第10話 白川の目論見

「何て事してくれたんですか!」


 あれよあれよと車の中に押し込められ。白川さんと二人っきりになったところで、漸くウチは抗議を口に出来た。


「アッハッハ、僕らすっかり有名人だねぇ」

「笑い事じゃないです! ウチ明日から、どんな顔して大学に行けばいいんですか!」


 ウチがどんなに抗議しても、白川さんはヘラヘラと受け流すばかり。その姿に、更に怒りが込み上げてくる。


「そりゃ白川さんは二度と大学来なければいいだけだから笑ってられるでしょうよ! あんな、あんな形で連れ出されて、明日からウチ絶対好奇の目に晒されるやないですかぁ!」

「それはご愁傷様。でもねぇ、アレって君の為でもあるんだよ」

「ハァ!?」


 更にはいけしゃあしゃあと、そんな事まで言う始末。アレの! どこが! ウチの為だって言うのよ!

 思わず怖い顔を作るウチの気迫がやっと通じたのか。白川さんは漸く笑うのを止め、フゥと小さく息を吐いた。


「ま、面白がってたのは認めるけど……言ってる事はホント。これで今後、抜け出しやすくなったでしょ?」

「何を!?」

「大学。僕らが君を呼ぶのは、今日みたいに平日だって関係無い感じだからさ」


 そう言われて、ウッと言葉に詰まる。確かに事件なんていつ起こるか解らないし、ユーレイ課に協力するって約束した手前、呼び出しを無視する訳にはいかないけどさ……。


「周りには、束縛強い彼氏からの呼び出しだから行かないとまた大学まで乗り込んで来られるかもーとか言ってさ。そうすれば納得して貰えるじゃない?」

「た、確かに……」


 あれだけパフォーマンスしてみせたのだ、そう言えば確かに途中で帰るウチを誰も不審に思わないだろう。単位の事はこの際考えない事にして。

 ……ただ、そうだとしても。


「……でもそれなら、事前にウチに言ってくれても良かったんじゃないですか?」


 ジト目でウチが言うと、白川さんは再びニッコリと笑みを浮かべた。そして、あっけらかんと言い放つ。


「それはさ、みっともなく慌てふためく毛虫ちゃんが見たかったから♪」

「~~~っ! 人で遊ぶな! あと毛虫ちゃんって呼ぶなーっ!!」


 あまりの言い草に、ウチは敬語も忘れてそう叫んでいた。

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