◇102◇ムダマンスの過去

 ロドリゴさんが、驚いてムダマンスを見上げた。

 話すと言うとは思わなかったのだろうけど。ただ本当の事を話すかどうかだ。


 「そんなに期待されても困るな。私が話せるのは、君が父親から貰った物を何故欲しているかだ」


 「な……。それは、僕が欲しい答えじゃない!」


 「そう言われてもな。何せ君の父親とは話をした事すらないのだから」


 ロドリゴさんから聞いた話は、事実以外は憶測だ。もし何故探しているか本当の事を聞いたら少しは、真実に近づける?


 「わかったよ。もしそれが本当だって思ったら渡すよ」


 「待て! こいつが本当の事話すと思うか!」


 「話すさ。嘘をつかないと言うのは、結構簡単な事だ」


 「何!?」


 ムダマンスの言葉に、ロドリゴさんは睨み付ける。


 「お願いだからロドリゴさんは、黙っていて」


 「クテュール……」


 「今しかないんだ。この二人がここで捕まっても逃げても聞く事は出来ないと思うから……」


 「そうだな……」


 ロドリゴさんもわかってくれたのか頷いた。


 「では、最初から話そう。私は、君みたいに何も出来ない剣士の冒険者だった」


 何も出来ないって……。


 「いや、君以下だ。薬草の事すら初めはわからなかった。ただ冒険者になるしかなくその職についた。でも幸いに妻をめとる事ができたのだが、彼女は体が弱かった。そこで初めて、薬草の事を学んだ。そして、効くだろう薬草を求め探しに行こうとした。だが……」


 ムダマンスの眉の両端があがった。


 「周りの冒険者は、誰も手伝ってはくれなかった! お金にも経験値にもならないからな。しかも強いモンスターがいる場所だ。報酬もなしに命をかけてまでは無理と断られた。だから仕方なく一人で向かった」


 この人にもそこまで思う人がいたんだ……。

 自分の命をかけてまで思う人が。

 なのに何で、こんな事を――。


 「そこで目覚めた……いや、知ったのだ。私には、テイマーの素質があったのだと。今まで、モンスターの言葉が何となくわかる事もあったが、誰にも言えずにいた。テイマーの能力だったなんて知らなかったからな。そして、鑑定のスキルがあるのにも気がついた」


 鑑定……そういえば、ミーレンがそんな事を言っていた。


 「でも、誰にも言わないでいた。一人で採取を請け負いお金を貯め、モンスターがいる場所へ乗り込んだ。そうして、妻の為に高額の薬を手に入れていた。そして、ミーレンが生まれた。だが、彼女の症状が悪化したのだ。その時、エルフの村の薬草の噂を耳にした」


 もしかして、ムダマンスが探している物ってそれ?

 でも、ミーレンが生まれてからきっと、20年は経過しているよね?

 奥さんは、まだ生きているの?


 皆もムダマンスの話を黙って聞いていた。

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