPの異常性のせいで、他の人達からしたら何も無いのに必死に収容しているように見えていると思います。私は、他のサイトへ連絡をしてSCP-1286-JPを移動させる案も出しました。しかし、上司からは被害は最小限に抑えるべきだと言われて却下されました。しかし、もう収容違反させなければいい話だ、とまともに取り合ってくれませんでした。
2004/08/05。2度目の収容違反。もう、認識出来ているのは私しかいません。私は既に、自分の権限ではSCP-1286-JPの移動なんて出来ない事と、SCP-1286-JPを収容する事が非常に難しいと分かってきていました。
2004/08/15。SCP-1286-JPの異常性のせいで、私の話なんてもう誰も信じません。つい先日まで、特別収容プロトコルも組まれていたのに、もう覚えている人も私しかいない。
2004/08/19。とうとう、SCP-1286-JPがどこかに行ってしまい、私も収容を諦めることを視野に入れ始めました。でも、この行為は本来許されるべきじゃない。
2004/10/22。脱走から2か月経って、SCP-1286-JPが戻ってきました。またもショーを執り行ったSCP-1286-JP。しかし、どうやっても私は笑いません。笑えません。笑いたくなかった。みんなは笑っているのにもかかわらず。彼を見て笑ってるのにも関わらず。私は、笑えなかった。
2004/10/23。SCP-1286-JPと竹村研究員の録音記録です。
再生しますか?
YES○/NO
[再生開始]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
SCP-1286-JP: いろんなところでショーをしてきたけど、君だけだよ、1度も笑ってないのは。
竹村研究員: 笑えないに決まってるでしょ、こんなの。SCP-1286-JPが収容されてないっていうのに、誰も私の話を信じてくれない。ねえ、あなたは本当に存在するんだよね? 実体でしょ? そう言って、お願い。
SCP-1286-JP: その通り。僕は実体だよ。紛れもなく、ここに存在している。けど、皆には忘れ去られてしまったんだ。記憶から、パッとね。
竹村研究員: なんで、どうして、こうなったの? なぜあなたは忘れられてしまうの?……その、笑われると。
SCP-1286-JP: さぁ? そんなの知らないよ。でも、君は知ってるだろ? 僕はかつて世界中で老若男女を笑わせたコメディアンだった。
竹村研究員: それはよく知ってる。ただ、私はあなたのショーで本当に1度も笑ったことはないけどね。
SCP-1286-JP: 悲しいなぁ。まあ、同時に嬉しくもあるよ。僕だって忘れられるのは辛いんだ。
竹村研究員: じゃあこんなのやめてよ。ショーなんかやらないでよ。こんなの……こんなの悪い夢みたいで、私、気が狂いそう。
SCP-1286-JP: こうでもしないと僕を見て笑ってくれる人はもう誰もいないんだよ、君以外に。君もショーで僕を笑ってくれればいい。そうしたら君も僕を忘れられる。その方が楽じゃないか。なぜ頑なに笑わないんだ?
竹村研究員: 笑わないんじゃない、笑えないの。SCP-1286-JP、あなたを収容したいの。お願い、協力的になって。
SCP-1286-JP: その番号みたいな呼び方嫌だな。名前で読んでよ。そうしたら協力的になるのも考えてみる。
竹村研究員: わかった。……で、名前は?
SCP-1286-JP: 笹木拓磨。漢字は……ちょっと紙とペン貸して。
[SCP-1286-JPが名前を書く]
竹村研究員: ……ありがとう、笹木さん。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[再生を終了しますか?]
