◇162◇彼らの思惑は……

 エルフは二人。どちらも男。そして、オスダルスさん達ぐらいの年齢。

 一人は、髪が肩より長く後ろで結んでいた。もう一人は、髪が短い。


 「ほう。人間が連れ去ったジュダーノの息子か?」


 ジュダーノ? その人がイラーノの父親?


 「あの……俺のち……」


 「モンスターを引き連れてくるなんてな!」


 「引き連れてって……ち、違う!」


 「ふん。まあいい。どうせ、そのモンスターは使い物にならん」


 『………』


 ジッと睨みルイユは、何も言い返さない。


 「僕達は、そのジュダーノさんに会いに来たんです。この森に居ますか?」


 「会う? 会ってどうするのだ?」


 ギロリと僕を睨んで言った。

 まあこんな形で登場したら怪しむよね。


 「ただ一目会いたいだけです……」


 イラーノが、エルフの二人をジッと見つめ言った。


 「そんなに会いたいのなら会わせてやろう」


 「え? 本当?」


 「あぁ。その代わり、後で我々の願いを聞いてもらう」


 「わかった」


 イラーノは頷いた。


 「待って! イラーノ本気? 違う人に合わせるかもしれないし、無理難題を言われるかもよ」


 「でもどうせ、俺達逃げられないんだし」


 「そ、そうだけど……」


 「話は着いたか? では行くぞ」


 エルフの二人は、僕達に背を向け歩き出す。

 どういうつもりなんだろう?

 殺そうとしていた相手なのに、願いを叶えるなんて……。

 それとも殺すという判断は、オスダルスさん達だけの判断だったのか?

 どちらにしても、イラーノの言う通り僕達に選択の余地などない。


 「ルイユ。抱っこしようか?」


 『………』


 僕が、聞くもルイユは反応を示さなかった。

 ルイユは、大丈夫だろうか?

 もしかして、もうろうとしているんじゃ……。

 こうしている間にもルイユの魔力は失われていく。何とかこの結界から出ないと……。

 そう思っていたけど、一時間以上歩かされた。


 《主様。結界の種類が変わりました。魔力が回復していきます》


 僕は、ホッと胸を撫で下ろす。

 でも一時間も失い続けたんだから魔力は少なくなっているはず。


 この場所は、森の中にある集落の様だった。

 でも不思議な事に、木と木がいくつも絡み合って出来た空間になっている。それが、お家のようだ。

 入り口には、ドアはなくそのまま突き進んでいく。


 「カゲイケセ……その者達が侵入者?」


 「あぁ。お前に会いたくて来たそうだ」


 カゲイケセさんが髪が長い方だ。

 そして、話しかけて来たのがどうやら会いたかった人物のジュダーノさん?

 って、二十代にしか見えないけど?

 イラーノも驚いて凝視している。


 「だ、騙したの?」


 「いや、彼がジュダーノだ」


 ジッとイラーノは、ジュダーノさんだと思われる人物を見つめた。


 「あぁ……本当だ」


 「え? わかるの?」


 「ルイユが、言っていただろう? わかるって。もしかして俺にもわかるかなって、感知で探ったら……お父さん……」


 最後は涙ぐんでイラーノは言った。


 「……まさか俺の息子なのか? 生きていたのか!」


 ジュダーノは、フラフラとイラーノに近づくとギュッと抱きしめた。

 この様子だと、イラーノを捨てた訳ではないみたいだ。


 「なるほど。本当に息子だったか」


 うん? 会わせたのってもしかして、本当にジュダーノさんの子供か確認する為?


 「名前は、何と言う?」


 「イラーノです」


 「イラーノか……」


 うんうんと嬉しそうにジュダーノさんは、頷いて呟く。


 「もしかして彼は、ドドイの息子か?」


 「はい。あなたを探す手助けをしてくれて」


 「そうか。ドドイさんには何とお礼を言っていいか。元気ですか?」


 そう問われ僕は俯いた。


 「な、亡くなりました」


 僕が言えなくて、イラーノが呟いて答える。


 「なんと! そうか。君がドドイさんの遺志をついで……」


 「いえ。僕は何も聞かされていませんでした。探してはいましたが、ここに辿り着いたのは、偶然なんです。エルフかもってぐらいしかわからなくて……」


 「そうか……」


 「なるほどな。復讐をしに来た訳ではないって事か」


 話を聞いていたカゲイケセさんが言った。

 復讐。

 それをするような事をこの人達はしたって事?

 驚いた顔で、イラーノはカゲイケセさん達を見つめる。

 イラーノも僕と同じ考えに至ったんだと思う。


 「俺が復讐に来るって思う様な事をしたの?」


 「あぁしたさ。君の母親を殺した」


 「え!」


 死んだとは聞いていたけど、まさかこの人達に殺されていたなんて!

 イラーノは、本当か問う様にジュダーノさんを見つめる。


 「すまない。一緒に逃がしたんだが、彼らに殺された!」


 信じられない台詞をジュダーノさんは言った!

 愛する人を殺されたのに、その人達と一緒にいたの? なんで!?


 《彼は、ここに閉じ込められているようですね》


 閉じ込められているだって!?

 一緒に居たくて居るんじゃなくて、幽閉されているって事?


 「何故、ジュダーノさんを閉じ込めて……」


 僕の言葉にカゲイケセさん達は驚くも直ぐに、質問をした僕ではなく、イラーノを睨んだ。僕達は、唾を飲み込んだ。殺される!

 そう思う程の目つきだった!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る