◇230◇話はまとまった
「ルイユ。最初から話してくれ。今度はちゃんと聞く」
「わかりました。お話しします」
ロドリゴさんが、僕達を抱きしめたままルイユに言うと、彼女は頷きケアリーヌさん達と魔女を封印した事を話し、僕達が再び魔女を封印した事も話した。
「そうか。そのケアリーヌという者と同じ考え方が出来る者を探すか……。ハッキリ言って不可能に近いな。それならケアリーヌが何か残した物を探した方が早いと思うが。ないのか?」
「だいぶ昔の事で、しかも私も生まれる場所がその時々で違う為、ケアリーヌ様がどの場所にいたのかもさえわかりません。ただ、コーリゼがいた村がわかれば、探す手立てがあるかもしれません」
ロドリゴさんの提案に、ルイユが答える。
「……探しに行っていいの?」
僕が聞くと、ロドリゴさんは頷いた。
「魔女の話は本当だろう。だとしたら今の私達に出来るのは二つ。一つは、ケアリーヌが考えた方法で魔女を殺す事。もう一つは、ルイユを殺さず魔女だけ殺す事。けど最初の方法は無理なんだろう?」
僕は、無理だと頷く。
「ルイユを全面的に信じたわけじゃない事だけは言っておく。だが、クテュールがチュトラリーなのは間違いないだろう。クチュール、どうせならジーンも連れて行け」
「え!?」
まさか、ロドリゴさんがそんな事を言うとは思わなかった。
「どうせ、動物に見える様にしてあるのだろう? あのモンスターは、君に忠実だからな」
「うん」
僕は頷いた。
「俺も一緒に行ってもいいよね?」
「本来なら行くなと言いたいが、お前の気がすまないだろう?」
イラーノも頷く。
「あとは、アベガルさんだな」
「アベガルさん?」
「私と一緒で全てを信じたわけではないだろう? 絶対に何かを企んでいる。できれば、彼の監視から逃れれば……」
「そうすると、これを取って頂かないといけませんね」
ロドリゴさんの言葉に、ルイユはそう言って左手を上げた。手首には、冒険者の証がついている。
「それって、本物なのか?」
「えぇ。冒険者にして頂いたのですが、これに感知できる細工がしてあるようなので……」
「え? そうなの?」
イラーノが驚いて、声を上げる。
やっぱりロドリゴさんが言う様に、信用はしてないみたいだ。
「あいつ、追える様にする為とはいえ、モンスターだと知っていて冒険者登録をするなんて! それを外すには、冒険者ギルドに設置してあるアイテムで外すしかない」
「やはりそうですか。これをもし無理やり外したらばれますか?」
「いや、壊さない限りばれはしないが……って!」
ロドリゴさんが大丈夫だと言っている途中でルイユは、本来のモンスターの姿に戻った。勿論、冒険者の証は外れている。
久しぶりに見たモンスターの姿のルイユだ。
僕は、自然にルイユを抱き上げギュッとする。
人間の姿もいいけどやっぱり、モンスターの姿の方が僕はいいなぁ。
「ダミーの冒険者の証を持って来る」
ため息をしつつロドリゴさんは、部屋を出て行った。
『主様すみません。主様がそこまで追い詰められているとは思わずに……』
僕は、ううんと首を横に振る。
「ねえ、ルイユ。次に生まれ変わったら人生を謳歌してほしい」
『主様。ありがとうございます。ですが、主様に出会わない時は、謳歌していると思いますよ。いえ、違いますね。今も十分謳歌しています』
「うん。よかった」
「まだ、やっていたのか……」
戻って来たロドリゴさんが、僕がまだルイユをギュッとしているのを見て呆れた様に言った。
「ルイユ。人の姿になったらこれをつけろ」
ルイユは、僕の腕からすり抜けると、人間の姿になった。
「偽物の冒険者の証ですか?」
「いや、本物の冒険者の証だ。いいか、今日の宴の席には全員参加する事になっている。だからそれを付けておけ。きっとあるかチェックしているはずだ」
「わかりました。ありがとうございます」
ルイユは渡された冒険者の証を左腕につけた。
僕達も参加するんだ……。
「ところで、彼、コーリゼは本当に女性なのか?」
「みたいだね。俺達は見て確認はしていないけど、妹もお姉ちゃんって言っていたし」
「まあ、女だったなんて嘘をついても何も得はないが……。執念だな。もしスキルも何もないのなら男だって冒険者を続けるのは大変だ」
コーリゼさんが本当に女性だと聞いたロドリゴさんは、頷きながら言った。
「……クテュールは、コーリゼも救った事になるのか」
「え?」
「生きる気力の話だ。ここまでやってきたのは妹を助ける為だろう? しかも魔女から解放できたが、助ける事ができなかった。新たな目的を持つ事で、生きていく活力になるって事だ。あの場でルイユを殺していたらコーリゼは、死を選んでいただろうな。役目は終わったと……」
僕達は、ハッとする。
それもそうだ。もし妹が生きていれば、冒険者を辞め一緒に暮らすという選択肢もあった。でも、助けられなかった。
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