◆031◆父の旧友

 「アンチュールさん。彼の事は私に任せて下さい」


 ドロリコさんまでも任せろと言っている……。

 うん? なんで母さんの名前知っているんだ?


 「あ、あなたは……」


 「はい。ご無沙汰しております。生前、ドドイと組んで行動しておりましたメンバーのロドリゴです」


 母さんは驚いた顔で、ロドリゴさんを見つめる。


 「息子まで殺す気ですか!」


 って、両手で顔を覆い、母さんは大泣きし始めた!

 どういう事?

 父さんは、モンスターに殺されたんじゃ……。


 「ドドイは、モンスターに殺されたんですよ?」


 「見捨てたんじゃないですか!」


 「……申し訳ありません。助け出すのが遅すぎました」


 そう言って、ロドリゴさんは母さんに軽く頭を下げた。

 それって助け出したけど、死んじゃったって事?


 「僕は、何も聞いてないけど……」


 「別に君を特別扱いするつもりはなかったからな」


 「ロドリゴ、彼女錯乱状態みたいだから」


 ボソッと後ろ居たダイドさんが言った。

 またこの二人で来たみたいだ。


 「リゼタ。悪いがアンチュールさんを休ませてあげてくれ」


 「はい。おばさん立てる?」


 「母さん、少し休もう」


 ロドリゴに言われて、リゼタは母さんを支えて歩き出す。僕も反対側を支え、母さんの部屋に連れて行った。


 「母さん。安心して僕は死なない」


 僕はベットに腰掛けた母さんの手をギュッと握りしめ言った。

 きっとエジンももう、殺そうとしてこないだろう。

 何せ僕は、ギルドマスターの元メンバーの息子。下手な事は出来ない。たぶん……。


 「そうね。ごめんなさい。驚いてしまって。……リゼタもごめんね」


 「私は大丈夫!」


 軽く首を横に振ってリゼタは答えた。


 「じゃ、待ってるから行くね」


 「ところでクテュール。あなた、荷物は?」


 「あ!」


 「あって……。もう仕方ないわね。手伝ってあげる!」


 「いや、いい! 少し待ってもらうように言ってきて!」


 「わかった。じゃ、外で待ってる」


 リゼタはそう言うと、軽く手を振ってロドリゴさんの所に戻った。


 「たまに戻って来るよ」


 母さんは、泣き笑いしながら頷いた。

 そして僕は、急いで荷物をまとめる。って、着替えぐらいしかないけど。

 父さんの形見となった、もらったお古のリュックに詰めた。


 使わないと思っていたけど、使う事になったな。

 防水のリュックだからと新しいのを買った後にくれたリュックを背負う。

 おぉ。ピッタリ。僕も大きくなったもんだ!

 もらった当時は、僕には大きいリュックだった。


 「お待たせしました」


 玄関を出ると、皆待っていた。


 「行って来ます」


 僕はボソッと呟いた。

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