◇086◇本当のところは?

 ロドリゴさんは、反省するようにと最後に言うと部屋を出て行った。


 「あぁ……足がしびれたね」


 イラーノさんが、足を延ばし言った。

 僕も足を延ばす。


 「ごめんね。イラーノさん。騙して連れて行って……」


 「ううん。俺がついて行くって決めたからね。まあ、事情を知っていれば行かなかったかもしれないけど……」


 そう言うと、イラーノさんは俯いた。そして、僕の方に向き直る。


 「ねえ、立ち入った事を聞いていい? 君のお父さんって亡くなったの?」


 「うん。あの男の仲間に殺されたんだって。ロドリゴさんが言っていて……」


 「ギルドマスターが? 何で知っているの?」


 「……僕の父さんと組んでいたみたい。それで、その時の事を話してくれたんだ。ただ、どうして殺されたかまではわからないみたいで」


 って、話しちゃっていいのかな?

 でも巻き込んじゃったし。今更だよね?


 「そうなんだ……」


 「うん。あいつら何かを探していたんだ。何かのカギ? みたい。ロドリゴさんは、相手が勘違いしているんだって言っていたけど……」


 本当はどうなんだろう? 本当に持ってないのかな?


 「カギかぁ。宝箱か何かなのかな?」


 「うーん。開けるのは物じゃないみたい」


 「うん? じゃ何?」


 「……さあ?」


 「さあって……」


 あまり詳しく教えて、イラーノさんまで狙われたら大変だからね。

 しかし、カギだと連想されるのは宝箱か。そっか。そうだよね。普通は物だ。

 ロドリゴさん達は、どうしてあいつらが探しているのが、エルフがいる楽園のカギ……神秘のカギだと思ったんだろう。

 聞きだしたとは思えない。

 思い当たる事があったから?

 もしかして父さん達は、その楽園に本当に行ったのではないのかな?


 楽園のカギ。扉じゃないとしたら? カギといっても抽象的ものかもしれない。

 うーん。父さんから貰ったのってリュックとナイフ……だよね?

 うん。とても神秘のカギだとは思えない。


 どんなところなんだろう。エルフがいる楽園って……。

 もし言葉が通じなくても、今の僕なら理解できるかな?

 父さんが行ったかもしれない楽園。僕も行ってみたいかも。


 うん。よし! 今度家に帰ったら母さんに聞いてみよう!

 カギだと知らずに何か持っているかもしれない!

 あぁ……でも、暫く先になりそうだな。勝手に行動しちゃったからなぁ。


 僕は、そう思いながらハンチング帽の最後の仕上げを始める。


 「ねえ。それ、俺にも作ってくれないかな? 材料費払うからさ」


 「え? いいけど……。こんな感じだけど?」


 「うん。ばっちり!」


 うーん。僕が言うのもなんだけど、イラーノさんはやっぱり、ちょっと変わってるよね。

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