◆085◆死人に口なし

 僕とイラーノさんは、部屋で正座をさせられている。

 勿論、ありがたーいお説教を頂戴する為だ。


 ナットスさんは、当然馬で来ていた。なので、イラーノさんを乗せて街に戻り、僕はジーンに乗って街まで戻った。

 冒険者ギルドに着くと、僕達が出掛けた事に気が付いたロドリゴさんとダイドさんが待っていた。

 僕達を見た途端ホッとした顔つきになるも、直ぐに鬼の形相に変わった!

 そして、自分達の部屋で正座中です……。


 「イラーノ! お前は止める立場だろう!」


 「ごめんなさい……」


 「僕が悪いんです!」


 「当たり前だ!」


 「はい……」


 滅茶苦茶怒ってる……。

 はぁっとため息をついたロドリゴさんは何故か、僕の前に座った。


 「クテュール。私は、こうならない為に君に話をしたんだ。わかってほしい。確かにモンスターを味方につけているかもしれない。でも相手は、そのモンスターを負かした相手だったんだぞ?」


 隣に座るイラーノさんが小さく「え!」と言って驚いている。

 僕は、連れて行かれてもいいから聞きだしたかったんだ!


 「うん……。でもどうしても、父さんを殺した理由を知りたかった。まさか、僕も殺そうとするなんて思わなくて……」


 「え……。だって、殺そうとして街を襲ったんじゃないの?」


 驚いた顔でイラーノさんは、僕を見て言った。


 「うん。まあ……」


 「君も殺そうとしたのか? それは、本当か?」


 僕は、ロドリゴさんの質問に頷いた。


 「もう手に入れたのかもしれない。だから殺そうと……」


 「手に入れたのならわざわざ襲わなくてもいいだろう」


 「で、相手は単独だったんだな?」


 「目の前に現れたのは。ジーンは誰かが隠れていると言っていた。でも姿は見ていないです」


 「まさか……」


 ロドリゴさんは、考えこんだ。

 何か思い当たる事でもあるのだろうか?


 「まさか、何ですか?」


 「その男も処分するつもりだったのかもしれない」


 「え? でも、ナットスさんがこなければ、もしかしたら僕達危なかったかもしれないのに?」


 「君も死んでいて、男もとなれば、相打ちになったと思っても不思議ではない。出てこなかったのは、ナットスが現れたからかもしれないな」


 「そっか。でも、捕まった男を殺そうとするのはわかるけど、捕まっていなかったあの男を殺す理由がわからない」


 「あの二人が襲った事はバレている。死人に口なし。死んでしまえば、あの二人が勝手にやった事にできる。あの時のようにな」


 あの時って、父さんを連れ出したテイマーに全ての罪を着せた時の様にって事だよね?

 じゃ、もしかしたら本当に、ゴブリンの襲撃の事を知らされていなかった可能性も出て来るかも。捕まった男が、殺された事を知らないでいたのかもしれない!

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