◇032◇二人の会話

 僕達は、森の中を歩いていた。

 何故かそのまま、リゼタもついて行く事になり五人で森を移動する。

 先頭は、エジン。その後ろに僕とリゼタ。しんがりをロドリゴさんとダイドさん。

 結局、エジンが崖を知っているという事で、案内をする事になった。

 同じ場所かわからないけど、崖なら一応知っているって事で……。本当に往生際悪い!


 暫く歩けば、あの崖についた。

 森から出た所で僕達は立ち止まる。


 「君達はここにいろ」


 ロドリゴさんに言われ、僕達三人は崖際まで見に行った二人をジッと見つめる。

 二人が崖下を見ている。


 (木はあるな)


 たぶん独り言だろうロドリゴさんの口の動きを見て、そう言えばそう言ってあった事を思い出す。

 咄嗟に言った事だったけど、枝があってよかった!


 (彼の二の舞だけは、させない! ちゃんと行動を見張っておけよ)


 (わかってますって、ロドリゴ。それにしても何の因果か、息子がテイマーなんてな)


 二人はそんな会話を交わしている。

 二の舞ってなんだ? 因果って?

 父さんは確か、魔剣士だったはず。テイマーなんて関係ないだろう?

 大体、テイマーは一カ国に一人いるかいないかの希少なジョブ。テイマーと出会う確率はかなり低い。

 って、僕を監視?


 もしかして、ダイドさんも父さんと一緒のメンバーだった? そんな感じがする。

 ……まさかと思うけど、母さんが言う様に、この人達に殺されたって事はないよね?

 調べてみよう。父さんの事を調べればきっと、二人の事もわかるはず! それにテイマーの事も!


 二人は、僕達の元へ戻って来た。


 「クテュール。君はここでモンスターと出会ったんだったな」


 「はい」


 「今の所、モンスターを感知してません。ここに来る間も」


 何が言いたいんだ? 僕が嘘をついていると言いたいのだろうか?


 「僕が言っていた事の方が、信憑性あると思うのですが? エジンは、ここを知っていたじゃないですか?」


 「な! 偶然だろう! 俺が知っていた崖が、お前が言う崖だっただけだ!」


 まだ頑張るんだ……。


 「ここでモンスターと出会ったんだぁ」


 ボソッと呟くリゼタは、一人興味津々に辺りを見渡していた。

 本当に、この人はマイペースと言うか、呑気と言うか……。


 「では戻ろう」


 ロドリゴさんの掛け声で、僕達は戻り馬車に乗って街へ向かった。

 今更だが、僕はもうお金がない!

 母さんに一か月ぐらい生活出来る分を借りようと思っていたんだった。

 うーん。どうしよう。ごはんとかって当たるのかな?

 エジンにお金なんて借りたくないし、リゼタに借りたら借りたで後で面倒になりそうだ。

 どうせなら馬車代がなければ、とりに戻れたのに……。

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