YES○/NO
竹村研究員は、必死にSCP-1286-JPに懇願するも、まるで話を聞いてくれません。
SCP-1286-JPは、SCPになった経緯を知らないものの、元は人気のコメディアンでした。笑わせるのが仕事なのに、いざ笑わせたらみんな覚えていられない。そんな状況に置かれていてなお、SCP-1286-JPは楽観的でした。悲しい程に、楽観的でした。SCP-1286-JPにも笹木、という名前がありました。番号で呼ばれるのが嫌いだったらしく、竹村研究員に自らの名前を教えました。
SCP-1286-JPを収容し続ける為には、竹村研究員自らがSCP-1286-JPと会話し続ける事が前提です。SCP-1286-JPが竹村研究員を笑わせようとも、決して笑ってはいけません。今後も、笑ってはいけません。
2004/11/18。先日のSCP-1286-JPとの対話が上手くいき、SCP-1286-JP……笹木さん、が収容に協力的になりました。彼は私の隣にずっといて、離れる時もGPSを自発的に付け、どこに居るか分かるようになりました。
2004/11/22。私は、SCP-1286-JPに関しての報告書を作成し始めました。この報告書も、誰にも読まれる事は無いかも知れないけど、いつかの参考の為に。
2004/12/24。折角のクリスマスなのに、SCP-1286-JPの異常性により、私は独り言を言ってると思われ、カウンセリングを勧められました。
2005/01/01。新年が明けたにも関わらず、SCP-1286-JPは私を笑わせられません。
2005/02/16。竹村研究員の誕生日でさえ、SCP-1286-JPは私を笑わせられません。
2005/05/22。SCP-1286-JPが初めて収容違反してから1年が経ちました。当時、彼を見てみんな笑っていたのに、私は、自分が笑えなかったから今だ呪縛から逃れられません。あの時笑ってさえいれば、こんな事には……。
2005/05/28。SCP-1286-JPと竹村研究員の録音記録です。
再生しますか?
YES○/NO
[再生開始]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
竹村研究員: 笹木さん、私を笑わせようとするのはやめて。お願いだから。
SCP-1286-JP: それは難しいな。
竹村研究員: 協力的になってくれるって、随分前に約束してくれたでしょ?
SCP-1286-JP: 君が苦しそうだから協力してやってるじゃないか。僕をさっさと忘れてしまえばいいのに。
竹村研究員: 忘れられるのは辛いんだって言ったのはあなたなのに? 私、誰かを放っておくのは性分に合わないの。
SCP-1286-JP: 僕だって、誰かを笑わせるのが性分なんだよ。君、一度も僕のネタで笑ってくれないじゃないか。
竹村研究員: 私があなたを忘れてもいいの?
SCP-1286-JP: まぁ、忘れられるのは嫌だよ。けど君の笑顔が見てみたいんだ!
竹村研究員: 笑顔なら見た事あるはずよ。
SCP-1286-JP: 僕が笑わせたいんだ。
竹村研究員: ……そのときはお別れね。
SCP-1286-JP: でも僕は君に忘れられても君のそばにいると思うよ。僕は随分と君を気に入った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[再生を終了しますか?]
YES○/NO
もう、SCP-1286-JPと竹村研究員は、お互いを名前で呼び合う仲になっていました。しかし、SCP-1286-JPだって分かってたはずです。自分が笑わせれば、もう自分を認識してくれる人は竹村研究員以外誰もいないかも知れないなんて。それでも、彼は竹村研究員を笑わせようとしました。自分の、ある種の使命を全うさせようとしました。
竹村研究員は、SCP-1286-JPとの会話・交流を継続しなければなりません。竹村研究員が笑ってしまえば、あとは誰がSCP-1286-JPを知っていられるのでしょうか。
2005/06/30。竹村研究員は、同僚が自分の悪口を言っているのを立ち聞きしてしまいました。SCP-1286-JPの特異性のおかげで、竹村研究員は何も言い返せません。あの時、SCP-1286-JPは、怒っていました。
2005/08/16。SCP-1286-JPが竹村研究員の名前を聞いてきました。害は無いと判断し、竹村研究員は自分の名前を教えました。
2005/09/02。SCP-1286-JPがショーをしたいと再三言っています。私が笑ったらどうするのだ、と拒否してきましたし、今後私は絶対にSCP-1286-JPにショーを行わせたりしません。それにしても、私が許可しなくともSCP-1286-JPは勝手にショーを開けるはずなのに、何故私に尋ねるのでしょうか。
2005/12/10。前回もこの日辺りにカウンセリングを勧められた。私はこんなにもSCP-1286-JPを収容させようと必死なのに。どうしてなの?
