◆101◆僕が欲しい物

 『ピー!!』


 放心していた僕の耳に甲高い声が聞こえ、ハッと見るとダイドさんが放った矢が鳥のモンスターを射抜いていた!

 僕達が放心している間も戦闘が続いていて、サトンが応戦して鳥のモンスターの攻撃を防いだみたいだ。


 「どけぇ!!」


 ミーレンは、僕を吹き飛ばすと膝立ちになりダイドさんに手を突きだす!


 「逃げて!!」


 僕が叫ぶと、ダイドさんは振り向いた。


 「ファイ――ぐわぁ」


 ミーレンは、途中で何故かひっくり返った!?

 あれは!!


 『リリンギャウ来たのかギャウギャウ


 ジーンが言った。

 そうリリンが、ミーレンの首元にかぶりついていた!!

 ミーレンが、リリンを引きはがそうとするもかぶりつかれている為、強く引っ張れないみたい。


 「ミーレン!」


 シュ!

 ムダマンスが、ミーレンを助けようと近づこうとすると、ダイドさんの矢が飛んできてそれを阻む。


 ガツ!


 「!」


 ミーレンが、落とした剣に手を伸ばしていた。その手をナットスさんが踏んで止めた!


 「やめろ。もうやめてくれ! 俺は、お前と戦いたくない!」


 ジッとミーレンは、ナットスさんを見上げる。


 「リリン。もういいよ。こっちおいで!」


 僕が呼ぶと、リリンは僕に駆け寄って胸に飛び込んで来た。


 「ありがとう。リリン。助かったよ」


 『間に合ってギャウギャウよかったわギャウギャウ! あいつのMPをギャウギャウ吸い取ってやったわギャウギャウギャウ


 「凄い!」


 リリンは、こんなに小さいのに僕よりずっと役に立ってる!

 あ、エジン。

 ふと、エジンが目に入った。

 身をかがめて伏せ、頭を両手で覆う様にしてブルブルと震えている……。

 彼は、僕より冒険者に向いていないかもしれない。


 「ちと、欲張り過ぎたか。では、おいとまするかな……」


 ムダマンスが、そう言った! 逃げれられると思ってるの?

 もうミーレンは、魔法を使えない。サトンには勝てないのに!


 「逃がすと思うか……っく」


 イラーノさんが治癒していたらしく、もう血は止まったみたい。

 ロドリゴさんが、お腹を押さえながら上半身を起こす。


 「おや? 見逃してやると言っているのだが? その子を殺されたいか?」


 「ここから逃げたところで、追われる身になるだけだ!」


 そうロドリゴさんが言うと、ムダマンスがそうだなと頷く。


 「いずれそういう時は来ると思っていた。問題ない」


 本当に逃げる気なんだ……。

 このままだとまた、父さんの真相がわからないままだ!


 「待って!」


 僕が叫ぶと、一斉に皆振り向いた。


 「取り引きしようよ」


 「取り引き?」


 「欲しいんだよね? 僕はそれには興味ないんだ。あるのは、父さんが死んだ時の真相!」


 「待て! クテュール!」


 驚いてロドリゴさんが叫ぶけど無視だ!

 今しかチャンスはない。

 ロドリゴさんから聞いた事は嘘じゃないだろうけど、真相がわからない。


 「いいだろう」


 ジッと僕を見つめ、ムダマンスがそう答えた。

 よっぽど手に入れたいんだ。残念だけどそんな物はないけどね!

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