◆203◆待ち惚け
僕達は、夜遅くにブツゴゴチ街に着いた。
本来は、峠の近くの村に一泊の予定だったけどアベガルさんが居るし、一応今日中に着けるという事でブツゴゴチ街に向かった。
ただここに、何泊するかはわからないけど。
ブツゴゴチ街は、本当に大きな街だった。塀の端が見えない程だ。
門も大きい。馬車は余裕で通過でき、僕達は馬車で騎士団の建物に向かった。
ここでは、冒険者ギルドと騎士団の建物が違うらしい。しかも騎士団は四つある。東西南北で警備範囲が決まっているらしい。
なので今回は、北部支部に向かった。そこに、コーリゼさんもいる。
着いて驚いた。
一階が馬小屋になっていて、二階に事務所があって、三階以上が寝泊りする部屋らしい。
馬車を降りるとまず、二階の事務所に連れて行かれた。
「アベガル。ご苦労様」
「こんな夜中にすまないな、メリュドガ。紹介する。彼女が錬金術師のマドラーユ。彼が助手のイラーノ。ヒーラーだ。それにクテュール」
「大変な目に遭いましたね。今日はもう遅い。お部屋をご用意しました」
本来は、村に泊まる予定だったので、騎士団で宿を手配してくれたみたい。
夜ごはんは、アベガルさんが持って来た簡易ご飯を食べた。
騎士団は、救出に向かう時には必ず持参するらしい。万が一の為だけど今回それを頂いた。
カチカチの小さなパンを袋に入れると不思議な事に、ふんわりとしたパンになった。大きさも普通の大きさになって、袋はマジックアイテムらしい。
「ありがとう。って、泊まるのここなの?」
礼を言ってついて行こうとしたマドラーユさんが、驚いて言った。
騎士団の人が向かおうとしたのは、僕達が入って来た出入り口ではなく、中にあった上へと続く階段だ。
「私達ってまだ疑いが晴れてないわけ?」
マドラーユさんが、アベガルさんに言う。
馬車の中でアベガルさんは、ルイユと疑った事は謝っていたけど。
「いえ。マドラーユさんは、三階の来客用です。そちらの二人は、五階になりますが」
答えたのは、メリュドガさん。
「そう。まあいいわ。もう遅いし、そこで休ませてもらうわ」
案内役の騎士団の人に僕達はついていく。アベガルさんとメリュドガさんも一緒に三階へと向かう。
「こちらになります」
「思ったより立派ね……」
マドラーユさんは、見渡して言った。
部屋には大きな窓があり、テーブルとイスがあった。奥にはドアがある。たぶん寝室だ。
「そちらのドアが寝室になります。寝室の奥に湯もご用意しております。旅の疲れを取ってお休みください」
「まあ、これなら私がとった宿と変わらないわね。凄い設備があるのね」
マドラーユさんが感心して言った。
「では、二人は五階に……」
「また明日ね」
マドラーユさんが、僕達に手を振る。
僕達を案内するのは、メリュドガさん。五階まで行くと、階段の所に扉があった。
僕とイラーノは、顔を見合わせる。
どうやら僕達の疑いは晴れていない様だ。
扉を開けると廊下に騎士団の人が立っている。見張りだ。
そうここは、鉄格子じゃないけど牢屋みたいな場所。
「一人部屋になっている。悪いが君達は、今日はここに泊まってほしい」
立っていた騎士団の人が、一番手前のドアを開けた。部屋には窓がなく、明かりさえない。
ドアには、小さな窓があるからそこから明かりが入るだろうけど、かなり薄暗いと思う。
「凄いねここ。結界まで張ってある」
「え!? 結界!」
そうだ。イラーノは、結界とか見えるんだっけ?
じゃここに、コーリゼさんもいるって事だ。
開けたこの部屋には僕が入った。ドアが閉まると本当に暗い。
僕はわかるけど、協力的なイラーノもここに入れられるなんて。
一応敷いてあった布団に僕は潜った。
ルイユは、今回も夜中に連絡をくれるだろうか?
そう思ってずっと待っていたけど、朝になってもルイユからは連絡が来なかった。
◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆
「食べないのか?」
騎士団の五階には、大きな部屋があった。
一人用のテーブルと椅子が背中合わせで設置してある。
僕とイラーノは並んで座り、イラーノの後ろの席にコーリゼさんが座って朝食を食べていた。
でも僕は、ほとんど寝ていないせいか食欲がわかない。
もうルイユのバカ! 何か連絡をよこしてもいいじゃないか。
「クテュール、食べた方がいいよ」
イラーノにそう言われるも食欲がない。しかもだるい。
「あの、クテュールを医者に診せてほしい。たぶん具合が悪いんだと思う」
イラーノが僕の体調に気づき言った。
「そうだな。医者を呼ぼう」
思ったより鬼じゃなかったようで、僕は医者に診てもらえる事になった。イラーノは、ホッとしている。
よかった。僕は、イラーノに嫌われてはいない様だ。
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