◆163◆追い詰められた三人

 何か知らないけどやばいかも。刺激しちゃった?


 《主様。ここは一旦引きましょう! 私も本調子ではありませんので、お許しください!》


 え……?

 驚いていると、目の前でルイユは人間の姿になった。

 そして、ミサンガを手に着けた。

 あ、忘れていた。ミサンガの存在。

 そっか。話しかけても答えなかったのって、口にくわえていたんだ。

 そう思っていると、ルイユは僕とイラーノを両脇に抱かかえ、空へ飛び立った!


 「え! ちょっと待って! まだ話を聞きたいんだけど!」


 「暴れないで! 今、これが精一杯なのです! あそこに残ればあなたは殺されます!」


 イラーノが抗議すると、ルイユは恐ろしい言葉を返し来た。

 でもだぶん、あたっている。僕よりイラーノに殺気立っていた!

 何故だろう?

 僕は、二人から見たらイラーノを連れ去った男の息子なのに……。


 ルイユは、森の麓まで一気に飛んで下りた。

 着地したルイユは、片膝をつく。


 「大丈夫? ルイユ」


 「はい……。やはり追って来てましたか」


 そう言って顔を上げたルイユは、森ではなくその反対側を見て言った。

 二人ほどの足音が聞こえて来た。誰かが来る!


 「やはりお前達か!」


 「アベガルさん!?」


 僕は、驚いて声を上げた。

 追って来ていたんだ。どうやって?

 あ! もしかして!

 僕は、首に下げている救援アイテムを掲げた。


 「これで追って来たの?」


 僕が聞くとそうだとアベガルさんが頷く。

 まさかこれも発動しなくても位置がわかる物だったなんて!

 ルイユも気づいていたんだ。

 森でのあのジッと見つめる行動は、森ではなく森の外にある道を見ていた。アベガルさんを感知していたんだ。

 もしかして、だからあの崖を飛び越えて、先を急いだ?

 追いつかれない為に。

 結果的にエルフが住む森だったけど……。


 「この森付近でぱったりと気配が消えたんでな。一体何が……うん?」


 アベガルさんが、空を見上げる様に顔を上げたので、僕達もそっちを見た。

 なんと、カゲイケセさん達がこっちに向かって来ている。

 あれ? ジュダーノさんも一緒!?

 これどういう状況?


 「参りましたね。挟み撃ちですか」


 挟み撃ちって……。ちょっと違う様な。


 「飛んでいる? お前達も飛んで来たよな?」


 見てたんだ!

 いや見えたからここに来たのか。

 しかしどうしよう。

 ここでルイユが戦えば、アベガルさん達に変に思われる。

 どうしたらいいんだと考えていたら三人も僕達の前に降り立った。


 「おや? 援軍を呼んでましたか」


 「ち、違うから! 俺らはジュダーノさんに会いに来たって言ったでしょう! それだけだから」


 「私は、ルイユといいます。彼が主人です」


 ルイユが、そう述べた。


 「な、何!? お前達夫婦だったのか!」


 「え?」


 突拍子もない事を言うアベガルさんに、僕達は振り向いた。

 凄く驚いた顔をしている。

 どうやら、主人の意味を間違えて受け取ったらしい。

 ……でも、違うと説明も出来ない。

 僕がテイマーで、ルイユが眷属だと言う説明になる。


 「ルイユ……まさか!」


 驚いた様に、カゲイケセさんが言った。


 「そのまさかです。先ほど見たでしょう?」


 見たって何?

 あ! 人間になった所の事?


 「伝記に出て来るルイユか……」


 「遅かったのか……」


 ジュダーノさんが呟くと、カゲイケセさんも呟く。

 一体なんだ?

 伝記にルイユの事が書いてあったって事?

 それに書かれる程、ルイユって凄いの?


 「これで俺達は、終わりだ」


 「スフェオア……」


 さっきまでの勢いはどこにいったのか、肩を落としている。

 シャリン。

 剣を抜いた音が聞こえ振り向くと、アベガルさんが剣を構えていた。


 「ちょっとアベガルさん!? 何する気!」


 「お前は下がっていろ」


 「待って! 彼らは敵じゃないから!」


 僕が言うも剣を収めようとしない。


 「あいつらの仲間なんだろう? ようやくわかったよ。あの二人は、エルフだな?」


 目の前のカゲイケセさん達は、耳が特徴のあるエルフそのものだ。

 見た目がオスダルスさん達と似ている。まあイラーノにも似ているけど。


 「そして、イラーノ、ルイユ。お前達もな!」


 うん? もしかしてエルフは敵って事!?

 ガシっと、ルイユに引っ張られ、ルイユに倒れ込む。


 「ちょっと何を……」


 「主様は、渡しません」


 見ればアベガルさんと一緒に来た騎士団の人が、僕の近くにいた。


 「理由も聞かずに、俺達も捕まえるって事?」


 驚いてイラーノが問う。


 「あぁ。でも別に殺しはしない。何をする気だったか話せば……」


 「待って! 何でそうなるんだ! イラーノは何もしていないじゃないか!」


 「お触れが出ている。この頃エルフ達が、人間に紛れて何かしているようだから発見したら捕らえる様にとな」


 アベガルさんは、確信はなかったけどもしかしてと思って僕達を追跡していたんだ!

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