2006/01/01。無事また新年を迎えられた。でも、SCP-1286-JPは私を笑わせようとする。
2006/01/26。SCP-1286-JPを殺しては……ダメ、か?
2006/02/16。私の誕生日プレゼントとして、SCP-1286-JPは私を笑わせようとした。でも笑えない。……
2006/08/11。SCP-1286-JPと竹村研究員の録音記録です。
[再生を開始しますか?]
YES○/NO
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
SCP-1286-JP: そしてハンターは「OK! それからどうすればいい?」って言ったんだよ!
竹村研究員: ふーん。
SCP-1286-JP: アメリカンジョークもダメか。これ世界一面白いジョークって言われてて有名なやつなんだよ?
竹村研究員: それのどこが面白いの?
SCP-1286-JP: ま、これは英語の言葉遊びだから日本人には意味わからないよね!
竹村研究員: ……笹木さん。ちょっと質問したいんだけどさ。
SCP-1286-JP: 竹村さんから話題を振るなんて珍しいね、何?
竹村研究員: 笹木さんって、何歳? 誕生日は?
SCP-1286-JP: えっ……と。気にしたこと無かったな。ごめん、わからない。
竹村研究員: 出自のこと、わからないの? 出身地も?
SCP-1286-JP: そうだね。何もわからない。
竹村研究員: そう……わかった。ありがとう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[再生を終了しますか?]
YES○/NO
<やることリスト>
笑わない(優先度: 最高)
SCP-1286-JPの出自を調べる(優先度: 高)
昇進の申請(優先度: 中)
SCP-1286-JPの無力化(優先度: 低)
SCP-1286-JPは、自分の出身地も、年齢も、誕生日も分からず、ただ『笹木琢磨』としての名前があっただけでした。彼も、SCPオブジェクトになりたくてSCPオブジェクトになった訳では無かったと思うのに。
竹村研究員は、SCP-1286-JPが自らの研究対象であるということとSCPオブジェクトであることを忘れてはいけません。SCP-1286-JPとの対話の際、必要以上の感情を
2007/04/27。最近、報告書を書いていなかった。SCP-1286-JPの出自も全く進展していない。
2007/09/15。何回目かの承認申請が却下された。みんな、私の事を変人としか思ってないもんなあ。
2008/03/15。SCP-1286-JPはショーをしたいらしい。でも却下した。……多分、人を笑わせたいのに。
2008/04/13。ショーが始まってしまった。でも、もうどうでもいい。SCP-1286-JPは満足していた。財団職員として失格だろう。
2008/04/14。SCP-1286-JPと竹村研究員の録音記録です。
[再生を開始しますか?]
YES○/NO
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
SCP-1286-JP: 昨日のショーは最高だったよ! 竹村さんは相変わらず笑ってくれないけど。
竹村研究員: ショーを許可するなんて、私どうかしてる。私が笑わないとも限らないのに。
SCP-1286-JP: でも笑わなかった。
竹村研究員: そんなの結果論でしょ! 私……怖かった。笹木さんのこと忘れちゃうんじゃないかって。
SCP-1286-JP: 僕のことなんてさっさと忘れてしまえばいいのに。竹村さんが苦しむのは僕のせいじゃないか。
竹村研究員: 笹木さんに関してこの数年間必死で集めた記録が消えるなんて嫌。
SCP-1286-JP: そう。僕はあくまで研究対象ってわけか。友達ですらない?
竹村研究員: そうだよ。あなたと私は友達なんかじゃない。
SCP-1286-JP: ふうん。じゃあ友達じゃない竹村さんにひとついいことを教えようか。僕は食事や睡眠を必要としないから、僕が終わらせなければ永遠にショーを続けられるんだよ。
竹村研究員: わ、私を脅してるの?
SCP-1286-JP: その通り。僕はいつでもこのサイトを壊滅的状態にさせることができる。別に君に許可を得なくたって、いつでもショーは開催できた。でも僕はいつだって君の意思を尊重したんだ。友達だと思ってたからね。
竹村研究員: 私が悪かったから、ねえ、お願い。そんな怖い目で私を見ないでよ。ごめんなさい。自分にイライラしてたの。……ごめんなさい。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[再生を終了しますか?]
