◇170◇偽りの鑑定結果
僕とイラーノは、冒険者ギルドの二階に連れて行かれた。
そして、二人並んで椅子に座らされ、テーブルを挟んだ向かい側にアベガルさんが座る。騎士団の人が五人程、僕達をぐるっと囲む様にして立った。
威圧感が半端ない!
「では改めて話を聞こう。その前に、リュックと鞄を預からせて頂く」
嫌だと言っても取り上げられるだろう。大人しく僕達は、テーブルの上に置いた。
「鑑定します」
騎士団の一人がそう言って、リュックを手に取りジッと見ている。
鑑定が出来る人もいたんだ。
「うん?」
僕の鞄から先ほど作った小さなお守りの様な袋を取り出した。
「それはなんだ?」
「どうやらマジックアイテムの様です。魔力を帯びております」
「クテュール。これはどうした?」
「ルイユに貰った物です……」
僕は、俯いたままそう答えた。
「同じ物が彼のリュックからも」
イラーノのリュックからもさっき渡した同じ物が発見され、テーブルの上に置かれた。
「これは何の為に渡されたのだ?」
「お手製のお守りだって……」
僕がボソッと答えると、お守りねぇと言いつつアベガルさんはそれを見つめる。
本当はお守りではない。
入れた石には、あの森の魔力が大量に取り込まれている。そして、そのマジックアイテムは、その石の魔力を体に纏わせる仕組みだ。
つまりそれを持っていると、森の中へ入れる事になる。
僕達が、森へ入れたカラクリを作る為に、早急に作った。気づいてくれるといいけど。そのカラクリは、僕達は知らない事になっているから何も言えないからだ。
「アベガルさん! ちょっとそれ置いてもらっていいですか?」
騎士団の一人が、驚いた顔つきで言った。
もしかしたら気づいたのかもしれない。
言われた通り、アベガルさんはテーブルに置いた。すると、置けと言った人が頷いた。
「それをもう一度持って頂いてもいいですか?」
「あぁ。何かわかったのか?」
お守りを手に取ったアベガルさんは聞く。
「はい。それを手にすると、魔力を体に纏う様です」
「何! 何故そんな物を彼らに……」
「推測ですが、それを纏うと森に入れるのかもしれません」
よし来た!
僕とイラーノは、チラッと目を合わせる。うまくいったと。
「試してきてくれ。だがくれぐれも気を付けてな。罠かもしれない」
「はい!」
お守りを受け取ると、それを持って一階に降りて行った。
まずは、第一段階クリアっと。
「二人共立て」
アベガルさんに言われ僕達は立ち上がる。
一体何をする気かと思うったらどうやら僕達自身を鑑定する様だ。
一人ずつ壁に立たされた。
まずは、イラーノ。
先ほど鑑定した人と違う人が、鑑定してる。
「マジックアイテムは、何も身に着けていないようです。彼は、ヒールとライト保持者です」
うむとアベガルさんが頷く。
僕は、もう一つ細工をしていた。
マジックアイテムに、糸を縫い付けてマジックアイテムだと判明しないように施した。それが上手くいったみたい。
もちろん、ミサンガだけじゃなくイラーノが被っている帽子にも施したので、ただの帽子として鑑定された。
イラーノは、ホッとした表情だ。
次は僕。イラーノの様に、壁側に立った。
「彼も何も身に着けていません。そして、魔法もスキルも保持してません」
「何? マジックアイテムも装備していなくて、魔法もスキルないだと?」
アベガルさんが、ジッと僕を見つめる。
僕は、感知玉が効かなかった。しかも、皆の魔法を解いた。
どんなカラクリだと、探っているんだ。
僕は、お守りのマジックアイテムを作る前に、自分用にミサンガを作った。自分のステータスを偽るマジックアイテムだ!
といっても眷属を消しただけ。裁縫の加護しか見えなくなっているはず。それは成功していた。
あえてキャンセルの事は、放置していた。
シークレットスキルとして、捕らえてもらおうと思ったからだ。
マジックアイテムの効果にしてもいいが、取り上げられても困る。
「一つ聞くが、君は魔法が効かない体質だったりするか?」
「え? 魔法ですか? さあ?」
アベガルさんが聞くも僕は首を傾げる。
僕達は、冒険者になったばかりだ。魔法をかけられる体験など普通はまだないだろうから知らないと答えた。
思惑通りシークレットスキルかもと疑ってくれたみたい。
でもアベガルさんは、眉間に皺をつくってジッと僕を見ていた。
まあ直ぐには納得できないよね。
「クテュール。そのミサンガを見せろ」
全く納得していなかったみたい……。
僕は、言われた通りミサンガの一つを取って渡した。
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