◇030◇それでも冒険者にはならないで

 「お願いだからもう一度考え直して。ね?」


 母さんがすがる様に言うけど、冒険者を辞めた所で、テイマーであるのは変わりない。


 「でも冒険者を辞めても僕はテイマーのままだよ?」


 「モンスターに殺されるかもしれないじゃない!」


 僕は首を横に振った。

 それはない。だって彼らは僕の友達だから。


 「モンスターは、僕を襲わない。襲うとしたら人間だよ」


 そう答えて僕は、エジンを見た。彼は、ハッとして顔を横にそむけた。

 僕が言いたい事がわかったんだろう。


 「それでも冒険者にはならないで!」


 「辞めたら監視される! そうしたら監視と言って監禁されるかもしれないんだよ?」


 「それでも殺されるよりは!」


 「だから殺されないって! 人間の方が恐ろしいよ! それに監禁されてもいいだなんて! そこに僕の幸せってある!?」


 母さんは目を見開いて驚いていた。

 言い過ぎた!

 でも殺されないと言っているに、監禁されろってそれはない……。


 「おばさん落ち着いて。大丈夫。私がついているから。ね」


 「あなたがそそのかしたの? 女なのに冒険者なんかになって!」


 「え!?」


 「母さん! 何言ってるのさ! リゼタは立派だよ! そうそうなれない魔法使いだよ! 女だからって否定するなんて!」


 それを否定したら、僕が冒険者にならないのもまた逆に否定するようなものだ!

 きっと冒険者内でも、女だからと風当たりが強いはず。

 その気持ちだけは、僕にはわかるから……。


 「おばさん。クテュールの事は俺に任せて頂けませんか? それと、クテュールの言う通り、リゼタは立派な魔法使いです。冒険者と言っても毎回モンスターを相手にするわけじゃないです。僕だってまだありませんから」


 「エジン。たまには、いい事いうのね」


 ……任せろって、お前がいうな!

 こんな事態になっているのだって、エジンが襲ってきたせいだからな!


 「クテュールもありがとう」


 リゼタがほほ笑んで言った。


 とんとんとん。

 と、扉がノックされ、皆が注目する。


 「すみません。私は冒険者ギルドマスターのロドリゴと申します」


 そうだった! 迎えにくるんだった!


 「え? なんでギルドマスターがここに?」


 リゼタも知らなったんだった。まあそれは別にいいけど。

 僕がおたおたしていると、母さんが扉を開けた。


 「お願いします! 息子を冒険者にしないでください!」


 開けたと思った途端、母さんはロドリゴさんに深々と頭を下げた!

 突然の事にロドリゴさんも驚いて、言葉に詰まったみたいでジッと母さんを見つめている。


 「無理ですよ。一年間は、冒険者を続けなくてはいけませんから」


 そして、そう冷たくロドリゴさんは、言い放った。

 って、そうだったんだ!

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