YES○/NO
SCP-1286-JPは、自分を閉じ込めているSCP財団の職員である竹村研究員を友達だと思っていましたが、竹村研究員はそれを否定してしまい、SCP-1286-JPを少し怒らせてしまいました。
しかし、逆説的に、竹村研究員がSCP-1286-JPと
竹村研究員だってSCP-1286-JPにショーを
2017/11/20。そういえば、最近はずっと報告書を更新していなかった。でも、私のそばにSCP-1286-JPがいる事が日常になってきた。昇進申請も通らない。疲れたなあ。
2018/07/18。SCP-1286-JPが、ショーをしたいと言っている。……偶には……いや、ダメダメ。私はSCP-1286-JPを収容しなきゃいけないの。
2018/12/02。ここで働いていても意味がないかもしれない。でも、SCP-1286-JPの事もあるし、辞めるなんてのは嫌だ。考えは保留しておこう。
2020/2/6。ずっと悩んでいたけど、遂に辞めることにした。誰にも引き留められなかった。記憶処理されて、何もかも忘れてしまうのだろう。
……ここまで書いたけど、もう後続の人間の為の報告書制作なんて作っても意味ない。私とSCP-1286-JP……ううん、こんな書き方は止めよう。変な呼び方で笹木さんとの思い出を汚したくない。私が笹木さんのショーで笑ったら、もう後続の人間なんて出てこないに決まってる。
それでも書き続けるのは、私がまだどこかで、ありもしない希望に縋っているからなのかも。でも、それももうここまで。最後に、私と笹木さんの最後の、思い出。
これを読んでいる人がいたら、SCP-1286-JPに話しかけて。もし、私と同じ運命を辿ることになっても、あなたなら出来るはず。
さっき、笹木さんに、これが私が見る最後であろうショーをお願いした。
録音記録は、そのままにしておく。聞きたければ、勝手に聞いて。
どうせ私は、忘れてしまうもの。
[録音を再生しますか?]
YES○/NO
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
笹木さん……あの、私、辞めることにした。
ああ、やっと決心ついたんだ? もう竹村さんは僕のことは諦めるんだね。
うん。もう、疲れちゃった。ごめんね。
そうか。じゃあ、最後にとっておきのショーを執り行おうか。
いいね。笑わせてよ、私のこと。
勿論。心残りなく辞めていけるようにしてあげるよ。
文字通りね……それじゃ、最高のショーをお願い。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[再生を終了し、全てを諦めますか?]
YES/NO
【それで、どうするの?】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【第4の壁】からこんにちは、中嶌です。
今回の解説はSCP-1286-JP『そして笑った』です。端的に言うと、誰かを笑わせると自分の事を忘れられてしまう、そんなSCPでしたね。
本家では最後、竹村研究員がSCP-1286-JPのショーで思いっきり笑って終わりでしたが、ここではわざと違った終わりかたにしました。……僕の意図には、流石に気づきましたよね?
そう。竹村研究員は、諦めなかったのです。
いつの日か、SCP-1286-JPの反ミームに対抗できるような、後続の研究者が出る事を願い、最後に報告書とも呼べないモノ……つまり、この解説を書いた訳です。
そして、今これを読んでいるあなた。あなたは、何回も《録音を再生出来てますよね?》 そして、SCP-1286-JPはつまり、後続はあなたという訳です。SCP財団の報告書では、《外側》から見ている私たちをSCP財団の人などに見立てるのは結構使われている手法ですが、まあ、見れているなら死んでいる報告書よりはいいんじゃないかと。
そして、まだあなたは最後の報告書の問いかけをYESともNOともしていません。最後は笑って忘れるか、最後は全てを受け入れるか。
あなたは―――
SCP-1286-JP『そして笑った』
どちらが、良いですか?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
My Twitter Address
Itu_Mochiya
この作品はCCクリエイティブコモンズライセンスに準拠します。(すいませんね、こんなことしちゃって)
タイトル: SCP-1286-JP そして笑った
著者: ©︎Kuronohanahana
http://ja.scp-wiki.net/scp-1286-jp
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます